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自動運転とMaaSによる社会課題解決について考えてみる(3)

本稿も3回目となりました。
これまで、高齢化する地方都市の諸問題への対策として、

・オンデマンドで利用できる「自動運転の電動ローカルビークル」を活用して、高齢者が自分で運転せずにアクティブに活動できる社会環境を構築する
・さらに、「都市中心部や他の地域とつなぐ自動運転バス」とローカルビークルを連携する拠点となる「ローカルハブ」を設置、更に広がりのあるトランスポーテーション・ネットワークを構築し、地方都市全体のモビリティを高める

としたうえで、その「ローカルハブ」について更に詳しく、

・地域の足であるローカルビークルの充電・配車基地でもあり、都市中心部を結ぶバスとの結節点でもあるローカルハブは、「宅配・配送の拠点」および「リアルの店舗」が集積し、地域の商業・公共拠点として発展する
・これにより、「高齢化・人口減少による地域のネガティブスパイラル」に対して、商業面での活力維持・再生が展望できる

と構想(妄想)してみました。

第一回「自動運転車によるローカル・トランスポーテーション・ネットワーク」へのリンク
第二回「発展するローカルハブの姿」へのリンク

3.ローカルハブの場所、生活の変化
■ローカルハブの設置ロケーション
では、このような、地域におけるヒト・モノのモビリティの要であり、また商業・公共施設の拠点ともなる「ローカルハブ」はどこに発達するのでしょうか?

・幹線道路沿い
月並みですが、都心部などと行き来するバス(電動・自動運転)と接続することから、バス路線である地域の幹線道路沿いが典型的なローカルハブの設置場所になるでしょう。
人口減少や高齢化によってニーズが減った小中学校や公営団地、またリアル店舗の必要性が薄れていくであろう金融機関敷地などが候補地としてあげられます。

・商業施設や学校など地域の核となる施設
住民のデスティネーションとなる既存の施設、人の流れ・動線に沿って設置するのも効率的です。道路付きも悪くない場合が多く、また敷地も確保しやすいのではないでしょうか。こうした商業施設も、人口減少や高齢化により、ややもすると来店客が減少傾向かもしれませんが、自動運転ローカルビークルのハブとなることで商圏が拡がり、また高齢者がアクティブになることにより既存の動線が強化・拡大されて重要性が高まり、公共施設などの更なる集積を含む再活性化につながる可能性もあるでしょう。

・駅
地域によっては、バスではなく(あるいはバスに加えて)JRや私鉄、旧JRの第三セクターなどの鉄道の駅があります。本稿でこれまで展開してきた「バスとローカルビークルのハブ」とは少し異なりますが、MaaSとしては、鉄道と自動運転ビークルの連携も十分考えられます。
駅を中心としてローカルビークルのネットワークが拡がり、商圏が拡大することによって、人口減少などで衰退気味であった駅周辺の商業施設・公共施設が復活してくることも展望できます。

・高速道路・自動車専用道路の出入口
ここまで展開してきた、「ドーナツ化により高度成長期に拡がり、高齢化と人口減少が進む地方周辺部などへのローカルビークル活用とローカルハブの発展」とは、少し考える順番が異なりますが、自動運転とオンラインショッピングによる物流の増大、また通勤行動の変化などから、高速道路等の出入口近辺への宅配・配送拠点や住宅のニーズが一層高まり、新しい居住地が発展する可能性が出てきます。
現在は宅地化・居住地化の割合が低く、比較的容易に新しい街が形成できるエリアであれば、自動運転車が活躍する環境が構築しやすく、ローカルハブが発展しやすいとも考えられます。
あるいは、本稿の本題である旧来からの住宅地への導入に先駆けて、やや実験的な位置づけをもたせた仕組みを構築することもあり得るかもしれません。

いずれにせよ、「ローカルハブ」の標準的なカバー範囲が半径1~3キロ程度とすると、人口や街の拡がりに応じて一つの都市に「ローカルハブ」が多数必要となります。
したがって、上記の設置ロケーション例のうちの一つだけ、ということではなく、地域の状況に応じ、いくつかを組み合わせて都市全体にネットワークを構築することになるでしょう。

■テクノロジー進化に伴う生活の変化
本稿にて構想している自動運転・電動のローカルビークル、同じく自動運転・電動のバスとの連携、宅配・配送拠点も兼ねるローカルハブなどの構想は、自動車業界における非連続な変化である「CASE」(Connected:接続性、Autonomous:自動運転、Shared:共有、Electric:電動化)と、E-Commerce・オンラインショッピングの浸透、スマホ・PCを通じたリモートコミュニケーションの進化などを前提としています。

ここでは、これらテクノロジー進化の「生活」へのインパクトについて、思いつくアイディア・妄想を展開してみたいと思います。

・建物に必要となる変化
自動運転・電動ローカルビークルに頻繁に乗り降りする、またオンラインショッピングの配送を担う小型の宅配用ビークルが毎日のように巡回してくるとすると、我々が暮らす建物もそれに応じて変化することが必要となります。

具体的には、
戸建住宅であればローカルビークルに乗り込みやすいように、また宅配を受け取りやすいように、「ドライブスルー」が設置されるようになるでしょう。自家用車は持たなくなり、ローカルビークルを始めとする「シェア」に切り替えると駐車場は不要になります。

マンションなど集合住宅でも、ローカルビークルに乗りやすい場所が設置されるでしょう。宅配については、戸建住宅のようにはいきませんが、各戸に宅配ボックスを配備したうえで、
~館内宅配用ロボットを配備して、ロボットが宅配ビークルから受け取ったうえで館内を巡回して宅配ボックスに収納する、あるいは
~ビークルに同乗してくる宅配ロボット(妄想です)に入館用トークンを付与し、この宅配ロボットが館内に出入り・巡回してボックスに収納する
といった仕組みにしたいところです。
大規模集合住宅ではバルコニーに宅配ボックスを設置したうえで配送専用のドローンを配備し、このドローンが宅配ビークルから受け取って各戸バルコニーの宅配ボックスに収納する、などもあるかもしれません。

当然ながら、ビジネスサイドの宅配・配送拠点や倉庫、工場、出前用のキッチンなどにも「ドライブスルー」が必要となります。
また、住宅でないビジネス用のオフィスビルでも、〇〇クルなどからの配送物や郵便物などを自動運転の宅配ビークルからどのように受け取り、それをビル内でどのように配送するか、工夫のしどころです。

・リアルな買い物の娯楽化
今や「走ること」「歩くこと」は趣味・娯楽・スポーツですが、昔は労働(飛脚とか)や、避けることのできない必須の移動手段でした。昔と比べると、走ることが娯楽だ、なんて随分贅沢なことかもしれませんね。

ショッピングについても、元々は人間がリアルに店舗まで足を運び、品物を吟味・選択して、持って帰ることが必須でした。
こうした「足を運ぶリアルの買い物」は、通信販売に始まり随分前から浸食されてきていますが、ここ最近のテクノロジーの進化により「全ての買い物において、リアルの移動は不要」となりつつあります。
そして、その分「リアルな買い物は、必須でない趣味・娯楽」の色合いが増しているように感じられます。
(もちろん、走ることと比べて、ショッピングは元々それなりに「楽しみ」「娯楽」の要素は強いのですが)

本はAmazonなどで買うのが、早く・安く・在庫切れもなく便利ですが、本屋にいって本に囲まれて(それだけで少し賢くなった気がします)、色々と手を出して吟味して選んだ本を買って持ち帰る、場合によっては帰りにカフェでコーヒーを飲みながら読んでしまう、など楽しいものです。本を入手する、という目的のみであれば必須でない、趣味・娯楽の領域ですね。
オンラインショッピングと宅配が益々便利になり主流になるに連れて、こうした「リアルの買い物は趣味・娯楽」的な領域が今後は更に拡大していくのだな、と感じます。

・地方の復権
5G回線、クラウドなどによるデータ共有、スカイプやFacetimeなどのコミュニケーションアプリ、オキュラスなどガジェット進化などにより、リモートワークは益々進展してくることでしょう。
希望的観測かもしれませんが、そうすると、住環境のよい、不動産を始め物価の安い、食べ物・飲み物が美味しい地方都市に暮らし、しかも全国・全世界を相手に仕事をしたい人が増えてくるのではないでしょうか。

本稿の主要テーマである「人口減少・高齢化する地方都市の課題に、自動運転ローカルビークルを活用したトランスポーテーション・ネットワークで応える」ことによる地方再活性化に加えて、こうしたリモートワークの本格化により中央・地方の位置づけ、バランスも変わってくるかもしれません。

■まとめ
地域におけるヒト・モノのモビリティの要であり、また商業・公共施設の拠点ともなる「ローカルハブ」は、幹線道路沿い、商業施設や学校など核となる施設、駅、高速道路等の出入口などに発展し、地方の活性化に寄与する。
・テクノロジーの進化、オンラインショッピングと宅配の浸透は、建物に求められる設備・構造に影響し、またリアルに人間が移動する買い物の「娯楽化」が進展する。また、最新テクノロジーを活用したリモートワークの進展は地方都市復権の起爆剤となりうる。

次回は、ここまで展開してきた構想(妄想)を現実のものにしていくための課題・問題点・論点、また進め方などについて、考えてみたいと思います。

なお、見る人から見ればつっこみどころ満載の妄想だと思います。こんな問題があるぞ、こうしたらもっと良くなるのに、などご意見ございましたら、是非コメントくださいませ。

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