エルサレムスークを歩く

本当はすぐにベッドに飛び込み一眠りしたい気持ちだったが重い体を引きずりながらシャワーへと向かう。暑いお湯で体の汗を軽く流しそそくさと体を拭きベッドを潜り込む。10分だけ寝ようと思いながら数秒で眠りに落ちた。

10分だと思っていたのに気づいたら30分経過していた。たった30分だったが、頭も体もすっきりとして睡眠の大切さを今更ながら実感した。ベッドの中で大きく伸びをし、バスの窮屈な時間に染まった体を大きく引き剥がし、いつもの自分に戻ることにする。

宿の中はひんやりと涼しかったが外気は優に40度を超え太陽の光が肌を突き刺す。まずは歩いてみよう。エルサレムオールドシティーは有名観光地なだけあって、各所に道案内の標識があり安心して迷子になれる迷路なのだ。宿を出て左にある黄金に輝く岩のドームはここからは入れないが近くにwestern wall 嘆きの壁がある。まずはスークの迷路を把握するためにあてもなく歩いてみることにする。死角となっていた小さなトンネルを抜け左に向かうと嘆きの壁だがまっすぐ歩いてみることにしよう。左からひょっこりきた少年が現れた。

少年・どこに向かってるの?

わたし・どこにも向かってないよ。ただ歩いてるだけ。

少年・秘密の場所教えようか?

わたし・何秘密の場所って?私お金持ってないよ。観光案内ならお金持ちをあたりなさいよ。

少年・お金はいならいよ。スークの上。岩のドームも見えるしオリーブ山も見えるから。行かない?こっちこっち。

と私の回答も聞かずにくるりと私の前に回り、先導していく。ついていく義理はないのだが、まだ昼間だしセキュリティの厳しいココはまあ大丈夫だろうと自分の勘を信じることにした。

迷路を早足で歩いて行く少年の後をついていく私。2分もするともうどこに自分がいるのかよくわからない。足元の隙間を覗くと店が見えて、もうスークの上にいるようだった。いくつ大きな石が階段のようになっているところを駆け上がり、空が開けた。真っ青の空に黄金のドームが目に入る。スークの屋上のような場所だと思うのだが、まばらに人が歩いている。その人たちは黒いハット、黒いスーツ、長くパーマがかったもみあげ。典型的なオーソドックスタイプのユダヤ人だ。この場所はパレスチナ人地区のはずではあるが、もしかしたら近くにユダヤ人学校があるのかもしれない。

屋上は風が抜ける。暑さがこの風をかなり心地よく感じさせる。

少年が指を指す。岩のドーム。知ってる?この建物は本当に重要なものなんだ。そう言って遠くを見ている。

少年・僕は何人に見える?彼が聞いてきた。

わたし・パレスチナ人でしょう?

少年・なんで?どうやって判断するの?パレスチナ人だったら何か問題ある?

わたし・なんでかはわからないけど、なんとなく。

少年・ふーん。そうだよ。パレスチナ人なんだ。

この少年はパレスチナ人だった。

彼がこの質問で何が言いたかったのかはわからない。同じ土地に住む2つの民族(正確には2つだけでないが)、2つの国、3つの宗教が混在するこの地区で色々言いたいことはあったが自分の浅い知識をこの問題の当事者に話をするのは何だか気が引けた。

降りよう。

少年はそう言って、来た道とは違う道でスークの方に私を導いた。

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