見出し画像

【連載小説】ガンズグロウ vol.12「勧誘」

チャットもスムーズになり、ピットインの回数もかなり減った。

もう初心者ではないと言っても過言ではないだろう。


このところ、やたら他の部隊から勧誘がひどい。

女の子のプレイヤーが少ないからだが、なんというか、うざい。


レナに聞いてみたが、

「私のところには勧誘きてないよ?」

と逆になんで?と質問されてしまった。


どうして私ばかり誘われるんだろう?

女の子キャラでプレイしているみなもにも聞くが、そんな勧誘来ていないという。


タツキに相談してみると、

『どこかに晒されたかもしれないね……ちょっと調べてみるよ』

と言われた。


晒されるって、なんでまた……


しばらくして、タツキからメールが来た。

『1chで晒されてるよ』

1chとは、有名な巨大掲示板で、そこに晒されてるということは、全国の人が見るということだ。


『なんて書いてあるの?』

『ガンズグロウ板に、『さやかです。仲間を募集しています。ログイン名は○○○です。よろしくね☆』って書いてある……』

えっ、なんでそこまで書かれてるの?!

『何か、誰かに話した覚えはない?』

『こないだのオフ会のときに、何人かにしゃべった……』

『その線だな。レイナ姫に聞いてみて!参加者のうちの誰かだと思うから!』

『うん……』

レナに連絡をしてみる。

まだバイトの時間だろう、返事がない。

待つ間に教えてもらったURLを開いて見てみる。

そう悪意がありそうには見えない。

誰かのちょっとしたいたずらだろう。


一時間ほど経ってレナから返信がきた。

『さやかは、誰に話したか覚えてる?』

『南波さんと、阿川さん、それから名前を知らない人二人。』

『名前を知らない人、どんな人だか覚えてる?』

『うーん、チェックのシャツだったような……』

『チェックはみんなチェックだから、わかんない!もうちょっと特徴的なことはないの?』

『ああ、一人は赤いキャップを被ってたかな』

『赤いキャップ…前田さんかな』

『もう一人は眼鏡でデブの人』

『みんな眼鏡でデブだからわかんない!』

『なんか、へんな笑い方をする人だったよ、いひーひひひ、みたいな』

『赤星さんかなあ……』

『とにかくあとはわからないの』

『こっちで当たってみるね』

持つべきものは頼りになる友よ……

ふと、会話の内容を思い返してみる。

―――

「さやか姫はチーム移籍とか、考えてないの?」

「考えてないけど、どうして?」

「うちのチームにこないかと…いひーひひひ、ぜひに、さやか姫ならみんな大歓迎ですから」

「今のところ、今のチームが楽しいし、考えられないかなあ」

「そう言わず、検討してみてくださいよ。いひーひひひ、うちは最高の面子でお迎えしますよ……」

―――

赤星さんとはそんな会話したな……

それでも移籍しないって言ったら微妙に怒ってたよね、あの人……


さ、て。

一時間くらいしてから、またレナからメールがきた。

『赤星さん以外の三人に聞いたら違うって……赤星さんはまだ連絡待ち』

『直接聞いたの?』

『うん、なんで?』

『私が犯人だったら絶対答えないと思うんだけど……』

『それもそうね……でも、もう聞いちゃったからなぁ……』

『とりあえず赤星さんの連絡を待ってみようかな。赤星さんとは、確か移籍の話をしたから』

『なんでそんな重要なこと、もっと早く言わないのよ?!』

『今さっき思い出したから』

とりあえず赤星さんの連絡待ちをすることに。


メールをしてから更に一時間経過。

レナからメールが入る。

『やっぱり赤星さんだった!』

『え?本人がそう言ったの?』

『ううん、私は、『晒されてるけど、何か知らない?』としか聞いてないのに、『1chに晒されてるのなんて知らない』なんて言い出したから!』

『そっか……』

『で、さやか、どうするの?とっちめるの?』

『いや、いい。勧誘も少しは減ってきたし、出所がわかればよかったから』

『そう?なら、私から赤星さんにはきつく言っておくね』

私は大きくため息をついた。

人間関係、いろいろあるもんだ……と。

この記事が参加している募集

スキしてみて

恋愛小説が好き

よろしければサポートをお願いします。 生きるための糧とします。 世帯年収が200万以下の生活をしています。 サポートしてもらったらコーラ買います!!コーラ好きなんです!! あと、お肉も買います。 生きていく・・・