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ケーキの切れない早大生

はじめに

皆さんは「ケーキの切れない非行少年」という本をご存知だろうか?

この本でのトピックとして「境界知能」が挙げられている。「境界知能」とはIQ70〜85程度の人のことを指す。かつてはこの「境界知能」の人も知的障害者として扱われていて支援を受けることができていたらしい。しかし、今はどうやらガイドラインが変わったらしく、IQ70以下の人のことを指すようだ。それにより、支援のあり方も変わってしまい、「境界知能」はパンピーとして扱われることになってしまった。この本では、「境界知能」への支援の不足から「境界知能」当事者の子供たちは疎外感を感じ、犯罪に走ってしまうという内容の本であった。

この本はまさしく自分そのものの症状や周りの反応が羅列されていて、研究そっちのけで読み入ってしまった。

そこで、今回はケーキの切れない早大生と題して、早慶という日本の中ではなぜか高学歴とされている集団の中に生きる境界知能のリアルについて書いていきたい。


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リアル①:私だけかもしれないが、やたらと暗記力が発達している。

幼稚園の時に知的障害を疑われて、親に連れて行かれた病院では「日本で1万人に1人いるかいないかのレベルで、世界人口の上位1〜2%台に普通に入れる暗記力」と言われた。

そのため、買い物はメモを持たずとも40品目はさっと覚えて買い忘れなく買い物ができるし、センター数学も25年分の本試と追試を丸暗記することができる。

これは特に英語や歴史、法律系を勉強するのには役立った。理屈抜きに丸暗記して進むことができるので、普通の人よりも早く単語や文法のルール、法律の条文を習得することができた。

その暗記力を生かした結果、文系3科目入試の早稲田大学商学部に合格することができた。国語という論理的思考能力が問われる敵は確かに存在したが、それについては暗記力で培った英語と世界史でオーバーキルしたため、さほど問題にはならなかったかもしれない。逆に、小論文が出される慶應や国語を早稲田より重んじる上智にはA判定落ちという奇跡の不合格を成し遂げてしまったが。

入学後の授業も言わずもがな暗記である。幸か不幸か、大学学部までは筆記試験が多いので、暗記しかできない私には好条件なのだ。というわけで、評価は軒並みA以上であった。

大学院については、得意な英語で(3年秋当時)TOEIC955点を叩き出し、研究計画書や面接対策はさまざまな院生の皆さんやTwitter上の教授の皆さんのご厚意で作っていただいた想定問答集の回答パターンを全て暗記した。

これが功を奏して、早稲田大学大学院政治学研究科に入学できた。

さて、ここからは悪いことを書いていく

リアル②:論理的思考力がなさすぎて、普通の生活が送れない

一般的に、IQの差が20以上ある人間とは意思疎通が難しいと言われているが、私の場合はIQが80台前半なのでほとんどのパンピーと意思疎通が難しいのだ。そのため、バイトの面接ですら落ちることは珍しくない。

大学学部時代の授業はとにかく丸暗記で乗り切ったが、プライベートでは、平均IQが110を超えているといわれる他の早大生との間に壁ができてしまい、友達はできなかった。

現在就活中の身だが、論理的思考を問われるようなwebテストの問題(推論モノなど)が壊滅的なまでにダメで、面接に至る以前のwebテスト落ちを経験している。こんな経験は周りでしたことがある人がいないので相談しにくい。

さらに大学院の研究では、論理的思考を求められるので、メタメタである。私の境界知能という事情を知らない指導教授を含む諸先生方に研究の進捗や計画などを発表すると、渋い顔をされてしまう。

この件については超少人数(私を入れて3名しかいなく、博士の先輩はいない)ゼミの利点を生かして指導教授にカミングアウトしようと思っている。が、どうなることやら…

大学院はディスカッション型の授業がとても多いので、とにかく健常者の議論についていくことが大変だ。授業のために仲のいいTwitterで知り合った博士の先輩方に協力してもらって想定問答集を作るが、そこから外れると何も言えなくなってしまう。

交換留学先でも比較的IQが高めの人に向けた授業を行われて困った。そして、語学的な意味ではなく内容面でついていけなくなった時に留学先の先生に相談すると、IQが低い人はそもそも大学にいないから大丈夫よとあしらわれてしまった。取りつく島もなくなった私はとりあえず関連しそうなことは思いつく限りなんでも発言し、レポートもそのように対応した。

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リアル③:手先がやたらと不器用で運動神経がやたらと悪い

手先が不器用すぎて、料理で包丁やピーラーを使っただけで大量出血してしまうのだ。これを機に、既に剥かれているor切られている野菜や果物を予め購入して、包丁とピーラーを使わずに料理をすることにしている。

また、もちろんケーキが切れないのは言うまでもない。なので、あらかじめカットされたものを買ってきては食べている。

裁縫もダメで、針を使うたびにこれも怪我ばかりしていたので、高校までの家庭科の授業が恐怖で仕方なかった。

これについてはボタン付けなどの簡単なモノでも服のお直しセンター的なところに持っていってやってもらうようにしている。

運動神経もとても悪く、走るのは遅い、階段1段下がっただけ、ヒール履いて平面を歩いただけという状況で骨折する、今でも補助輪なしでは自転車に乗れないという有様なのだ。

そんなこんなで普段はヒールは履かず、自転車には乗らないで生活している。

リアル④:とにかく周りからの理解がない

障害がないということで、誰もが努力が足りないと言うのだ。努力してもなんとかならないから言ってるのに、とにかく障害がないんだからの一点張りで障害者向けの就職などの支援が受けられず、家族など身の回りの人も包丁やピーラーを使えなくて怪我をすることを努力不足だと言ってくるのだ。

さらに、この国には学歴で人を見ることがままあるので、その結果、境界知能を訴えてもネット上や周りからは「早稲田それも一般で中上位以上の学部入ってるんだから、そんなバカなわけはない」「TOEIC950を何度も超えているんだからそんなIQ低いわけがない」と言われてしまうのだ。たぶん、これを言った本人としては褒めてるつもりなのかもしれないが、こちらが相談しても全て上記のような言葉で片付けられると切ない気持ちになる。

いや、そもそもそれ以前に日本人に「境界知能」なる概念からして理解されていないので気付かれていないのかもしれない。なので、仕方がないと分かっているが、それでも周囲に理解されないのがかなり辛い。

また、ハッパをかけるつもりだろうとは思うが、例外なく努力しなよと言われるのだ。こんな時に、努力を長時間した結果できないので相談していると言ってもなかなか境界知能であることを信じてくれないのだ。

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そんなこんなで、ただのサボってる奴扱いされる。これがパンピーからなら理解がまだ追いついてないと寛容になれるが、医者などの専門家からもサボってるだけだ言われるのだ。

これは相談しようにもどうしようもない。

そしてさらに悪いことに、境界知能は「障害」であると認定されていないので、障害者手帳がもらえない。よって、サポートも何も受けられない上に就活でも障害者雇用で雇ってもらえず、健常者と戦わなければならない。

そんなわけで、就活に苦労をする未来を憂いているところである。

まとめ:境界知能問題の理解を広め、適切な支援を受けられるようにしてほしい。そして、境界知能が少しでも暮らしやすい社会に。

これが、以上のリアルで感じたことである。近年は発達障害には理解が得られるようになってきたが、境界知能の理解はどうも進んでいないようだ。

「ケーキの切れない非行少年」の再生産を防ぐためにも、国を挙げてこの問題は取り組むべきではないたろうか。

この文章は境界知能が書いているので、何かとおかしいところが出てきているかもしれないが、最後まで読んでいただいた皆様には感謝する。








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