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本山桂川に苦言を呈される趣味人・鷲見東一

 大阪の郷土玩具蒐集家・趣味人であった鷲見東一は民俗学や方言に関連する文章を様々な雑誌に投稿していたが、方言に関する文章を橘正一に批判されていたことを以下の記事で紹介した。鷲見の文章は民俗学研究者からみると物足りなかったようで、別の苦言も発見した。

加賀紫水の発行していた『土の香』第8巻第1号(土俗趣味社、1932年11月)の「愛香硯滴」という読者の投稿欄に本山桂川が「河太郎のこと」という以下の短文を寄せている。

土の香特集号有難う存上げ、同誌鷲見君の河太郎のはなし拝見致候、然れども今日河童研究の状態はあんな程度のものにては無之、之は少くとも小生編纂の百余項に亘る河童文献大特集号、御覧になる必要有之べくと存上候(以下略)

この文章は『土の香』第7巻第6号(1932年10月)の秋季特集号に投稿された鷲見の「河太郎のはなし」に対する本山の反応である。上記で本山が言及している「河童文献大特集号」は、おそらく市川市立図書館の蔵書検索で確認できる本山桂川『河童文献輯録』(1932年)であろう。ここで本山は暗に鷲見の調査、先行研究の参照不足を指摘しているように思われる。本山は自分の書籍が参照されていない点が不満であったのだろうか。本山は郷土玩具蒐集を行っていたという蒐集家・趣味人としての一面もあり、鷲見と近いところもあったが、民俗学研究に対するスタンスは鷲見と異なっていたようである。


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