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「できれば他の議員に教えたくない!」政治に興味がなかった住民と双方向のコミュニケーションができる貴重なツール―大田区議(無所属)・いぬぶし秀一さんインタビュー

地方議員のみなさん、地域住民の声、しっかり聞けていますか?
そこから出てきた悩みを、解決できていますか?

自発的に悩みを伝えてくれる地域住民は、少数派なのが現実です。議員の側から聞きに行こうとしても、特に若い世代の方々とコミュニケーションを取れる機会は、そう多くはないでしょう。

そんな地方議員にとって切実な悩みを解決してくれるのが、くらしの悩みをみんなで解決する政策実現プラットフォーム『issues』。2019年3月のサービス開始以降、地域住民の声が政策実現につながる事例が、少しずつ現れはじめています。

このマガジンでは、issuesを通じてくらしの悩みが解決した事例を、その実現に携わった議員の方々に話を伺いながら紹介します。

この記事に登場するのは、「民間の感覚」を大切にしながら20年以上議員活動を続けてきた、大田区議会議員のいぬぶし秀一さん。いぬぶしさんは、issuesを「30〜40代の『無党派層・支持政党なし』の住民にアプローチできる貴重な場所だ」と捉えます。欠席届のオンライン化をはじめ、issuesを活用して住民の要望を次々と実現している犬伏さんに、その秘訣を聞きました。

取材:石神沙織(株式会社issues)/文: 小池真幸

たくさんの住民からダイレクトに要望を吸い上げられる

── 今日はよろしくお願いします! まずは自己紹介からお願いしたいのですが、大田区議会議員として20年以上活動されているのですよね?

いぬぶし:はい。私はずっと、役人の感覚を民間の感覚に近づけることに取り組んできました。言い換えれば、役人の意識改革ですね。ですから、役所の中では嫌われ続ける議員生活を送ってきました(笑)。

並行して、兼業で別の会社を立ち上げ、その経営もずっと続けています。完全に民間から離れてしまうと有権者との感覚の乖離が生まれてしまうので、民間人という立場を常に持っていることが大事だと思っているんです。

いぬぶし秀一さん(右上)

── 民間と政治や行政の距離感を縮めることを、ずっと大切にされてきたのですね。そんな中で、issuesを使っていただけるようになった経緯も教えていただけますか?

いぬぶし:ある区民の方のブログでサービスの存在を知った後、知り合いの議員に紹介していただき、始めることになりました。たくさんの区民から基本的には実名でダイレクトに要望を吸い上げられる、とても面白い仕組みだなと思いましたね。

これまで、住民の方々から自発的に意見をいただくことはほとんどありませんでした。意見を直接吸い上げるための手段も、町内会や敬老会に直接出向くか、私のウェブサイトやブログ、SNSを通じて直接ご連絡をいただくしかない。ただ、そうして接することができる方々は、区民の中でもごく少数しかいませんし、とりわけ若い世代にはなかなかアプローチしづらいのが現実です。

──使い始めるにあたって、不安だった点はありましたか? 例えば、「投稿が荒れないか不安」という懸念をよくいただくのですが。

いぬぶし:あまりなかったですね。変なコメントをいただいたり、インターネット上で荒れたりするのは慣れていて、有名税みたいなものだと思っているので(笑)。

ただ、実はissuesに登録した後、一度やめてしまっていた期間があるんですよ。活用法がよくわかっていなかったこともあり、要望ばかりが溜まっていた。毎日、メールの2ページ分くらいがissuesのコメントでしたが、手間を惜しんであまり対応せずにいたんです。結果、あまり効果を実感できず、やめてしまった。

でも、コロナ禍になってから、非接触型でたくさんの有権者の意見を聞けるツールは他にはないなと思い直し、また使い始めました。それ以降はほぼ毎日返信をするようになったのですが、そうするうちに「これはすごいぞ」と感じるようになったんです。「できれば他の人には教えたくないな」とすら思っていました(笑)。

「無党派層・支持政党なし」への貴重なアプローチ手段

── issuesのどのような点に、魅力を感じていただけたのでしょうか?

いぬぶし:オンライン上で住民の方々と双方向のコミュニケーションを取れる点ですね。とりわけ、30〜40代で無党派層・支持政党なしの住民の方々がたくさんいらっしゃるのは大きい。そうした方々は、政治への関心があまり高くなく、選挙にも行かないような人が多いので、アプローチするのがとても難しい。

でも、issuesには、ご自身の生活を通じて政治に関心を持った30〜40代の方々がたくさんいらっしゃる。すると投票にも来てくれるようになるので、とても貴重な存在です。

とりわけ、大田区で生まれ育ったり大田区内で商売をしたりしているわけではない、平日の昼間は他の地域に働きに出ている大田区民。そうした方々は投票率がとても低いことがわかっていますが、issues上ならコミュニケーションが取れて、結果として私に投票してくれる可能性も高まります。

── これまでアプローチしづらかった住民の方々にも、コミュニケーションを取れるようになったと。

いぬぶし:はい。しっかり返信すると、「本当に議員の方から返事が来るんですね。びっくりしました」とリアクションをいただける。本当にお悩みベースでのやり取りなので、おべんちゃらは通用しません。解決するかどうかの、真剣勝負。「おっしゃることは重々わかりますので、所管部局に検討を促しておきました」なんて形式上の返事をしたら、失望されてしまうと思います。

その分、丁寧に対応すれば「次の選挙、必ず投票します」と喜んでいただけます。返信すると来る「ありがとう」のスタンプも嬉しいですしね。まだ利用している議員さんもそこまで多くないので、誤解を恐れずに言えば行くだけでたくさん魚が釣れる、“釣り堀に来ている”ような感覚です(笑)。

欠席届のオンライン化をはじめ、issuesで吸い上げた要望を続々と実現へ

── issuesを通じて、実際にどのような住民のお悩みを解決したのでしょうか?

いぬぶし:まず大きかったのは、欠席届のオンライン化です。大田区では2021年の春に、区内の小中学生全員にタブレット端末が支給され、Wi-fi環境のないお宅に対しても支援する体制が整いました。ただ、それをどのように活かしてICT教育を実現していくかは、個々の学校や教員に任されており、学校によって大きな差が生まれていたんです。

そんな中で、欠席届を紙で出さなければいけないのが特にコロナ禍の状況では不便なので、タブレット端末で出せるようにしたいという要望がissuesでたくさん集まりました。だいたい、360人くらい集まりましたね。約半年ほどかかりましたが、個人情報審査会や審議会に対して働きかけて、実現にこぎつけました。

ただ、それが実現したと思ったら、またissues上であるお母さんから連絡が来まして。欠席届がオンライン化されたはいいものの、個人情報保護の観点で病名は伏せねばならず、それだけ連絡帳に書くことになり引き続き不便だと。でも、ノートは同級生も含め誰でも見られますが、オンライン化すれば先生以外は見られないようになるはずです。「これはおかしい」と思ってすぐに働きかけ、電話で病名を聞いていただく形に変更しました。

── issuesを通じて、住民の方々のお悩みをどんどん解決していただいているのですね!

いぬぶし:学校からのプリントなどのオンライン化についてもissuesで多くの要望をいただいたので、モデルケースを作って区内全体に展開できるよう、教育委員会に働きかけているところです。

それから、「ペットを連れて避難所に行きたい」という声もissuesで多くいただきました。これに関しては、実は既に大田区内91カ所の避難所に全てペットを連れてこられるようになっています。ですから、避難所の導線が記載されたマニュアルを、要望をいただいた一人ひとりにご案内していますね。

大きな後ろ盾のない議員こそissuesを

── 次々と要望の実現に動いていただいていて、ありがたい限りです。最後に、住民の方々と議員の方々に、それぞれメッセージをいただきたいです。まずは住民の方々に向けて、お願いできますか?

いぬぶし:自ら積極的に政策実現に参加できるissuesという仕組みはとても貴重だと思います。そうして少しずつ地方議員とのかかわりを持っていき、興味が湧けば議会の傍聴などもしていただくと、それぞれの議員のことがよくわかります。

数字だけ見ても、大田区議会50名の議員を議会で動かすために、区の職員さんも含めて、なんと年間10億円かかっているんです。もちろん。全部皆さんの税金です。だからこそ、もっとこき使わないともったいないです。

── 自ら動いて、知ることが大事だと。まだissuesを登録・利用していない議員の方々向けのメッセージもいただけますか?

いぬぶし:先ほどお話ししたように、issuesは私にとって“釣り堀”なのであまり教えたくないのですが(笑)、これからいろいろな考え方を持った議員が増えていくと、行政も無視できない大きな存在になると思います。

ですから、当面は無料で利用できるので、まずはお試しでも参加してみることをおすすめします。特に私のように、大きな勢力をバックグラウンドとしておらず、一人や数人の会派で活動している議員にとって、多くの住民の方々を味方につけて役所と交渉できるツールはとても貴重ですから。

──今日はありがとうございました!

※いぬぶしさんに要望を送りたい大田区民の方はこちら。
https://the-issues.jp/?utm_source=corporateNote&medium=officialUpdate&campaign=InubushiInterview


※今回の記事で興味を持っていただいた議員の方向けのご案内はこちら。 https://the-issues.jp/seijika.html?utm_source=corporateNote&medium=officialUpdate&camp aign=InubushiInterviewInterview


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