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アーティストに惜しまず情報提供し信頼関係を築く 〜対談 with YANAGIMAN #2 〜

THECOO 株式会社代表の 平良 真人( @TylerMasato ) の対談シリーズ。

前回は、ケツメイシとの出会いから、ケツメイシがヒットするまでの経緯、ヒットの秘訣を伺いました。( # 1 はこちら

引き続き、音楽プロデューサー・作曲家・編曲家の YANAGIMAN ( @YANAGIMAN ) さんに、プロデューサーの極意を伺っていきます。

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YANAGIMAN( ヤナギマン )
音楽プロデューサー(ケツメイシ他)、作曲家、編曲家、ベーシスト。
ケツメイシを始めとする様々なアーティストのプロデュース、作曲、作詞、編曲を手がけている。

最高の気持ちで歌ってもらう為にも信頼関係が大切

平良真人( 以下、平良 ):僕は音楽好きのファンでしかなくて、音楽を仕事にするという事に関して全く知識がないのですが、プロデュースというのは、楽曲を作って、それを売れる状況にして、売るところまで全部やられているわけですよね。そのプロデュースをする点で特に意識されていることはあるんですか?

YANAGIMAN氏:最先端の機能で、歌詞が正確で、メロディーもキャッチーで、アレンジもカッコいい。更にそこに無いものを付加していくようにしています。例えば、PVでインフルエンサーに出演してもらったり、化学反応でマジックが起こりそうなことをいつも考えています。

平良:僕はプロデューサーって総監督みたいなイメージだったんですけど、YANAGIMANさんの話を聞いていると楽曲も作っているし、またちょっと違いますよね。

YANAGIMAN氏:僕は音楽プロデューサーなので、僕のケツメイシにおけるプロデュースは、楽曲をプロとしてメジャーに受け入れてもらうような曲にすること。これが1番の役割でした。歌詞が違うなと思ったら変えてもらったり、そういう細かいところから一緒に作っていました。今はもう何十年もやっているからセルフプロデュースも出来るし、僕じゃなくて、すぐに思ったものを作ってくれるような人と組む方が良いんだろうなって思いますね。

平良:YANAGIMANさんは歌わないけど、シンガーソングライター的な役割が出来ちゃうから、アーティストとの相性によって、求められる役割も変わってくるんですね。

YANAGIMAN氏:そうですね。歌うことのプロフェッショナルの場合は、作詞も作曲も僕がして、出来上がった曲を歌ってもらう。そのディレクションまで全てやるような感じになりますね。

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平良:そのように様々なアーティストと関わる中で、こだわっている点や気を付けている点はありますか?

YANAGIMAN氏:最高の気分で、出来るだけ気持ち良く歌ってもらえるように意識しています。レコーディングをたくさん重ねるうちに、だんだん脳の中で考えていることが、そのまま歌にも現れるんだなって気づいたんです。なので、脳の中身をなるべく良い状態にして歌ってもらうのが、1番良い結果に繋がるなと思って。例えば、お腹が痛いとか、昨日大喧嘩したとか、そういうちょっとした変化で変わってくるので。僕自身も嫁さんと大喧嘩した時の曲は、脳の中でずっと20~30%はそのことを気にかけているまま作っているので何にかがきっと違うと思う。(笑)本来ならばいらないプログラムが回ってしまっているというか。邪念がない歌に集中できる状態を作れるように心がけてはいますね。

平良:アーティストが100%の状態で歌えるために、プロデューサーとしてはどんなことをしているんですか?

YANAGIMAN氏:タイミングを見ながら徐々に、距離を縮めていくんです。レコーディングは数ヶ月かかるので、ご飯を食べながら色々話して伏線を張ったりしています。アーティストが書いた歌詞を僕にチェックされて直すのはとてもハードルが高いんですよね。自分が真剣に書いたものを直させるわけですから。だから、何ヶ月も前からしっかりと話し合って、直したいって気持ちにさせるような状態になっていることが大事だと思っています。メロディーも同じですよね。YANAGIMANさんが言うならしょうがないなみたいな関係性を作るように意識しています。

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平良:それは、つまり、信頼関係を構築するという事ですよね。

YANAGIMAN氏:そうですね。結構細かいところもしっかりと話したりします。あとは、僕は色んなアーティストと会って話をしているので、そういうところで得た知識とか知らない情報を差しだす。例えば、歌に関しても「みんなはこういう時は、こんな風にしてるみたいだよ!」とか。そういうアーティストの知らない情報を提供することで、信頼してもらえるし、話しを聞いた方が良いなという感覚になってもらえるところはあると思います。

情報量が多いからこそ伝えられるアドバイス

平良:提供する情報は歌い方とかテクニックの話ではなく、どちらかと言うと考え方なのですか?この歌に対してどういう風に思いを込めるかとか?

YANAGIMAN氏:そうですね、考え方が強いです。でも考え方とは別に、これは大物の歌手に聞いたんですけど、喉を何分割かして、どこかの部分が炎症して歌えなかったら他の部分を器用に使って歌う方法とか。

平良:えーーー。もう、えーーーとしか言えないですね。

YANAGIMAN氏:本当に「えーーー」ですよね。他にも「ここの病院に行くと1日前にどうしても出なかった声が出るようになるよ」とか。色んな情報を持っているので、それをスッとさり気なく渡してあげるんです。ある昭和の大物歌手は喉を7つ以上に分割出来たらしいとか!!確かに言われてみれば、その歌手は本当に色んな声が出せるので、そういう事だったのだなぁと。本当にすごいなって思いますね。今はデジタルの技術も発達して、下手な人でも上手く聞こえるような細工も出来ちゃう時代なのですが、上手に喉を壊さずツアーを周りきるには?とか、素晴らしいアーティストは、いろんな秘伝をみんな持っています。
そして素晴らしいアーティストの声はある種の輝きを持っています。

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平良:それは、歌の上手さだけではないんですか?

YANAGIMAN氏:歌の上手さだけではないですね。表現が難しいんですけど、「うわ~これはやばい!」みたいな、もう言葉に出来ない感じですね。普通の人は聞けない声を聞けるのは、プロデューサーの特権で、本当に贅沢だなって思いますね。CDになっちゃうと100分の1位に情報って圧縮されてしまうので、僕はスタジオで、めちゃくちゃ良い音で聞いているわけですからね。

平良:しかもボーカルの音だけを聞いているわけですもんね。

YANAGIMAN氏:そうなんです。こんなに歌上手いんだ!!みたいな感動を味わっていますね。そういう経験をたくさんしているので、なぜこの人がプロになれないんだとかも、なんとなく分かるんですよね。だから、歌詞の書き方に関してだったとしても、もちろん人それぞれだけど、僕の経験から少しアドバイスをすると、こういう点を変えてみると良いと思うよと言ったりするんです。具体例を出して、この曲は、こう変更してうまくいったよとか。そうすると、「なるほど~YANAGIMANさんの言う事聞いておこうかな」みたいになるんです。

平良:YANAGIMANさんがいかに引き出しがあるかという事ですよね。
一方で、アーティストが持っているイメージと新しく作ろうとしているイメージがあって、プロデューサーとして持っていきたい方向性があると思うのですが、そういう時は誘導するわけですよね?

YANAGIMAN氏:その誘導の仕方がなかなかコツなんですよね。難しいのですけど、それが出来た時はうまくいきますね。

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平良:それは醍醐味じゃないですか。

YANAGIMAN氏:でも、うまくいかない場合は全くうまくいかなくて。

平良:うまくいかないと、次、YANAGIMANさんにお願いされることはなくなっちゃうんですか?

YANAGIMAN氏:なくなっちゃいますね(笑)

平良:それは、やはり相性なんですかね?

YANAGIMAN氏:相性だと思いますね。こだわりが強い人だと僕も一緒にやるのは難しいなと感じます。その人のスタイルを貫きたいという意思が強いので、なかなか話し合えないですね。反対に、色々学びたい意欲のある人は柔軟なので、より良い作品に向かって一緒に作り上げることができます。

平良:勝手なイメージなのですが、アーティストが売れ始めると、セルフプロデュースに切り替わっていくイメージはありますね。Mr.Childrenとかもそうだなって思っていて、そういう方は多いですか?

YANAGIMAN氏:多いと思いますね。子供が立って歩けるようになる現象と同じだと思うんです。素晴らしいアーティストは日々勉強されているので、きっとプロデューサーの事をずっと見て学ぶうちに、多くのことを吸収して行くと思うんですよね。凄い事ですよね。そうして少しづつ自信をつけて、「よし、自分でもイケる」ってアクセルを踏むのかなと思っています。

平良:なるほど!引き出しを持っちゃうんですね。

YANAGIMAN氏:自分でやってみたらうまくいかないということもあると思いますし、状況によってコンディションの違いもあるとは思いますけど。大物アーティストでもこのアルバムの曲は、サウンドが「頑張りたいけど頑張れない」と言っているように感じて、結構苦しんでいるように見えたり、最近のアルバムは突き抜けたな〜とか思ったりします。

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平良:そういうのも分かるんですね!

YANAGIMAN氏:分かります、分かります。

平良:面白いですね〜。

( つづく。 )

アーティストに心地よく最高の状態で歌ってもらう為には、信頼関係を構築することがとても大事。YANAGIMANさん流の信頼関係の築き方は、秘伝情報を伝えて、それを基にアドバイスを加えていくこと。
次回は、ヒットの法則はあるのか?数々のヒットを生み出したYANAGIMANさんの考えをお伺いします。

編集・構成 / 赤塚えり

プロデューサーの極意 #1 「ケツメイシ」のヒットの秘密とは?
プロデューサーの極意 #2 アーティストに情報提供し信頼関係を築く
プロデューサーの極意 #3   爆発する"なにか"を探し続ける
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