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隠し部屋(同人誌収録エッセイ)

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隠し部屋(同人誌収録エッセイ)
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記事一覧

朝は夜からできている

 note連載『あきとまさきのおはなしのアルバム』をやろうとしたきっかけを綴ってみました。 …

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手持ち無沙汰な左手がハルを探す

私の愛犬・ハルが死んでしまった。あまりにも突然すぎて、気持ちが追いつかない。散歩の時、い…

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光のしずく

詩の一節がずっと頭の片隅に残っていることはありませんか? 「わたしが死んだら黒姫山に骨を…

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記憶の宮殿

(2010年7月6日記) 五七の桐 4月19日、父が帰ってきました、献体先から遺骨となって。 実家…

『ナルニア国ものがたり』再読

『ナルニア国ものがたり全7巻』を読み終えました。 『さいごの戦い』は前半、ナルニアに悪が…

暗闇のなかの一本のろうそく

(2012年5月 親友への手紙) 里枝ちゃん。 今日ね、六本木の国立新美術館のセザンヌ展とエルミ…

ゴクヤスミ

夏といえば昼寝 真夏の昼下がり。田んぼの畦道、深い木立ち。戸を開け放って昼寝する人たち。降りそそぐセミの声・・・に重なるドンパン節の替え歌。 蚊とりマットの今年のCMが流れると笑ってしまう。幼い頃の、夏の記憶そのままの光景だから。ドンパン節のかわりに、父と母の盛大で規則正しい寝息と裏の宮川の牛蛙の「モゥオー」の大合唱ではあるけれど。 何はさて置き、夏といえば昼寝です。 夏といえば冷や汁 昼ごはんはうどん(ほしめんこ)に冷や汁が定番。 煎りたてのたっぷりの白ゴマをすりば

ツバキ文具店 雨宮鳩子様

カサブランカ空港へ向かう機上で しっとりとやわらかい風が、田んぼの早苗をさわさわと撫でて…

三面鏡

彼女は三面鏡を見る。化粧のためでなく観察するために。まるで鏡の中に、だれも気づかないけれ…

我らの流儀

バックパッカーひとり旅 今頃飛行機はどのあたりを飛んでいるのだろう。 12泊13日のひと…

ゆるやかな着地

存在感のある姑   晩年を特別養護老人ホームで暮らしていた姑(夫の母親)は、曇った目の時と…

別れの風景

新聞広告の短いエッセイ(文・伊集院静 画・長友啓典)に目が止まる。「荒野」の読みはコウヤ…

わたしのミュージックポートレイト

わたしのミュージックポートレイト素顔を写し出す音楽 ミュージックポートレイトというテレビ…

60歳の誕生日に万年筆を

60歳の誕生日に万年筆を ペリカン社のスーベレーンM400 「カッコイイオトナ」の象徴のような特別な文具といえば、私にとってそれは万年筆でした。 あこがれの原点は、大学時代の恩師である森 直弘先生。 万年筆を胸ポケットからすっと出してさらさらと書く姿が素敵で、その筆致も大好きでした。書くことの魅力を体現してくれました。 「諸君も気づいたであろう。ことばを文章にすること、それは自らの思想の表出であるがひどく精神の緊張をともなう作業であるということを。 ことばをえらび、それ