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「ファシズムの現代的状況」丸山眞男に関するメモ

 以下の記事に引き続き『戦中と戦後の間』丸山眞男(みすず書房、1976年)から「ファシズムの現代的状況」という文章を取り上げたい。この文章は1953年に行われた講演がもとになったのもので、アメリカで当時展開されていた反共産主義キャンペーンをふまえて民主主義・自由主義の中に内包されているファシズムの懸念を論じた文章である。この中に丸山の考えている「自由」に対する考え方が登場するので、紹介してみたい。

 丸山によれば、「本来のリベラル・デモクラシーの建て前でも、野放しの言論・集会の自由が主張されるわけではなく、直接的な暴力行使や基本的人権を原則的に否認するようなイデオロギーにまで自由を認めることはデモクラシーの自殺」になるという。そして「思想の自由」に関して、「己れの憎む思想に対して自由を認めるところに核心」があり、「「俺と同じような考えの奴には自由にしゃべらせる」というのは実質的には無意味」と述べている。言い換えると、自由とは自分と異なる意見や考えを持っている人々にも認められるべきものであり、この点を認めない自由は自由でないということになる。丸山は、アメリカで展開されている反共キャンペーンからアメリカの自由が前者から後者へ変化しつつあることを指摘している。丸山は、暴力行使や基本的人権を原則的に否認するような考えという例外はあるが、基本的に自由は無差別的に適応されるべきであると考えていたのだろう。

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