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18年前に逝った君へ  さだまさし「遥かなるクリスマス」に寄せて

この本の編集者であり、大学の同窓生であり、一か月だけ同僚だった、亡きY君の思い出を記します。

30数年前、同じ新聞学科を卒業、其々就職して僕は学研の大阪支社へ、彼はポニーキャニオンの大阪支店へ配属に、それからなんとなく連絡取り合い、たまに遊ぶようになりました。

彼は
「学研どうなの?龍ちゃん、音楽好きでしょ」
とやたらコンサートに誘ってくれてクラプトンや矢野顕子のチケットを取ってくれましたが
「行けなくなったからうちの会社の女の子と行ってきて」
とか、
「神戸でかわいい子見つけたから一緒に遊ばない?」
とか気が利くんだか利かないんだか、唐突に強引な男で、そんなに付き合えなかったけど何だか色々誘ってくれたことを思い出します。

そして2年後、僕は会社を辞め東京に戻って半年くらいプラプラしながらポニーキャニオンの中途採用募集を見つけ、Y君に電話「どうなの?」

「楽しいよ。映像希望すれば入りやすいよ」

って言われて応募したら合格、
Y君に「同僚になるよ!」って電話したら

「俺、もうすぐ転職するんだよね、出版社、よろしく!」

って言われて、なんだよ~と思いつつ、同僚期間約一か月、特に交流もなく、彼は転職していきました。

それから数年後、彼が白血病を発症し療養のため長期休職していることを知りました。発病後、長く苦しい闘病生活を送っていたようです。

数年後、彼は病を克服し見事復職、しばらくしたのち、誰かの結婚式で彼と久々の再会を果たします。
「龍ちゃんどうなの?楽しい?」
「お前こそどうなんだよ!」
「俺?楽しいよ、充実してる」
彼は復職し、幸せな家庭を築き、充実した日々を過ごしていました。その時の、クールでカッコつけな彼にしては珍しく穏やかで優しい表情は、今も強く印象に残っています。

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それから何年後だったか、2004年冬、突然、彼の訃報を受けました。風邪をこじらせ肺炎になってしまったようです。幼い子供を残して、彼は逝ってしまったのです。

お通夜には、同僚たちと共に、同級生たちも久しぶりに集い、悲しい再会を果たします。お清めもそこそこに同級生たちともう一軒、彼を偲びました。
「死んじまったら元も子もねえよな」
「元も子もねえよな、って言っても元も子もねえだろ」
僕たちは言葉もなく、初めて同級生を失ったショックを隠すこともせず、言葉もなく、その夜はただただ酒を酌み交わしました。

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あれから18年、僕は再びY君のことを思い出したんです。あることをきっかけにかつてのご縁が、同級生、同僚それぞれのお役に立つことに発展したのです。
そのときは気が付かなかったけど、そうか、これはYがこの世に存在しなかったら絶対起きえないことだ、と改めて不思議な偶然、というか因縁を実感する出来事があったのです。

今年も命日に手を合わすことは叶いませんでした。彼は逝ってもう18年と久しいけれど、彼の生きた証は、記憶だけでなく、リアルな現実においても存在しているのだな、と実感します。お子さんも、もう大きくなっていることでしょう。

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編集者・Y君の最期の仕事「遥かなるクリスマス」は、彼の生と死それぞれへの思いが詰まった、でもどこか優しく穏やかな作品です。

最後に筆者のさだまさしさんの、Y君へ送るあとがきをリンクします。是非ご覧ください。
そして機会あらばこの本を手にしてみて下さい。彼の最期の仕事を、僕が知らなかった彼の、編集者としての意地と生き様を見せつけるような力作を。
本当に涙がこみ上げます。

彼の冥福を祈りつつ、彼は今もどこかで「どうなの?」と話しかけてくれている、ありがとう、そんな気持ちでいっぱいです。

https://blog.goo.ne.jp/taku6100/e/ec479f9a63f6eccdb62ec34015fda534

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