【英文法の小径】現在形〈時制〉その十一
状態ではなく動作を表わす動詞(=動作動詞)の〈現在形〉は、今、つまり話し手が話をしている時点で起こっている動作ではなく、定期的に繰り返される動作、典型的には習慣的な行為を表わす。
動作動詞の〈現在形〉が例外的に今起こっている動作を表わす場合としては、I promise … に代表される、発言すること自体が一つの行為を行うことになるような文で用いられる〈現在形〉がある(現在形・その九)。
今回は、動作動詞の〈現在形〉の、もう一つの例外的な用法を扱います。それは目の前の行為や出来事を同時にことばで描写するものなのだけれど、具体的にどういう場合なのだろう?
例文は、サッカーの試合とレガッタとも呼ばれるボート競技(rowing race)の実況解説。ボート競技(1-b)では基本通り、現在(=話をしている時点)起こっている出来事を説明するのに〈現在進行形〉が使われているが、サッカーの試合(1-a)では〈現在形〉が使われている。このちがいはなんだろう?
サッカーを観戦すれば一目瞭然、パス('passes')も相手のパスを奪うインターセプト('intercepts')も、そしてシュート('shoots')も一瞬のプレイだ。一方のボート競技は、オールを漕ぐ('are rawing')動きもボートの進む('are drawing')様子も時間の経過を感じさせる、比較的ゆっくりとしたもの。
このように、すばやい動作、それを描写する話し手が言い終わらないうちに完了してしまうような動作を説明するときに〈現在形〉を用いるのです(それに対して、時間のかかる動作については〈現在進行形〉を使用)。目の前で次々と起こる出来事を順を追って報告するといった感じ。
同様に、料理家が料理番組などで一連の手順を実演しながら解説する場合にも、例外的に現在の動作を表わす〈現在形〉を用います。
目の前で不意に起こった出来事に対する、一種の感嘆を表わす定型表現でも〈現在形〉が使われます。いずれも相手の注意を引くために 'Here' や 'There' が文頭に置かれ、[動詞+主語]の語順になります。3-a は「ほら、ご主人が来たわよ」、3-b は「ほら、バスが行っちゃった」といったところか。
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