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作家さんに会いにいったよ

法政大学富士見ゲートとはいったいどこにあるのかと思い、
いや、見つけたとして、どうやって入るのやらとか不安感を抱えつつも、
二度と! 
二度と乗りたくない湘南新宿ラインに乗り込んで、新宿へ。
それから市ヶ谷まで移動。
実際14時から始まるのに、11時ごろにはもう周辺に浸透作戦を開始していた。

神保町にはよく出てくる。
しかし、飯田橋には出てくることがない。
昔は神楽坂に原稿用紙を買いにきたり、抹茶ババロアを食べに来たりしていたのに、山田紙店は閉店しており、紀の善も今はもうない。

川沿いに到着すると、太鼓の音が聞こえる。

私があまり好きではない神社が近くにあるので、おそらくはそのあたりではないか。
大体歩いていると敷地内に近づいてしまい、なんだか心が重くなるのだが、入ることはないのでなんということもない。

私は上賀茂神社が大好きでよく拝殿してきたし、実家では太宰府天満宮にお世話になっているし、特に高野山へは人生のジンクスを高めるため(いや、これは私の思い込みかもしれないが)に出かけてきたような、雑多な信仰心のあるオッサンではあります。

哲学によって、そういった目に見えぬ何かを払拭できるような高尚な人間ではありません。

町中華でお昼を食べて、
PASSAGE COFFEE ICHIGAYAでアイスコーヒーを注文。
ひさびさにエチオピアの浅煎りの、あの酸っぱさを感じられる若々しい飲み物を口にしながら、全然進まない『喜べ、幸いなる魂よ』の続き(まだ半分ちょいしか読めてない(泣)を読もうとしていたのに、
なんかしらないけれどロシアでプリコジン謀反というニュースが目についてしまい、また読書が進まなくなってしまった。
ワグネルの侵攻スピードが異常。どうなってるんだ。

などと考えていたけれども、1時間前には喫茶店をでて、法政大学前まで行く。

本当に今の大学って綺麗ですね。
机も、椅子も、建物もすべて洗練されている。
あんなところで勉強ができる法政大学学生をうらやましく思った。
富士見ゲートの6階には庭園もあって、そこから東京一帯を見渡せる。
思わず写メ撮ってしまった。

『歴史と小説』というシンポジウムに参加。
登壇者に、佐藤亜紀、川本直、そして島田雅彦(敬称略します。尊敬してます)。
スケザネさんもいらっしゃったなあ。
とにかく自分としては佐藤亜紀、川本直両氏の尊顔を拝せただけで満足。
川本さんの着てたTシャツってあれでしょ、オスカー・ワイルドじゃありません?

特に印象的だったのは、佐藤さんの言われていた、
「文脈が消える」ということ(これは自分も現代短歌とかを初めて接していると、いきなり別のことへ跳ぶことで衝撃を受けたことがあったので、自分的にはそのことかと勝手な解釈)と、

「歴史は物語か」の話。
インドの女学生が「そうやって私から歴史を取り上げるんですか」といったという話。
その昔、私は福岡のフォーラムに来られていたインドの学者さんがおっしゃってたことを思い出した。
インドの歴史を最初に書いたのは為政者だったという話だ。
そのことが数十年ぶりに思い返されて首肯。禿同。

対談中のあのこと、このことをとにかく片っ端からメモしまくったから、もっと細部で大切なことがあるとは思うのだが、その二つが衝撃的だった。

第二部で鷲見洋一さんが指摘されていたこととかも、まだ飲み込み切れていないところもあるんだけど、大切なことだったと。たぶん。
ブリューゲルの絵という指摘も、なるほどなあって気分的に思ったり思わなかったり。
余白、ぼんやりとした、ぼかして書くとか。
ま、私の能力では本当のところは理解しきれていないと思うのだが。
ディドロってすごい人なんやね(何も知らない)。

川本さんが言われたことで気に留めたのは、
「著述はすべて後知恵」と、
「オッサン全自動悩み機」(笑!
特にオッサン云々は、どこぞの純文学しぐさでおなじみだなとか思っている自分の動機って不純ですかと思いつつも、笑っています。

それに今回参加してよかったのは、
佐藤さんが、あのメッテルニヒを刊行されようとしていることと、
川本さんが吉田健一の超分厚い本を上奏されようとしていることを知れたこと。
楽しみに待つのみです。
その前にとにかく『喜べ、幸いなる魂よ』を読破しなくては。

小説を読むこと、何かを書くことそのものにちょっと希望を失っていたんだけど、あのように文学や歴史に携わっておられる方々を目前にして、菩薩や如来に拝謁したよう気になった私でした。
よい機会を与えてくださり、感謝に堪えません。

戻ってくる途中、新宿で下車した。
もう一度あの事務所をみてこよう、そうしてそれで最後にしようと思って歩いた。
歩道橋を登って、大学傍へ降りてきたら、よくごちそうしてもらった蕎麦屋が閉店していた。
西新宿一帯は、観光客が集まっていて、ひといきれでいっぱい。
311の時に逃げ込んだあの公園は、夕闇が差し込んでいて暗い。
焼肉屋に入ろうとしている男女は店先でいちゃいちゃしている。
急に事務所を覗いて帰ろうという気がなくなった。

讃岐うどん大使 東京麺通団だけは変わらずにあり、大好きな昆布のてんぷらを付け合わせに、うどんをすすりこんだ。本当においしい。

横丁を歩いて、観光客を避けながら行く。
但馬屋珈琲でブレンドを注文。
お客の話し声に耳を傾けることなく、
出てきた一杯をさっさと口に運んで、電車に乗った。
眠たかったけど、再び本を開いて、たまに睡魔に襲われながら家まで帰った。

珈琲と岩茶と将棋と読書と、すこしだけ書くことを愛する者です。