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【連載小説】透明な彼女 vol.2「夏休み」
旅行から帰った俺たちは残った夏休みを満喫していた。
ドライブももう慣れたもので、親父のボロ車で何回もドライブする。
ドライブコースはいつも決まって阿蘇山を巡る山道コース。
本当に何回も同じ場所を巡るだけだったが、ユイと来るといつも違う景色に見える。
阿蘇は牛馬優先道路があり、牛が通る度にユイは喜ぶ。
ユイは三姉妹の真ん中っ子で、いつも姉妹仲良くしていた。
旅行のお土産もお揃いのキティちゃんのストラップだ。
ユイは真ん中っ子らしく、自由で奔放だ。
真面目で堅物に見えていたのはメガネのせいと、少々人見知りをするせいだと、後になって気づいた。
何事にもとらわれず、トライしていくガッツがユイにはある。
俺はいつもそれをうらやましいと思う。
ユイの両親はいつも優しくしてくれる。
お父さんは水槽にはまっていて、いつも行く度に草を変えてみただの、新しい魚を入れただのと話をしてくれる。
お母さんは料理上手。
ユイの料理上手は間違いなくお母さんから受け継いだものだ。
いつも二人とも、俺が行くと決まってお菓子を持っていけだの、もらいものの果物を持っていけだの、なにかしらくれる。
独り暮らしの俺にはありがたい頂き物だ。
俺は熊本市内で独り暮らしをしている。
美大生というか、芸術部に入学できた。
大卒なので、途中からの編入になる。
ユイは市内の美術系の専門学校に行っていて、今年で卒業になる。
卒業制作は油絵。
なにを描いているのかは教えてもらえない。
おれも油絵の専攻を取っている。
別にユイを真似したわけではないんだけど、絵を描くなら油絵が一番スタンダードだと思ったからだ。
ユイの描く絵はいつも伸び伸びとしていて、カンバスから飛び出してきそうな、勢いのある絵を描いていた。
俺はいつもしどろもどろになって、絵が小さくまとまってしまうところがあったから、ユイの才能はうらやましい。
今日もデートの約束。
福岡まで水族館を見に行こうと約束している。
地元熊本には水族館らしい水族館がないため、水族館を見に行こうとなると隣県まで足を伸ばさねばならない。
でも、それもドライブ、デートの一環だ。
俺はユイの家まで車で迎えに行く。
ユイはこういうときは決まって真っ白なお気に入りのワンピースを着ている。
コンビニでジュースを買い込み、車をスタートさせる。
快適な高速での旅だ。
途中、いくつかサービスエリアに寄って、ソフトクリームを食べたりする。
ソフトクリームが溶け出して、しっぽのほうから食べることになるユイ。
そんなユイを笑っていると、自分も同じようにしたから出てくるクリームに追われることになる。
結局二人して手をどろどろにして食べ、二人ともトイレで手を洗うはめに。
福岡に入り、都市高に乗ると、一気に水族館近くまで行ける。
その後は頼りないユイのナビに頼って水族館を目指した。
頼りないユイのナビは、案の定最初違う場所へ俺らを連れていく。
あまりに場所がわからないため、近くにあったコンビニで聞くと、全く逆方向であることがわかる。
俺たちは正しい道を聞くと、お辞儀しながらコンビニを後にした。
正しい道を走り直す俺たち。
さすがにユイのナビもここまでくれば完璧だ。
水族館の看板が出ているのを発見し、ユイが少し興奮する。
ユイは家族旅行以外で水族館に行ったことがなく、福岡の水族館は初めてらしい。
興奮するのも無理はない。
やがて道の左側に水族館らしき建物が見えてきた。
駐車場はこっちでいいらしい。
できるだけ近くを探す。
ユイが空いている駐車場を見つけると早く、早く、と、俺を急かした。
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