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資生堂パーラーでバイトしていた夫

とある日に、夫の実家から、シャインマスカットと巨峰、そしてふるさと納税で頼んでいた桃が、我が家に大量にやってきた。
フルーツ大好きな我々は嬉々とし、さっそく食べるために処理を始めた。前々から桃を切ることに関しては長けている夫が、ここは僕が、というのでお任せしてみることにした。ちなみに私はパイナップルを切ることが得意である。

しばらくして出てきたのは、昔、笹塚の骨とう品屋さんというか雑賀屋さんで購入した、お気に入りの乳白色のパフェ皿に、美しく盛り付けされたフルーツ達。
一番下に桃、周りを囲むように葡萄、そしてトップにシャインマスカットが整然と並べられている。
あまりの見た目の綺麗さに驚き、あっけにとられた。
夫よ、すごいじゃないか。心の底から尊敬した。

そこで夫が、「実は昔資生堂パーラーでバイトしてたんだよね」と一言。え?そうなの。え、いつ、知らなかった、と言葉を発するとにやにやした表情でこちらを見てくる。あ、これは嘘をついているな、と思ったが、「本当なの」と問いかけても、本当だよ、これを見たらわかるでしょ、と姿勢がぶれない。もういいや、裏は取れていないが、バイトしていたことにしてあげよう。
でも信じてしまうくらいに、フルーツに関しては丁寧に扱うし、きれいに盛り付けるのだ。元来備わっている美的センスもあるのだろうけど、夫はこんなことができるのか、と新たな発見があった瞬間だった。

思いが現実化する、という表現がこの世には存在する。
夫がバイトしていたかどうかはグレーだが、「かつて資生堂で働いていた自分」の姿を(妄想で)思い描くことで、私生活にいい影響を及ぼしているのである。これは非常にいいことである。

事実を捏造するのは時に良いことではないが、あえて過去を捏造することで、自分のレベルアップに繋がることもあるんだ、と学びを得た、そんな出来事だった。


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