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美しいものをつくりたい。それが何か、まだ全然わからないけれど


"美しいもの"と言われて、思い浮かぶもの。


いろいろあると思います。

数千年もの時を経てなお現存する建造物。
描き手の鬼気迫る創作欲が表現された絵画。
自分の肌に寄り添うような心地良さがある器。
少し前まで生きていたさまざまなが生命が盛られた料理。
あらゆる先端技術によって表現されたこの世ならざる映像。

この世に"美しいもの"はたくさんあります。けれど、一口に美しいと言っても、その「美しい」に内包される意味は恐ろしいほど多様で複雑で、それを享受する人間の感受性や、知識や経験に裏打ちされた審美眼といったものが同時に存在することで初めて美しいのかもしれません。

小さいころ、社会科見学や修学旅行で見た国宝級の絵画や器の美しさを、当時の僕は全くわかりませんでした。今でもその美しさを正しく享受できているとは到底思えません。こういう経験はみなさんもあるんじゃないでしょうか。


2020年も残り1週間というこの年の瀬に、今の自分では到底咀嚼しきれない本を読んでしまったので、今日は「美しいってなんやねん」という話をつらつらと書いていきます。


『美しいもの』『美しいこと』

ものづくりのお仕事をしている尊敬する友人が1冊の本を貸してくれたのが、きっかけでした。

輪島塗の塗師(ぬし)・赤木明登(アカギアキト)さんのエッセイ集『美しいもの』。内容としては、赤木さんが、器や布、音楽などさまざまなジャンルのクリエイター14人の暮らしを訪ね、その美学に迫る、というもの。

"美しいもの"って何なのか。人とものの幸せな関係性ってどういうものなのか。
美しいものを美しいと捉え感じるセンス(知識と経験)が乏しすぎる僕にとっては、とても思索に満ちた、使ったことがない部分の脳みそが刺激されまくる本でした。


読んだ感想を本を貸してくれた友人に伝えると、続編にあたる『美しいこと』という本も出版されていると聞き、早速購入し読んでみました。

1作目同様、"美しいもの"をめぐる赤木さんの思考と訪れた先の作家さんたちの言葉に、これまで使ってきた「素敵」という言葉に含まれる意味とは全然違う「素敵さ」を感じ、新鮮でいながらもうまく言葉に表すことができない複雑な気持ちになりました。

この2つの本を読んで得た1番の収穫は、赤木さんやこの本に登場するクリエイターの方々と比べて、自分がいかに"美しいもの"を(そのものが本来持っている美しさと比べて)「美しい」と感じることができていないか、そしてその「美しさ」を表現する日本語がいかにヘタクソかを知ることができたことです。そして、赤木さんたちのように、ものの美しさをきちんと感じ、言葉に表すことができる人生の方が良い、と強く思いました。


"美しいもの"を「美しい」と感じることができるようになるためには、先天的な才能によるものもちょっとはあるとは思いますが、それよりは圧倒的に知識と経験が必要なんだと思います。たぶん。


「美しい」の基準なんて、もちろん人それぞれで、時代によっても異なります。でも、この世で美しいとされているあらゆるものを見て、触れて、「なぜそれが人の心を震えさせるのか」「人はその何を美しいと感じているのか」を客観的に、同時に感覚的に、自分で咀嚼することを反復することが大事なんだと思います。

そして何より、自分がつくってみることが1番な気がします。本に出てくる方々が自分の手でものづくりを続けてらっしゃる方々なので、これは間違いないと思います。


じゃあ、美しいビールってなんだ

僕は、醸造家を目指しています。

僕がつくるのは、クラフトビールです。ビールに「美しい」という形容詞がつくことがあまりありませんが、どうせなら、いつか「美しいビール」を作りたいと思うわけです。

ここでいう「美しい」は、ビールの色の鮮やかさとか、泡立ちの良さとか、そういう視覚的な美しさももちろんあるんですが、そうじゃない、視覚以外の4つの感覚や、もしくは第6感も合わせて感じるものなんだと思います。

『美しいもの』の本を貸してくれた友人に『koti brewery』さんのホワイトエールをお返しにプレゼントしたところ、飲んだ彼女から「丁寧に作られてるのが伝わったよ」という感想が帰ってきました。なんとなくですが、「美しいビール」の一端を見たような気がしました。

「何書いとんやコイツ」と思った方。大丈夫です、僕も同じ気持ちです。


(雑誌に書いてた)"美しいもの"とは

これで終わるとあまりに訳のわからない記事すぎるので、こないだ読んだ11月号のソトコトにちょうど記載のあった"美しいもの"に関する記事を引用します。

私がこれからつくるべきだと思うのは”美しいもの“です。それは何かと言えば「世界の平和と人々の幸福に寄与するもの」「自然や他者と共生できるもの」だと考えています。

アートプロジェクトの企画やプロデュースをなさっている林口砂里さんの言葉です。「なるほどたしかに」ですよね。林口さんも、きっとたくさんの"美しいもの"に出会い、ときにご自身の手でも創り出し、世の中と照らし合わせながら自分の中で解釈し、この定義に至ったんだと思います。

僕も、この定義を「なるほどたしかに」と思いつつ頭の片隅にしっかりと保管して、自分なりの"美しいもの"を探っていきたいと思います。そもそも"美しいもの"を無理に定義付けする必要なんてないのかもしれません。でも、言葉に表すことで、誰かと「美しさ」を共有できるというのは、とても素敵なことだと思うんです。


いよいよまじで何を書いているのかわからなくなってきましたが、これからの長い長い醸造家人生、"美しさ"というこの上なく漠然とした概念に、しっかりと向き合っていきたいと思い、拙文は重々承知で書いた次第です。

次回はもっとわかりやすいテーマの記事にしよっと...

最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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