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【連載小説】ガンズグロウ vol.17「けんか」

「先輩に嘘ついたって、何の嘘?」

「言いたくない」

「へぇー、俺にも隠し事するの?」

「しないし!」

「教えてくれないなら先輩に聞こうっと」

携帯を取り出した。

「それはやめてっ!」

携帯を奪う。

「なんだよ、本気にするなよ」

「するよ!」

「隠し事してるほうが悪いんだろう?」

珍しくヒートアップしてくるタツキ。

「先輩のプライバシーに関することだから言えないの!」

「なんでさやかちゃんには言えて俺にはいえないの?もしかして浮気?」

私は頭をぶんぶんと振った。


「タツキのわからず屋!もういい、知らない!」

「じゃあ俺も知らない!」

帰りは送ってくれることもなかった。



ガンズグロウを立ち上げるとプレイを始めた。

だが、今日はいつもと勝手が違った。

いつもなら、すぐにフォローにくるタツキがフォローしてこないのだ。

かなりの苦戦を強いられる。

チームメイトの二人も感づく。

『なにかあったんですか?』

『別に』

珍しく冷たくタツキが答える。


そこまで怒ることじゃないじゃない!

田中先輩のプライバシーの問題もあるって言ったのに!

一時間くらいプレイして、ゆらぎが言った。

『今日はプレイしても無駄みたいなんで、やめましょう』

『ごめんね……』

『さやかさんが謝ることはないっす。だれにでもそういうタイミングがありますから』

『ありがと』

タツキはチャットにすら参加しなかった。



翌日。

朝から晩までのシフトになっている私が出勤すると、納品のチェックをタツキがやっていた。

『おはよーっす』

と声をかけたが、返答はなかった。


朝の掃除をして、お客様を迎えいれる準備は整った。

「オープンします」

オープンして、接客に特に問題点はないタツキ。

けど、微妙に私を無視していることがわかる。

それならば、とこちらも無視してやりだす。


アイドルタイムになって、二人して店長に呼ばれる。

原因ははっきりしている。

ひとしきり怒られた後にタツキが言った。

「仕事中だけだからな」

「わかってるわよ」


それでもギクシャクしたやり取りになる私たち。

お客様のタイミングをみて、裏口に呼び出された。

「ホールはお店の顔だし、キッチンとお客様を繋ぐ大事な役目なんだ。もっとしっかりやってくれ」

「はーい」

仕方なく普段通りに仕事する。

今日は満席で、待ちの人もいる。

うまく回さないと、確かに回せない。


なんとか頑張って閉店。

レジの回収の仕事をしていると、タツキがやって来て言った。

「昨日はごめん。今日仕事してて、やっぱり普段通りがいいなと思って」

頭をかきながら言うタツキ。

「私もごめんね、でも田中先輩のプライバシーに関わることだから、言えないんだ。」

「うん、わかってる。焼きもち焼いてごめん。」

以外なセリフに耳を疑った。

「俺、田中先輩とさやかちゃんが仲がいいのしらなくて、焼きもち焼いちゃったよ。こんないい年して恥ずかしいけど」

「ううん、嬉しい……」

涙目になりながら売上計算を終わらせた。



「今日は送っていくよ」

「うん、ありがと」

やっと素直になれた。

少し嬉しい。


夏休みも終盤だ。

気合いをいれていこう!

と、私は思ったのだった。

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