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ものづくりは投票であり、かつマニフェストにもなる


"買い物は投票"。

2020年はこの言葉をたくさん目と耳にした年でした。

僕自身昨年1年間で、SNSでフォローするアカウントも、社会課題に取り組む個人や団体、メディアの割合がかなり高くなりました。それによって、日々触れる情報もガラッと変わりました。


100年に一度の異常気象が毎年どこかしらで起こるようになった日本と、熊本豪雨の被災者の方の声。
BLMのムーブメントの中で話題になった3世代の黒人男性の主張
食肉の人体への影響と地球環境との関わり。
世界の笑いものにされた、ある県立大学教授のセクハラ発言。
高いと言われている日本のプラスチックリサイクル率の実態とプラごみによる海洋生物たちの惨状。
ミネラルウォーター産業の闇や、日本人も全くもって他人事じゃない水不足問題。
コロナにより露呈した現代社会のさまざまな弱点と根深さを増す格差。

環境問題、ジェンダー格差、人種差別、貧困など。昨年1年で、さまざまな社会課題を知り、ときに目や耳を覆いたくなるような現実を見聞きしました。というか、今まで知らなさすぎました。


7月のレジ袋有料化がきっかけで、「エシカル消費」「グリーン購入」を意識するようになった人も多いのではないでしょうか。

自分の子供や孫世代に、くそみたいな世の中と、安心安全なんてどこにもない地球を残さないために、いち消費者として何にお金を使うべきなのか、何にお金を使うべきじゃないのか。
SNSのタイムラインに流れてくる情報と、Googleのアルゴリズムによってパーソナライズ化されたおすすめ記事によって、否が応でもそんなことを考えざるをえない1年でした。


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あけましておめでとうございます!

おめでたい新年1本目の記事から大真面目なテーマです。
数年前からたくさん議論されているテーマですし、まだまだ不勉強でお恥ずかしいですが、昨年得たさまざまな気づきを決意に変え、2021年はもっと行動に移していける年にしたいと思い、今日は「消費と生産の責任」について書いていきます。

(次回の記事は、今日の反動で「国内493のクラフトビールブルワリー(醸造所)の缶と瓶の使用割合ってどうなってんの」という、99.9%の人が興味がないめちゃくちゃニッチなテーマについて書く予定です)


「買い物は投票」のおさらい

そもそも、「買い物は投票」という言葉をあまり聞いたことがない人もいらっしゃるかもなので、おさらいをしておきます。

わかりやすいように、極端な例をあげます。

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A社とB社というアパレルブランドが2つあるとします。

A社は農薬をふんだんに使い、地球環境や農家さんの健康に大きな負荷をかけながらも、大規模かつスピーディに栽培されたコットンを使って安価な服を大量につくっています。また、シーズンが過ぎて売れ残ったものはすべて破棄していますし、服は当然のようにプラスチックでがっちり梱包されています。

一方B社は、GOTS認証を得た環境負荷の小さいオーガニックコットンを使ってつくられた生地の売れ残りを回収し、リメイクした古着を販売しています。商品の梱包もプラスチックを使わずに必要最低限に抑えています。

この2社の例を比べた場合、環境や人への負荷が大きいのは明らかにA社です。このA社の服を買うことは、A社の企業活動の継続を手助けしていることになり、それは環境破壊や農家さんの健康被害の一端を消費者として担っていることになります。これが、ある政党や政策に対する投票(意思表示)と似ていることから、「買い物は投票」と言われています。

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「極端な例をあげます」と書きましたが、A社のような会社は世界に溢れています。何も知らず、何も考えず消費活動をしていると、知らず知らずにA社のような会社にたくさんの投票をしてしまっています。それは、僕たちが暮らす社会や地球を、僕たち自身がぶち壊していることを意味し、あなたのお子さんやお孫さん、友人など、大切な方々の生命を危険に晒していることに加担しているとも言えます。


直接的すぎる言葉使いをしたり、極論的な物言いをすることが良いことだとは思っていませんが、事実を事実として認識しておくことも大切なので、あえて煽るような書き方をさせていただきました。

ただ、職業など置かれた環境によって、時間的にも精神的にもこういったシビアな問題に耳や心を傾けられない方もいらっしゃると思います。そういった方を無関心だとか、視野が狭いと言うつもりは毛頭ありません。個人ができる範囲でちょっとずつ学び、行動に移せれば、もう最高です。


盛り上がりの兆しを見せる「消費アクティビズム」

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上では「環境・健康負荷」と「アパレル業界」を例に書きましたが、投票(購入)する基準となる要素は他にもたくさんあります。

2020年の年末、化粧品大手「株式会社ディーエイチシー(DHC)」のECサイトに、吉田嘉明会長の名で在日コリアンを差別する文章が掲載されていたことが発覚しました。これに対し、多くの人が「#BoycottDHC」のタグとともに批判の声をあげ、SNS上で今も不買運動が続いていることはご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

化石燃料産業への貸し出し金額が多い銀行からの投資撤退を意味する「ダイベストメント(インベストメント=投資の逆)」の動きも、海外ではここ数年でどんどん大きくなってきています。


こうした意思表示や発言をSNS上でするときに、批判と誹謗中傷の違いは理解しておく必要がありますし、発信リテラシーは現代を生きる人の必須スキルだと思いますが、大前提として正しくないことに対して「正しくない」と公に声を上げることはめちゃくちゃ大切で必要なことだと僕自身思うようになりました。

アメリカにおいて活発化する、自分以外の誰かのために声をあげたり行動を起こす「私たち」のムーブメントについて書かれた『Weの市民革命』は、これから日本でも強くなっていくであろう「消費アクティビズム」の流れを捉えるのに、とてもおすすめです。


"ものづくり"という投票とマニフェストを考える

これまで書いた内容は、どちらかというと消費者側の「つかう責任」にフォーカスを当てましたが、それと同時に「つくる責任」も考えなければいけません。

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SDGs(持続可能な開発目標)にも「つくる責任・つかう責任」が12番目の目標として掲げられています。「責任をもって消費すること」と並んで「持続可能な方法で生産すること」も全人類共通の目標として世界で共有されています。


ここで考えたいのは、「買い物は投票」であるのと同時に、「ものづくりも投票」であり、消費者側からみれば「ものづくりはマニフェスト」でもある、ということ。

ものづくりをする上で、たとえば環境負荷の小さい形で栽培された原料を使い、環境ドリブンな企業と取引をすることは「投票」です。
SDGsの文脈でいうと、日本は欧米諸国よりかなり遅れていますが、日本でも多くの企業がコーポレートサイトのCSRのページなどに、自社がいかに社会に貢献しているか、環境負荷の軽減に取り組んでいるかを掲載しています。これは言ってみれば、消費者が「買い物という選挙」をする上で基準のひとつになる「マニフェスト」です。

そういったことに取り組み、サイトに載せたり発信したりすること自体はすばらしいことです。

でも、それって「投票」や「マニフェスト」として合ってます?「つくる責任」ってそういうことでしたっけ?って会社さんもたくさんあります。大企業であってもです。


たとえば、2020年7月1日にレジ袋が有料化されたとき、大手牛丼チェーンの『吉野家』は、バイオマス素材の配合率が30%以上の「有料化対象外のレジ袋」を無料で提供し続けることにしました。コロナ禍で衛生面を気にする消費者の方も多く、称賛の声もあがりました。

しかしその裏で、それまで使っていた「捨てると環境に悪い」レジ袋の余りは、日本中の各店舗ですべて捨てられたそうです

これでは、なぜレジ袋が有料になったか、本質をわかっていないと思われても仕方がありません。

国内女性誌として唯一の、丸ごと一冊SDGsを特集する女性誌『FRaU』も、表紙はPP(ポリプロピレン)加工がなされています。高級感を出すために、プラスチックでしっかりコーティングされてるわけです。
(内容自体はすばらしい雑誌です)


何が言いたいかというと

「つくる責任」も「つかう責任」もまだまだ改善の余地がありまくるんです(いろんなレイヤーの人たちが自分のできることをちょっとずつやっていくのが大事であって、すべてを完璧にする必要はもちろんないですが)。

これはものづくりの世界に足を踏み入れた僕の、新しい1年が始まる上でのこの上ない自戒でもあります。

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僕自身は、およそ3年後にはクラフトビールのブランド・醸造所を立ち上げるわけですが、ビールづくりをする上で考えなければいけないことはたくさんあります。

ホップや大麦といった原料は、誰がどこでどのように栽培しているのか。
醸造過程でどれだけ環境に負荷がかかっているのか。
負荷をかけた分はどこでどう回収するのか。
容器・梱包・配送はどうするのがベストなのか。
多様な人材が活躍できる会社であるのか。
自分のものづくりについて、お客さんにはどこでどんな言葉で伝えるのか。
これらに気を配りつつ、いかにおいしいビールを適正価格でつくるのか。


大前提として、ビール自体のクオリティがちゃんとしていない会社が生き残れるほど簡単な業界ではもちろんありません。まだ一人前のブルワー(ビール職人)にもなっていないくせに、と思われるかもしれません。ですが、商品のクオリティとは別軸でこれらのことは考えていかなきゃいけません

2021年はこれまで以上に社会と地球を知り、行動する1年にします。
頑張ります。


これを読んでらっしゃる方も、健康第一で、今年も頑張りましょう。
みなさんとみなさんの大切な人が、今年もビールがおいしい瞬間にたくさん出会えることを祈っております!


最後に

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ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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