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文学には力がある、生きるためにというのは2つの意味。

書くことと読むこと、伝えること。
文学というと堅苦しいが書き伝えることの意味とその力について思うことがあった。

先週MEMO(the Middle East Monitor)からパレスチナブックアワードの最終選考が発表された。この賞は今年で9年目になる。

アラビア語というのはとても情緒的だというのは日本で普通に生活しているとなかなか実感しづらい。
アラビア語の標準語はコーランも基づいている。ではコーラン以前は?

コーラン以前はコーラン以前のアラビア語というかその辺で話されていた言葉がある。その頃のアラブでは詩を詠むことが当たり前のように生活の中にあった。
コーランの言葉が意味がわからずとも美しくその響きを感じるのは、詩的であるからと言っていいだろう。

アラブ文学は日本では馴染みが薄いかもしれないが、レベルは低く無い。
近代で言えば、ノーベル文学賞をとったエジプトのナギーブマフフーズが有名だ。
名著『バイナル・カスライン』は質量ともに読み応えがある。原文で読んでいないので翻訳者の力量に大きく委ねるところもあるのだが、塙 治夫氏の翻訳は素晴らしく、私の読んだアラビア語の本の多くは彼の翻訳によるものだ。
パレスチナでは知らない人はいないであろう、エドワードサイードは大江健三郎氏と親交があった。

MEMOパレスチナブックアワード

この賞の目的は作者や発行人にパレスチナに関する本を出版することを後押ししたい!というものである。
このアワードの本は全て英語で書かれている。原作はアラビア語の場合もあるが。

英語で書かれたパレスチナに関する本の賞

エルサレムにEducational Book Shopがある。英語で書かれたイスラエルパレスチナ問題に関する本の品揃えならパレスチナ随一!イスラエルを含めても一番だと思う。
ここには人が集まる、パレスチナ人も国際機関で働く外国人も、ツーリストも。本がある、情報が集まる、議論ができる。
文学により1つの抵抗の形でその基地となるように思う場所だ。
抵抗のツールは武力だけでは無い。

”生きるため”には食べ物が必要だ、そして何より尊厳が必要なのだ。

文学で訴える、人間の尊厳。

最終選考のいくつか気になった作品を紹介したい。

Susan Abulhawa がパレスチナ女性の強さを繊細に描いている、らしい。

そう、まだ読んでいない。8月に発売される。
彼女のデビュー作はMorning in Jenin という作品。
そして彼女は作家であり・・・活動家。
日本で活動家と聞くと、なんか怪しい?怖い?左翼?右翼??とよくは無いイメージかもしれない。
パレスチナだと歌手で活動家とか、のほほんと生きていられない世界。占領下にあるから自由のために活動するのは当たり前のことなのかもしれない。書くことさえも活動家としての行動の一部。

デビュー作は私も大好きなガッサーンカナファーニーの『ハイファに戻って』からインパイアされたという。


Nathalie Handalの詩集

彼女のバックグランドは日本で生まれ育った私は頭で理解できても本当の意味では理解できないかもしれない。
Handalってよくあるアラブ系の名前なのだが、彼女はフランス・アメリア人となっている。公式bioによると育ったのは南米、フランス、中東、教育を受けたのはアジア、アメリカ、イギリス。こうなってくると国籍って意味あるの?と毎度のごとく考えさせされる。
ハイチで生まれた彼女のご両親はパレスチナのベツレヘムの出身なのだ。
この詩集は彼女のアイデンティティーを表すかのような詩で溢れている。
そして今のこと分断と統合が交差する時代に世界中にルーツがある彼女の声は私たちの尊厳、自分とは何かということについてヒントをくれるかもしれない。

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