マガジンのカバー画像

英文法の小径

140
毎回、一つの文法項目について、意の赴くままに説明を試みた散文を掲載中。
運営しているクリエイター

#現在形

【英文法の小径】現在形〈時制〉余話・その二

このシリーズのエッセイでは、代表的な状態動詞として know と like を取り上げた。どちらも「〜になる」という変化ではなく、その結果である「知っている/わかっている」「好きである/気に入っている」という状態を表す。そして、この状態はしばらく変わらない。 ちなみに、変化の過程は、例えば ‘get to do’ を用いて表現する。 いずれも、徐々に人のことがよくわかるようになったり、好きになったりしていく過程を表わしている。 さて、「状態」には、時間が経過しても変化し

【英文法の小径】現在形〈時制〉余話・その一

学習英文法書は従来、現在形の用法として、動作動詞は現在の習慣的行為を表し、状態動詞は現在の状態を表す、というように記していることが多い。本シリーズでも、そのような区別を前提として説明している。 ところが、上記の区別に対して、日本で英語教育に携わる(執筆当時)二人のネイティブスピーカーが、その著書の中で異議を唱えている。 一冊目が、マーク・ピーターセン著『続 日本人の英語』(岩波新書)。著者は、一般の文法書に記載の現在時制の用法として「①習慣的行動 ②現在の状態 ③一般的な

【英文法の小径】現在形の要点 Ver.1.1

形式I/you/we/they   work he/she/it   works I/you/we/they   don’t work he/she/it   doesn’t work do   I/you/we/they   work? does   he/she/it   work? 用法以下のことについて述べる場合に現在形を使用する なお、「現在」とは話し手が話をしている時点を指す 現在において事実と考えられる事柄 習慣的/反復的な行為・出来事 常に事実と考

【英文法の小径】現在形〈時制〉その一

John drives a bus.この文で、ジョンがバスを運転するのはいつなのだろう。 ‘John’につづく‘drives’ の ‘s’ はいわゆる「三単現の s」と呼ばれているもの ‘drives’ は動詞の〈現在形〉なのだから ジョンは今、つまりこの話をしている時点で運転をしているのだろうか。 いや、そうではないのです。 英語の動詞の〈現在形〉は、いつも起こること、定期的に繰り返し起こること―毎日・毎週・毎月同じ時間に、というように―を述べたいときの形。 〈現在形〉と

【英文法の小径】現在形〈時制〉その二

John works very hard.この文から見えてくるのは、やらなければならないことが山ほどあって、今、つまりこの話をしている時点で、懸命に仕事をしているジョンの姿なのだろうか。 もし、そういう彼の様子を表したいのであれば、英語には〈現在進行形〉という形[am/is/are + -ing]が用意されています。 John is working very hard. それじゃ、冒頭の文が伝えていることは? 'John' につづく 'works' という動詞の形は〈現在

【英文法の小径】現在形〈時制〉その三

Ann takes piano lessons.現在とは、過去から未来へと向かう時の流れのなかの今、この瞬間のことであるけれど、英語の動詞の〈現在形〉が表すのは通常、今していることではない。そうではなくて、いつもすること、決まった時に繰り返し行うことを表す。 だから、'takes' という〈現在形〉を使った冒頭の文が言おうとしているのは、アンが例えば週に一度、ピアノを習っているということ。彼女の習い事、習慣について述べているのです。今、つまりこの話をしているときに彼女がレッ

【英文法の小径】現在形〈時制〉その四

Water boils at 100 degrees celsius.これは、今、目の前でキッチンのガスコンロにのっているケトルの水が沸騰して、温度が100度に達している様子を描写している文なのだろうか? もちろん、そうではなくて、英語の動詞の〈現在形〉は、常に起こること、繰り返し起こることを表すのだから、「水は摂氏100度で沸騰する」=「水の沸点は100度である」ということ、つまり、水という液体の性質を述べているのです。 これなどは、現在はもちろん、過去においても、おそ

【英文法の小径】現在形〈時制〉その五

We know each other.二人はいつ、知り合いになったのだろう。'We' につづく 'know' は〈現在形〉だけれども、もちろん、今ではない。過去のあるときに知り合って、そのとき以来、知り合いなのだ。だから、今も、お互いに相手のことを「知っている」。これが冒頭の文の言っていること。そもそも know は、知っているようになるという過程ではなく、その結果「知っている」という意味。 know のように、一定期間、変わらずに続く状態を表す動詞を、英文法では行為や出来

【英文法の小径】現在形〈時制〉その六

I (can) see the moon.夜空に浮かぶ月を見て一言。まさに今、つまり話し手が話をしている時点で、月が見えている。〈現在進行形〉を用いなくていいのだろうか。 see という動詞は視覚の意味で用いるとき、対象に目を向けるという動作ではなく、対象が目に入ってくるという状態を表します。つまり、「見る」ではなく「見える」ということ。 そして、この意味の see のような動詞は、〈現在形〉のままで今の状態を表すことができるのです。動作を表す動詞とはちがい、今、生じてい

【英文法の小径】現在形〈時制〉その七

1-a. My back aches. 1-b. My back is aching.今の背中の痛みを訴えるには、どちらの形を使えばいいのだろう。今、つまり話し手が話をしている時点で起きていることは〈現在進行形〉を用いて表すのではなかったか。 実は、この場合は〈現在形〉でもいいのです。ポイントは ache という動詞の性質にあります。痛みのような感覚は、やがておさまることはあるにしても、しばらくは変わらずにつづく。その意味で、ache は状態を表す動詞。(1-a) のように

【英文法の小径】現在形〈時制〉その八

a) I believe you. b) I see what you mean. c) I like this wine very much.いずれも、目の前のことに反応して出てきたことば。 a)「君の言うこと、信じるよ」 b)「君の言いたいこと、わかるよ」 c)「このワイン、とても気に入った」 まさに今、生じていることについて述べているのだから、〈現在形〉ではなく〈現在進行形〉を用いなくてもいいのだろうか。 上の文の believe, see (= understa

【英文法の小径】現在形〈時制〉その九

I promise I won’t be late.ここで話し手は、まさに今、約束をしている。promise は状態を表す動詞ではない。行為や出来事を表す動詞の〈現在形〉は、過去から未来にまたがる時間を指し示す(その四)のであって、現在だけを表すことはできなかったはず。〈現在進行形〉を用いなくてもいいのだろうか。 文の中には、それを発言すること自体が、その文で表されている行為を行うことになるようなものがあります。例えば、話し手は ’I promise …’ と言った瞬間に約

【英文法の小径】現在形〈時制〉その十

I hear John’s getting married.今度、ジョンが結婚するという話を伝えている。話し手は、ジョン本人あるいは友人から聞いて知ったのだろう。だとしたら、’I hear’ という〈現在形〉ではなくて、’I heard’ と〈過去形〉にしなくてもよいのだろうか。 ここでの I hear のように、聞いたり読んだり見たりして得た、新しい情報=ニュースを導入する表現では〈現在形〉を用いることがあります。実際に人から話を聞いたのは過去に起こったことでも、その結果

【英文法の小径】現在形〈時制〉その十一

状態ではなく動作を表わす動詞(=動作動詞)の〈現在形〉は、今、つまり話し手が話をしている時点で起こっている動作ではなく、定期的に繰り返される動作、典型的には習慣的な行為を表わす。 動作動詞の〈現在形〉が例外的に今起こっている動作を表わす場合としては、I promise … に代表される、発言すること自体が一つの行為を行うことになるような文で用いられる〈現在形〉がある(現在形・その九)。 今回は、動作動詞の〈現在形〉の、もう一つの例外的な用法を扱います。それは目の前の行為や