「営業職はコーチングを学ぶべき?」SaaSセールス・法人営業アドバイザーに聞いてみた
「コーチングの学びは、仕事にどう活きる?」
「プロコーチを目指していない人が、コーチングを学ぶ意味はある?」
このような疑問にお答えするため、コーチングを学んだ後コーチ以外の職種で活躍される方をお呼びし、ざっくばらんにお話いただく本企画。
3回目となる今回は「営業職編」。
・2020年に法人営業アドバイザーとして独立をした向井さん
・SaaSセールス 営業部長の堀田さん
営業職としての経験が豊富な2人をお呼びし「営業職がコーチングを学ぶ意義」を伺いました。コーチングを受けようか迷っている営業職の方はぜひお読みください。
商談の場に型なし。根本的な課題をお客さんと共に探る
ーーおふたりとも「THE COACH ICP」の基礎コースまでご受講いただいています。営業に関するお仕事をするなかで、どのようにコーチングの学びを活用していますか?
堀田さん:「答えは相手の中にある」というコーチングの考え方に触れてから、営業先のお客さんとの関わり方に大きな変化がありました。沈黙を恐れずに、相手の話を聞き切ることが以前よりもできるようになったと思っています。
営業というのは、お客さんすらまだ気づいていない本質的な課題を聞き出すことができて初めて、本質的な提案ができるものです。
例えば「鼻がむずむずする」とお客さんに相談された際に鼻炎薬を出すことは簡単ですが、もしかしたらそれは表面的な症状として出ているだけで、根本的な原因は別のところにあるかもしれません。お客さんの本当の願いは「健康な体を手に入れること」だったとすると、鼻炎薬で鼻だけ改善してもあまり意味がないんですよね。
「答えは相手の中にある」というコーチングマインドが身についていると、表面的な情報だけで課題解決しようとする気持ちをグッと抑えて、本質的な課題が明確になるまで対話に時間をかけることができるようになります。
ーーお客さんすら気づいていない課題を対話によって明らかにする。とてもコーチングと通ずるものがありますね。向井さんはいかがですか?
向井さん:昨今増えてきている「SaaS」をはじめとするデジタルサービスや無形商材のビジネスは特に、お客さんにとって投資の判断がしにくいものです。大量生産大量消費の時代のように、生産設備や原材料を購買すると連続的な成長が担保されている、という時代ではないんですよね。
そういうサービスの導入を検討する際、何を判断材料にしたらいいのか、自分たちにとってこのサービスは最適なのか、お客さんだけで判断するのはとても難しい。そんな時に営業は「お客さんが本当に求めているものとは何なのか」「またその理想の状態を阻んでいるものとは何なのか」お客さんとの対話から引き出していく力が求められます。
ただ、「この人はものを売りつけてくるかもしれない」とお客さんが警戒心を抱いている場合、決して本音を話してはくれません。「この人は物を売ろうとしているわけではなくて、本当に私のためを思って話を聞いてくれているんだ」と伝わって初めてフラットな対話が生まれます。
その時に、相手の心に純粋な好奇心を向けるコーチングのスキルを身につけておくことは非常に有効です。
本音で話せる関係性を生むフィードバックの力
ーー営業のお仕事はサービスやプロダクトを売る以前に、お客さんとの本音の対話が重要になるんですね。
堀田さん:「本音の対話」で1つ思い出したのが、コーチングを学んで「フィードバック」というものへの捉え方が変わったなあと思います。フィードバックと聞くと、どうしても相手のダメなところを指摘するようなイメージがあり、お客さんや部下にフィードバックすることをどこか遠慮していたんです。
しかし、フィードバックの本来の意味は「栄養を戻すこと」と、THE COACH ICPの講義で学んでからはガラッと印象が変わって。相手の話をきちんと傾聴した上で、感じたことをそのままフィードバックしてみると、案外相手は喜んでくれるものだったのだと気づきました。
向井さん:たしかに、フィードバックは相手との関係性を一歩育んでくれるものだと僕も感じます。特にzoomでお客さんとお話しするようになってからは、相手の表情や声色に注目するようになりました。
例えば、お客さんがいつもよりも明るい表情をしていたら「今日、何かいいことありましたか?」と感じたままにフィードバックしてみる。すると「実はこんなことがあって」とうれしそうに話しはじめてくれます。
相手にとっては自身の体験を振り返るいい機会にもなるし、僕としても相手のことをより知れてうれしい。フィードバックはコミュニケーションの場を温めるうえで大切な考え方だと思います。
営業やコーチングでつながった関係性は、人生の資産になる
ーー信頼関係の構築やコミュニケーションが肝となる営業職のおもしろさややりがいはどんなところにありますか?
堀田さん:10年近く営業の仕事をつづけていますが、商談の場はコーチングセッションと一緒で1つとして同じものはないんです。
例え同じ会社であっても、その時々で状況が変わっていたり、担当者の考え方に変化が起きている場合もあります。いま目の前にいるお客さんの状況を深掘りし提案をおこなう。まさに“いまここから”はじめるコーチングと通ずるものがありますし、営業職のおもしろさだと思っています。
向井さん:僕はこれまで「お客さんがいま何に困っているのか」にもっとも焦点を当てたコミュニケーションを大切にしてきました。
そんなコミュニケーションを積み重ねてきたおかげか、僕が独立をしたとき、お祝いのメッセージをくれる方など、仕事だけの関係ではない“人とのつながり”が生まれていきました。そういった方々とのつながりは、僕の人生の資産です。まさに営業職の醍醐味だと思いますね。
ーー“ものを売る・買う”にはとどまらない関係性がお仕事を通じて生まれているわけですね。
向井さん:実はいま、営業アドバイザーとして知見をまとめたサービスの開発を進めているのですが、それを手伝ってくれているエンジニアの方がコーチングセッションを通じて出会った方なんです。
基礎コースでは「練習セッションをしてくる」という宿題があるのですが、僕はTwitterを使ってクライアント役を募集し30人ほどが手を上げてくれました。その中の1人が「昔受けた向井さんのコーチングがすごく良かったので、恩返しをさせてください」と、最近連絡をくれたんです。セッションをさせてもらってからすでに2年以上経っているのに、いまだに僕のことを覚えていてくれていて。
ーー2年越しの再会...!
向井さん:コーチングセッションも営業アドバイザーとしても、僕は何か目から鱗が落ちるような金言のような特別な助言をしていると思っていませんし、明確な指示という形で相手の行動を促したりはしていないんです。
それでも、相手の困りごとに真っ直ぐ耳を傾けて本質的な問いを投げかけていくと、こんなにも感謝されるものなんだと驚きました。
営業もコーチングも、いざという時に助け合えたり、人生の資産になるような人との出会いをもたらしてくれるものだと感じますね。
自己研鑽を目指す、すべての人に
ーー最後に、どんな人にコーチングをすすめたいですか?
堀田さん:お客さんに寄り添える営業になりたい人にとっては、コーチングは1つの武器になると思います。コーチングを学んだことのある人はまだ少ないですから、差別化にもなりますよね。営業職以外でも、マネージャーなど人の悩みや課題に耳を傾ける力を育てたい人は絶対に学んだほうがいいんじゃないかなと思いますね。
向井さん:すべてのビジネスパーソンにすすめたいと、前々から言っているんです(笑)その上で、あえて言ってみるならば「自分の人生をより良くしたい人」ですかね。
毎年、パーソル総合研究所の 「グローバル就業実態・成長意識調査」というものが発表されているのですが、諸外国と比較すると、日本は自己研鑽に投資する人の数が圧倒的に少ないことがわかります。転職や起業を希望する人の数も少なく、しかし「いまの会社で働きつづけたいか」と問われればNOと答える人が多い。つまり、思考停止していると思わざるを得ない人が多いんです。
僕はこの日本の現状に少々寂しさを覚えます。お金を稼ぐためだけに働き、自身の幸せは二の次になってしまっている。「身を粉にして働きたくさん稼ぐ」という前時代的な価値観がいまだに残ってしまっているんですよね。必ずしもそれが悪いとは思いませんが、仕事に対して他の目的や喜びを求めても良いのではないか、と思っています。
コーチングを受けることは「自分は本当はこんなふうにいきたいんだ」と、内発的な動機を促す力があると思います。コーチングを学ぶ人が増えれば世の中にコーチの数が増えて、日本人の自己研鑽欲も高まっていく。そしてこの国はもうちょっと良くなるんじゃないかと期待しています。
(執筆:佐藤伶)
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