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怪しげな『万国不思議研究会教授書』を古本即売会で拾う

 先日、久しぶりに東京都の古書即売会(愛書会)に参加した際に、『万国不思議研究会教授書』という怪しげな書名の本を見つけたので、書名にひかれて購入した。以下にいくつか写真を掲載しておきたい。

表紙
サイズ
奥付

以下に目次も掲載しておこう。

本の内容としては役に立ちそうで役に立たないような生活上の便利術、怪しげな言い伝え、簡単なマジックなど様々な秘術(?)が紹介されている。以下におもしろいと思ったものをいくつか引用してみたい。

暴れ馬を止める秘術
暴れ馬を止めるには、其の馬の顔に一掴の馬糞を投げつけるのです。或は梯子を引ッ張り出して暴馬の通路を遮っても亦必ず止るものです。

溺死者を救ふ法
時鳥の黒焼か、山雀の黒焼を鼻の中へ吹き入れて遣ると、大抵蘇生するものです。

逃走人を戻らしむる法
逃走してから一日以内なれば、晝は門の右に、夜は門の左に穴を掘り、そこへ逃走人の飯茶碗を伏せて置くと、必ず帰って来るといふ説があります。

我が思を他人に夢見さする秘伝
自分の茶碗に水を入れて十五夜の月をうつし後之を貯へおき、必要に応じで其の水で墨を磨り奉書四つ切りに自分の思ひを書きつけ南天の南の方へ出た枝に結んで置きますと、三日以内に先方の人が必ず夢に見るといふ伝説があります。

延命長寿法
命を延ばし長生しようと思ふのは人情ですが、それには次の方法を実行せねばなりません。即ち
一、毎夜少くしも七時間以上眠ること。
二、規律正しく仕事すること。
三、呼吸は鼻で行ふこと。
四、常に丹田に力を入れていること。
五、食物は自分の好めるものを摂ること。
六、房事を慎むこと。
七、日光浴、空気浴を怠らぬこと。
八、余り心労せぬこと。
九、適当に運動すること。
十、夜は早く寝ね、朝は早く起ること。
で、此の十個條をよく格言すれば必ず無病長命します。

茶碗の文字を当てる秘術
他人に茶碗の中に文字を書かせ、之を受取ってテーブルに伏せます。但しテーブルの上には豫め小さな鏡を置き。茶碗を伏せる時に手早く映して其の文字を見て当てるのです。
(筆者により一部を現代仮名遣いにあらためた。)

実際に役に立つかどうか分からないもの、怪しげなものであるが、「延命長寿法」の一部は私たちにも役に立つものであろう。

 この本を出版した万国不思議研究会とはどんな団体であったのだろうか。奥付によると、この本の著作兼発行者に鶴岡一雄という人物であるが、この人物の住所が発行所である万国不思議研究会の住所と一致するので、鶴岡がこの研究会の主宰ではないだろうか。万国不思議研究会に関しては、次世代デジタルライブラリーで検索すると、『奇々妙々手品の種あかし』東西奇芸弘道会(天地堂、1911年)に「古今を問はず内外に論なく世界各国の奇妙不可思議なる事項の研究に専ら力を致している東京の万国不思議研究会」とだけ紹介されている。活動の詳細が気になる団体である。国会図書館サーチで調べると、他に『實行自在奇術秘法』(光洋社、1911年)、『実地応用奇法魔術』(光洋社、1911年)、『万国不思議術秘伝秘法百科宝典』(国民書院、1934年)という本を出版していたようだ。最後の本は読んでみたい本だ。

 ところで、『万国不思議研究会教授書』はいくつか版があるようだ。Twitterで検索してみると、大正11年発行のものを紹介している方がいらっしゃった。(Twitterで「万国不思議研究会」と検索すると出てくる。)また、CiNii Booksによると、東北大学がこの本を所蔵しているが、発行が1923年(大正13年)になっている。私の持っている本は上記の写真の奥付にあるように、大正10年の発行である。いくつか版があることが分かるが、どのくらいの種類があったのだろうか。

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