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【試してみた】Adobe AEROで楽ができぬか

はじめに

こんにちは、デザイナーのハセガワ(@hassegawa)です。

最近AR(MR)系のデザインが少なくないのですが、私はこれに関して重大な問題を抱えております。
AR案件のほとんどは、開発チームも機材も東京五反田オフィスなのですが、私は会津若松勤務なので、ほいほいプレビューしたり開発中の感じをしょっちゅう観たりすることができません(ついでに言えばリモート組なのでデスクもない)。

VR・AR・MRでそれ、致命的だろ……。

以前はAppleのデベロッパに登録して、アプリの試作をiOSデバイスに入れる程度はできてたんですが、開発者の皆様ならご承知の通り、ポンチ絵描きがたまに観るためだけにあれを維持して、好きなときに開発チームに試作を(素人でも使える状態で)作ってもらって書き出してもらって使い方聞いて……なんてやってらんねーわけです。

とにかく、素材を作ったら、手元でそれ単体でホイホイプレビューしちゃいたい。

(※Adobe Photoshopや、UnityのEditor上で現場写真に合成してみる程度のことはまあやりますが……)

1. そこでAdobe Aeroです。

iOSでFBX一式を格納したZIPを読み込めば、とりあえずARで動いてるのが観れるというAdobeの企画です。

しかしこれが、調べて&触ってみるとまだ制約が多い……。

1-1. iOS用なので合成方法がフツー

これは当たり前のことですが、基本的には映像にCGがのっかるだけです(照明効果はカメラ映像から生成されるのでそこそこイケております)

が、実はAR・MR系で一番気を遣うのが「暗色の素材は意味がない」などの合成方法に由来する制限だったりするので、この制限がないiOSでのプレビューでは、その点で業務上弱い。CG上は強い。みんなカメラ映像経由のコレになればいいのに……。

余談ですが、最近業務で作るARはポケ◯ンGOなどのそれとは違い、割と昔風というか、ブレードラ◯ナー的というか、ト◯ンというか、攻殻機◯隊というか、Death ◯trandingというか、そんな感じなので、割と光ってくれないといけなかったりします。

現行の技術から見ると割とニッチな感じなんじゃないかと思うんですが……。

1-2. アルファ透過の表現が弱い。

0000-0196.00_00_00_00.静止画002

(↑:アルファ表現と放射の適用をチェックするために、Blenderで3種類の方式でシェーダーを組んでレンダリングしたもの。黒背景は敷いたもの)
(↓:それをFBXに出力してAdobe Aeroに読み込んだもの)

0000-0196.00_00_00_00.静止画003

アルファによる透過はできるのだが、現状はご覧の通り。
一番単純なシェーダーノードを組んだ真ん中はある程度反映されるが、綺麗ではない。

スクリーンショット 2020-04-23 16.33.07

参考までに、一番左のやつが表現としては望ましいものになります。シェーダーノードはこんな感じ。
これは流石にムリですね。

他の2つは、
・単純にアルファPNG画像のカラーをAlbedo、Emissionの、アルファをAlphaの引数にしたもの。
・古典的にグレースケール画像のカラーをAlbedo、Emission、Alphaの引数にしたもの。
になります。

実はテスト中、しばしばアルファが抜けなくなることがありました。他の方の愚痴を読んでいると、やはりテクスチャが剥がれることもままあるそうで、安定してないようです。

1-3. 当然ながらサイズの制限がある

なので、例えば「頭上にデス・スターを浮かべる!」とかができません。
これは数値で示されていないようなのでやや厄介。
検証用にサイズが分かっている巨大FBXを読み込んでも、読み込み時に丁度いい大きさにリサイズされてしまうので、アナログ操作で拡大しても数値が把握できません。何メートルまで描画してくれるのか、具体的に分からない……。

新コロナウイルスによるSTAY HOMEを意識したコンテンツを試作するつもりだったのですが、屋内に大きな物体や広い空間──プラネタリウムとか──が出現するというような遊びは難しい感じでした。

1-4. FBXファイルにはモーションが1つしか格納できない。

公式には「まだ」というニュアンスの説明がされているので、いずれ複数モーションの格納が可能になるのではないか? と思っていますが、どうでしょうね……。

モーションは1つしか格納できないのですが……。
動画では
①移動のみ
②移動と拡縮のみ
③移動・拡縮・回転全部
の順に適用されていっているのが分かるでしょうか。

画像6

画像6

モデルの動作を設定していると、FBX格納のモーションを適用する際に回転・拡縮・移動を別々に選ぶ必要があります(上図)
ということは、別々に適用できるのでは……? と気付いたので、ちょっと検証してみました。
結論から言えば、かなり工夫しないと難しい感じでした。
動画は「3種類」ではなく「3段階」になっていますが、これは先に適用したモーションがそのまま継承読み込みされてしまうためで、一度適用してしまうと、編集段階でももう切り離せなくなります。後になって拡縮だけの動作を設定しても、回転・移動を含めたすべてのアニメーションになってしまうようです。
これは「小技を見つけたかな?」と思ったものの、相当限定的な使い方しかできない、という感じのものだった、というガッカリネタです。でもコンテンツによっては十分使える……んじゃないかな……。

1-5. うーん、ダメっぽい。

Adobe Aero は私のAR業務のプレビュー用としてはあまり活躍してくれなそうです。
ただし、Adobe Aero専用のコンテンツを世界に発信して楽しんでもらう、という形であればこれは強いツールになります。
デジタル造形師さんやキャラクタークリエイターさんにとっては強力な発信媒体と言えるでしょう。

尚このモデルでは、数度修正を繰り返してもスペキュラーがきいたまんまという問題が発生しました。
まだ色々不安定みたい……。

編集後記

広報のマリコです!デザインやプログラミングの知識がない私にとっては、文章内に「ブレードラ◯ナーとか、ト◯ンとか、攻殻機◯隊」という身近ワードが出てきただけで急に少しだけわかった気になるので嬉しいですね(笑)今回の検証の結果、ハセガワの業務ではあまり活躍できないということでしたが、結果に関わらずこういった検証ひとつひとつを行い、公開することが大事なんだと思います。試そうと思っていた!とか、逆にこれは使える!と思ってくれた人がいたら嬉しいです😊

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