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ももちから
2021年9月7日 20:13
たねや たねやのばあちゃんは怖かった。駄菓子屋のばあちゃんだが、いつも子どもたち相手に不機嫌さを隠さなかった。細い体をポリエステル製の薄手のワンピースに包み、そこから出る白く骨ばった手足は冷たい感じがした。特に腕はかたい孫の手を思わせた。白髪の髪は手入れが行き届いているとみえ、つやがあり軽くウェーブをしていた。その波の間からじろりと見る目は森に棲む狼のようだった。しかし低学年生が自由に行けると
2020年8月11日 21:15
水蒸気はいったん天に昇り、南へと真っすぐな白線を引いて流れていた。 桜島は今日も生きている。今朝の風予報では桜島の灰が市内に降る可能性はなさそうだったので、フミヨはベランダに洗濯物を干して家を出た。よその県ではそんな予報は流れないことを、フミヨは高校を卒業してから知った。灰の心配がなければ面倒はひとつ減るのかも知れないが、だからといって桜島がない鹿児島なんて考えられないと、フミヨは思う。 今
2020年8月9日 03:47
特急列車がかろうじて日に2本停まる温泉街の、駅前の「デカ弁」で私は働いている。元は持ち帰り寿司チェーン店だったが、2代目オーナーの佐々木さんは契約更新をせず、建物を買い取って居抜きで店を始めた。人手不足で佐々木さんが厨房に立ち始めたのは間もなくのことで、料理センスがあるのかデカ弁はそこそこ繁盛していた。 私は半年前まで、仕事帰りに夕飯の弁当を買いにくる客だった。生真面目な両親に育てられたせい