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読了。東野圭吾『パラレルワールド・ラブストーリ』

混乱した。
私は、混乱した。

そもそもタイトルすら見ずに、東野圭吾というキーワードだけで手に取った本。

深淵な物語であった。

そもそもタイトルを見ていなかったので、冒頭部分で「なんだ恋愛モノかよ」のような気分で読み始めた。

が。
序盤ですでに混乱した。
ページを何度も戻り、誰が誰なのかを何回も確認した。
いや、間違いない。

主人公が誰だかわからなくなるような錯覚、まるで入れ違いになったようなストーリー。

東野圭吾の作品はいつも、美しい旋律を奏でているようなイメージがあったが、本作は違う。
まるでハードロックかメタルのようでもある。
重低音が複雑に鳴り響く。

『心』とは、『自分』とはなんなのか。

『自分』というのは記憶の積み重ねの集大成でもあると思う。
しかし、その記憶が揺らいだら?
記憶というのは自分の中にしか蓄積しない。
しかし、その記憶を頼るとき、周囲も揺らいでいたら?
きっとそれは『自分』を見失うだろう。

終盤でストーリーが整合性を持ち、全体の流れが読めてきてもなお、まだ投げかけられた『自分とは?』というテーマでスッキリとはしないかもしれない。

私が東野圭吾を好きなのは、キレイキレイなハッピーエンドで全て丸く収まる、ということがないからかもしれない。

本作は珍しく、読み終えたあとのスッキリ感は薄かったように思う。
考えることがたくさんあった。
そして、人間とは弱い存在だなと振り返る瞬間もたくさんあった。

映画もあるようだから、見る機会があったら見てみようと思う。

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