【連載小説】ガンズグロウ vol.16「暴露」
どうしよう……これはタツキに言うべきことなのか?
それはそれで田中先輩を裏切ることになる。
「あー、もう!」
ベッドの枕にボフンと顔を埋める。
その時携帯が鳴った。
レナからだった。
『遅くにごめん、実はガンズ初心者の子がいてさぁ、防具とか余ってたりしない?』
あー、あるある。
『防具あるある、ってか、ちょうどいいタイミングだった。もう、私どうしていいかわからない!!』
レナに防具を送ると、
『会って話す?』
と返事が来た。
ああ、神様、そこにいらしたんですね……!!
『今から、ガス○で待ってる』
とメールしてガス○へ自転車を走らせた。
「なんなのよ、また上坂がらみ?」
と言いつつタバコを取り出すレナ。
「うん、絡みってか、めちゃくちゃ、私、どうしよう!」
「うんうん、意味が全くわからないよ、順序だてて話してみなさいよ」
私は、かくかくしかじかとことの顛末を話して聞かせた。
レナはタバコをふーっと吐き出すと、
「それは、先輩にちゃんと付き合ってるって言うべきじゃなかったの?」
と言う。
「でも、付き合ってるってお店にばれたら、クビになっちゃう……!」
「クビになるかどうかなんてわかんないでしょう?社内恋愛禁止!とか言われた訳ではないのだから、それは言わないほうがおかしい。」
「でも、応援してって言われた時、うんって言っちゃった(泣)」
「それ、次のシフトのときにきちんと訂正しなさいね」
「訂正……できる勇気がありませんっ!」
「なくてもしなきゃ。上坂くんに話すなんて、絶対にだめだからね!乙女心は傷つきやすいのよ!」
「乙女……とはとても言えないけどね……」
結局私の口から先輩に直接言うことを決めた。
決めたはいいけど、シフトが微妙。
休憩のタイミングが合えば話せるかな、というシフト……
先輩は何と言うだろうか。
かなりショックを受けるに違いない。
そんな田中先輩はみーたーくーなーいー。
よし、この日に先輩が終わるのを待って話をしよう!
決めたのは翌週の木曜日だった。
決戦の日、木曜日。
私は先輩と私のシフトを確認した。
私が9時あがりで先輩は10時あがりだから、11時くらいに行くと終わってるかな……
「はよーございまーす」
私はドキドキしながら仕事を始めた。
今日はお客様は少なく、棚卸しは割りと早く終わった。
これなら、11時あがりだな。
うちの店は閉店が10時。そこから〆作業をするため、10時のシフトの人は当然ながら11時に終わることになる。
ブラックといえばブラック。
でも、よその飲食店だって似た者同士に決まってる。
仕事が終わり、近くのカフェでお店が終わるのを待った。
11時前になり、そろそろかな、とお店をでて、職場へ行く。
ちょうど終わったところらしい。
田中先輩が誰かと話ながら出てきた。
話してる相手は……
タツキだ!!
万事休す……
「あれー?さやかちゃん帰ったんじゃなかったの?」
「ちょっと、忘れ物……」
「じゃあ俺待っとくから、早くおいでね」
「上坂とさやかちゃん、ホントに仲がいいよな」
「うん、だって彼女だし!」
元気に答えるタツキを、この時ばかりは張り倒したいと思った。
「え……彼女なの?」
田中先輩の顔がひきつる。
「みんなには言ってないんですけどね」
タツキは更に爽やかな笑顔で言った。
「そっか、そういうことね、あはは」
田中先輩はもはや笑っていなかった。
私は、
「先輩、嘘ついてごめんなさい」
それしか言えなかった。
田中先輩は
「気にしてない気にしてない、大丈夫」
と言ってくれたが、相当なショックだったに違いない。
ふらふら歩いて帰りだす先輩に、他にかける言葉は見つからなかった。
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