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ファシリテーションの教科書の補習3(問題解決のステップ:その1)

前回の続き(「仕込み」によって実現したいこと)。

ファシリテーションの教科書のChapter2~3あたり
・ 具体的に実行可能な「仕込み」チェックリストを作る目的で整理
・ 「さばき」の前の「仕込み」にフォーカス


問題解決のステップの理解は、本書だけでなくグロービス学び放題のクリティカル・シンキング2(問題解決編)を参照


アフター「仕込み」

合意形成のステップをさらに細分化する

問題解決のステップ

What, Where, Why, Howの4つのステップ
 - What : 何が問題なのか?(問題意識の明確化)
 - Where : どこが問題なのか?(問題箇所の特定)
 - Why : なぜそうなっているのか?問題が生じる原因は何か?(真因の追求)
 - How : どうするのか?(対策の立案・実行)

前提

人が課題・問題に対して取りがちな思考の癖がある

①決め打ち ※これが絶対悪いわけではない

新たな問題に直面したとき
 - 人は経験や知識から原因を決めつけてしまう
 - その原因から先に対策を考えてしまう
 - その対策に合うように、結論ありきで課題の設定や分析をしてしまう
- 状況次第では、そうしたアプローチでもある程度通用することもある

ただし解決が難しい問題の場合、こうした「決め打ち」での対策を講じても、解決に至らないことが往々にしてある。

②発散して収束させない
 - 問題箇所や原因などを洗い出したまま絞り込まず、しらみつぶしに検討
 - ただし決め打ちを避けようとすること自体は問題ない
 - 結果、数多くの対策を打とうとしてしまう
 - 検討、実行に長い時間をかけてしまう
 - さらに効果の薄い箇所にまで手を伸ばし、リソースを浪費する
 - たくさんの策を実行し切ることができず、問題が解決しない

「決め打ち」と「発散して収束させない」を回避する

問題解決のステップでは「広げて→絞る」というアプローチを取る
 - 広く見るべき対象を捉える
 - 思い込みによる決めつけや、見落としを避ける
 - 重要箇所に絞り込み、論理的に有効な対策を導く

広げる
 - これを意識しないと、重要な部分を見落とし、決め打ちになってしまう

絞る
 - これを意識しないと、洗い出したもの全てを考慮しなければならなくなる

1. 問題意識の明確化(What)

何が問題か。何の問題か。
 - あるべき姿が備えるべき要件をまずはしっかり広げて押さえる
 -「特に何においてギャップが大きいのか?」を絞り込み、問題を設定する

2. 問題箇所の特定(Where)

どこに問題があるか。Whatのどの箇所か。
 - 現状を多面的に広く見て、全体を俯瞰し、問題箇所を漏らさず捉える
 - 特に重要性が高い問題箇所はどこか?
 - 問題が集中して発生しているところはどこか??
上記を考え、取り組むべき問題箇所を絞り込む

3. 真因の追求(Why)

この段階で原因を広く洗い出し → 本質的な原因(Why)に絞り込む

4. 対策の立案・実行(How)

考えうるオプションをいったん洗い出し、その中からより良い対策を選択

What→Where→Why→Howの順番

「What→Where→Why→How」という思考の流れ自体が、人間の持つ思考の癖を矯正するうえで重要
 - 人は多くの場合、何らかの問題に直面すると、Howから考えてしまう
 - また、少し立ち止まるにしても、Whyから考え始める傾向を持つ
 - 問題が生じる本質的原因をつかまずに、思いつきの原因に着手するリスク

HowやWhyから考え始めると
 - 一時は状況を改善できても、しばらくすると同様の問題が再発する
 - つまり本質的な解決に至っていない
 - いきなりHowに行くのではなく、原因(Why)をつかむことが重要になる
 - しかし、原因(Why)から考えるだけでは、上手くいかないのである

WhyだけでなくWhereの特定

ありがちな例(BtoB向けSaaS)

 例:「最近チャーン(解約する顧客)が増えている」 

ここで、なぜ顧客がチャーンするのかをいきなり考えてしまうと、限りなく原因の候補が出てくるはず。

原因候補の例
 - 効果が見込めなかった
 - より効果のあるツールにスイッチを決めた
 - 想定ほど適用可能な業務がなかった
 - 適用可能な業務がなくなった
 - ツールの費用が高い
 - ツールに不満がある
 - 業務が忙しくてツールを使えない
 - ツールをうまく使いこなせない

この状態のまま何が原因だろうかと考えても、決定的な答えは出ない。
なぜなら、チャーン(解約)という事態(結果)をまねく原因は様々であり、顧客の個別事情や状況に依存してしまう以上の見解が導き出せないため。

原因は相互に複雑に絡み合っている
 - さまざまな原因の中で特にどの原因が強く影響を与えているのか?
 - それは多くの場合、判断することが難しい
 - どの原因が強く影響しているのか判断できず、水掛け論になってしまう

こうした状況に陥らないために
 - 「なぜチャーン(解約)するのか」の前にWhereを考える
 - どこに問題があるのかを調べ、傾向を把握することが必要

Where
 - 「どんな顧客がチャーン(解約)するのか」
 - 「どのような部署(業務)の顧客がチャーン(解約)するのか」
 - 「どういったタイミングでチャーン(解約)するのか」

原理的に洗い出し、特定が難しい原因(Why)から考えるのではなく以下を整理・分析し、原因を考える出発点を絞り込む必要がある。

- 「どこに問題があり、どこに問題がないのか?」
 - 「問題がある状況は、どのような条件が重なった場合なのか?」

こうしたWhereの分析は、Whyよりも結果として表れている事実をもって議論しやすいため、生産的な議論につながりやすくなる。

大前提で抑えるべき「What」の特定

「チャーン(解約)される」ことの何が問題なのか
 - つまり、最も本質的なWhatから考える必要がある
 - 前提次第では「チャーン(解約)」はあまり問題にならないかもしれない
 - 問題を明確にしないまま議論をすると「そもそも論」に話が立ち戻る

What:何が問題なのか?(問題意識の明確化)

さまざまな課題や問題について議論するうえで、重要であるにもかかわらず、多くの場合、曖昧なままで議論がスタートしがちなのが、「What」の部分

「問題」について
 - 同じ状況でも「問題だ/問題ではない」と人により認識が異なる
 - 問題とは感じても「どんな問題なのか?」の認識が異なることもある

違いが生じる背景 : 「あるべき姿の不在」

「問題」をシンプルに「あるべき姿と現状にギャップがある状態」とする

そうすると問題意識が異なるのは以下のいずれか

  1. 各人が考える「あるべき姿」が異なっている
  2. 「現状に対する認識」が異なっている

問題意識の共有の難しさ

何らかの状況から「問題がある」と感じるとき「どれがあるべき姿なのか?」を明確に自覚していない。この「What(何が問題なのか?)」の認識が揃わないまま議論を始めると、話がかみ合わずに、混乱し、場当たり的な解決策を講じても、また話が立ち戻ってしまうことが往々にして生じる。

組織の中で問題ついての議論が混乱するのは、この「問題意識の違い」や「何をあるべき姿と捉えるかの認識の違い」に原因がある場合が非常に多い。

次は「問題解決のステップ:その2」で最後(たぶん)

参考



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