鶴見俊輔「言葉のお守り的使用法について」に関するメモ―パトリオティズムとは?
鶴見俊輔「言葉のお守り的使用法について」は、鶴見のデビュー論文で雑誌『思想の科学』第1巻第1号(先駆社、1946年5月)に掲載されてるが、この論文は国会図書館デジコレの図書館限定配信部分の個人への解禁にともなって自宅で閲覧できるようになった。この論文をあらためて読み直すと、「転向」の問題、プラグマティズムの哲学、言語の問題など鶴見が後年発展させていくテーマがこの時点で登場している。この論文の中で鶴見は「愛国」についても以下のように述べており、興味深いので該当箇所を以下に引用してみたい。
ここで鶴見は国民歌謡の中に表現されている愛国の情は人類の共栄を脅かすものではないと評している。ここで鶴見は、以下の記事で紹介したようなジョージ・オーウェルの「郷土主義=パトリオティズム」に近いことを述べていると思われる。オーウェルの言うパトリオティズムは国家に迎合するものでなく、抵抗の拠点となるものである。ここで鶴見の言う「お守り言葉を必要としない」「愛国の情」とは、国家からの押しつけでなく人々の間から自生的に発生するパトリオティズムで国家に対して抵抗するものであろう。鶴見は、生涯に自分の住んでいる場所やくらいの中の思想、そこから考えることを追求したが、その方向性や後のオーウェルの評価につながる考えが一番最初の論文にも表れている。
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