【連載小説】ガンズグロウ vol.18「せせらぎ」
ガンズグロウのチームメイトが一人増えた。
せせらぎという男の子だ。
男の子、なのか、男なのかはまだわからないけど、元気のいい人だ。
攻撃特化なので、主に私と組んで動くことになる。
私はタツキ以外の誰かと組んだことがないので、少し緊張する。
しかし、緊張もほぐれるほど、せせらぎは優しく親切で、なにより強かった。
元々は別のチームで組んでいたらしいのだが、都合が悪く、そのチームを抜けて一時期うろうろしていたらしい。
都合が悪い……おおかたそういう時はけんか別れが多い。
でも、せせらぎはそんなけんかなどもしないような優しい印象だ。
ホントに何か都合が合わなくなっただけだろう、と思った。
チームの要になるゆらぎもずいぶんなついた様子だし、みなももタツキも歓迎していた。
私は何か引っ掛かるところがあり、両手をあげて喜びはできなかった。
何がと言われると困るのだが、女の勘ってやつか
しかし、プレイ中は違和感なくプレイに熱中できた。
せせらぎのフォローもあってか、最近のボス撃退率はかなりあがった。
一番喜んだのは、ゆらぎだった。
『このチームを一番のチームにしてみせる!』
以前ゆらぎがそう言っていた、それに向かうにはもってこいだった。
来週は、ガンズグロウ初のイベントが控えている。
交流戦だ。
ガンズグロウ内のレベルが近いもの同士が集まって、試合をする。
一位から三位までのチームにはガンズグロウ内で使えるチケットの賞金と武器、防具などが与えられる名誉戦となる。
それに向けて今、みんなが一丸となり猛特訓となる。
エントリーはもう済んでいる。
あとは試合を臨むばかりだ。
試合までになんとかいい武器を手にいれたい私たちは、毎日時間がある限りプレイし続けた。
おかげで、いい武器を調合できた。
バイトに行ってもタツキと話すのはその話題ばかりだった。
『さやかちゃん、防具俺要らなくなるのがあるから、回そうか』
せせらぎが言ってきた。
これはありがたい。
せせらぎの方がレベルがかなり上なので、使用している防具もよいものを使っていた。
『ありがとうございます!せせらぎさんみたいに早く強くなりたいです』
すると、せせらぎが、
『じゃあ教えようか?』
と言い出した。
話を聞くと、せせらぎはどうも同じ県内に住んでいるらしく、直接会って習うことになった。
一人で会いに行くのは危険だからと、タツキがみなもをお供につけてくれた。
みなもも初のオフにわくわくしているらしく、チャットでもその話題ばかりだった。
当日。
タツキはバイトで抜けれないから、挨拶をよろしくと頼まれる。
遠方のゆらぎからは、オフ写メをよろしくと言われ、みなもといざ!出発した。
ガンズグロウのオフ会には数回参加しているが、みんなデブのキモヲタなのだろうと思っていると、駅に迎えに来たのは颯爽とした好青年だった。
「初めまして、さやかです」
「みなもです」
「いやいや、今日は楽しみで何も手につかなかったよ!さやかちゃんもみなもちゃんもよく来てくれたね!駅から15分くらい歩くけど、大丈夫かな?」
「はい!大丈夫です!」
みなもと私は声を揃えた。
15分ほど歩くと、アパート街にきた。
「こっちこっち!」
せせらぎが前をどんどん歩いていく。
「ここだよー。」
着いたのは木造二階建てのアパートだった。
「ぼろっちぃけど、気にしないでね」
「お邪魔しまーす」
「お邪魔……します」
「飲み物なにがいい?一応一通り用意したんだけど」
「見てもいいですか?」
みなもは無邪気だ。
「僕、オレンジジュースいただきます!さやかちゃんは?」
さすがに初対面の人の冷蔵庫をのぞけるほど無邪気じゃないから……と自分に言い聞かせていたところなので、慌てて見に行った。
「私はコーラで」
乾杯しようという話になり、何に乾杯するか迷う。
「チーム・タツキに、かんぱーい!!」
ごきゅごきゅとみんなのんで、ぷはぁーっと息を吐き出した。
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