【連載小説】ガンズグロウ vol.7「きゅんきゅん」
付き合うとはいったものの、その後特に進展もない。
ガンズグロウも普通にプレイしてチャットするだけ。
以前と比べてチャットでしゃべりやすくなったのは、みんなが私のチャットスピードに合わせてくれているため。
みなもはタツキから一言注意されたようで、あれからずいぶんタツキにだけ絡むことが減った。
懸念することは何もない……はずなんだが……
付き合うと言ってから二週間経つが何も変化がない。
ただ、メールの回数だけは若干増えた。
ガンズグロウ系統の質問ばかりだが。
デートに誘われることがない。
これは、私がリードしなきゃならんのかね。
『タツキくん、今週土日暇?』
一か八かメールをしてみる。
『土日は夜がバイトで…昼なら少し空いてますよ』
『じゃあさ、ランチいかない?ランチ。美味しいお店しってるんだ』
『ランチ……行ったことがないですね。かなり勇気がいりますね』
これは肯定か、否定か?
『じゃあランチデビューってことで行ってみましょう!』
『さやかちゃんが言うなら行ってみましょうか』
というわけで土曜日にデートが決定した。
なんだ、私から誘えばいいんじゃん。
ってランチ行ったことがないって、普段何食べてるんだろう?ファミレスとかかな。
こないだも行ったし。
土曜日。
約束の場所は相変わらず大学の門の前。
タツキがやって来た格好にぎょっとなった。
ジャージ、しかも寸足らずの。
「ちょwwなんでジャージなの?」
「おかしいですか?」
めちゃくちゃおかしいよ!と、突っ込みたいところだけど、あまりに純真に聞いてくるタツキになにも言えない。
「これ、中学の頃のジャージなんですよね。思い出深いジャージなんです」
「普段からそういう格好なんだ?」
「そうですね、ローテーションで」
今まで会ったときはたまたま普通の格好だったと言うわけだ。
着てきたものを脱げとはさすがに言えない。
仕方ないのでその格好でカフェへいく。
なんだかやっぱり注目を浴びている。
必要以上に。
注文は普通にしたけど、タツキが、
「なんかおしゃれで緊張するね!」
と言ってきた。
緊張してその格好はないだろうと、自分でボケ突っ込みをする。
「う、うん、まあ、おしゃれしてくるお店だからね…」
となりに置かれたリュックの中身も気になるところだ。
とりあえずご飯を食べ終えてコーヒーをすすっていると、タツキがなにやらリュックから取り出した。
DVDプレイヤーだ。
「今から超面白いアニメがあるんだ♪」
といってDVDをテレビに切り替えた。
「えっ、ここで見るの?」
私はさぁーっと血の気が引くのを感じた。
「うん、面白いからさやかちゃんにも見せようと思って」
「あー、私はアニメとかに興味は……」
「始まったよ!」
結局その場でアニメを一本見てしまった。
コーヒーのおかわりを持ってくる店員さんが、不思議そうにこっちを見ている。
見るなって。
お店を出て公園で話をしていると、またしてもリュックから何か取り出した。
何かのDVDのようだ。
「このアニメは俺のイチオシなんだよ。絶対面白いから、帰って見てみて!」
純真無垢な笑顔で渡されると受け取らざるを得ない。
いわゆる萌えキャラのようなイラストが描かれたDVDを受けとると、タツキは
「そろそろバイトの準備するから、またね」
と言ってさっさと立ち去ってしまった。
一人残された私は、よろよろと立ち上がり公園をあとにした。
さ、て。
家に帰ると、DVDのことなんか忘れて、ご飯を食べながらテレビでお笑いを見ていた。
ふと思いだし、DVDをだしてみる。
「なにが『きゅんきゅん特選隊』よ」
DVDはしばらくそのままだった。
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