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【こころ #45】自分も経験したから、人の苦しみがわかる


ココペリさん


 思い返せば、「周りが話すスピードについていけず、行動も遅かった」のかもしれない。「空気が読めなかったり、人の感情の機微に疎かったり、周囲の友達との和気あいあいや仲良しこよしが理解できず、ハブられたこともあった」。

 そんな学生時代を終えて会社に就職してからも、周囲との人間関係やそれに基づく仕事がなかなかうまくいかない。「自分は何かがおかしいのではないか、周りと違うのではないか」という疑念が頭をもたげ始めた時にココペリさんがネットで見つけたのが、『発達障害』という言葉だった。そこから「よくよく調べてみると、自分にほぼ当てはまった」。



 ここで『発達障害』をちゃんと説明することは難しいが、『発達障害』は大まかに以下の通り分類される。

  • コミュニケーション能力や社会性に関連する『広汎性発達障害』(自閉症やアスペルガー症候群など)

  • 「集中できない(不注意)」「じっとしていられない(多動・多弁)」「考えるよりも先に動く(衝動的な行動)」などを特徴とする『注意欠陥多動性障害(AD/HD)』

  • 全般的な知的発達に遅れはないのに、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力を学んだり、行ったりすることに著しい困難を示す『学習障害(LD)』

(注)その他にもトゥレット症候群や吃音(症)もあり、詳しくはこちらを参照されたい。


 ココペリさんは、ちょうど会社を退職するタイミングで、こうした『発達障害』を知ることになる。しかし、退職後もうつ症状があり、「やりたいことがあっても、夢を抱いているだけで、なかなか動き出せなかった」。

 しかし、意外な出来事が転機になる。怪しいビジネスの勧誘を受け、相手の女性に話をしている中で、ある時、「相手の女性の態度が変わって(自分を)認めてくれるようになり」、ココペリさん自身も相手の目を見て話せるようになった。

 それまでは、「話すのが下手過ぎてうまく伝えられないまま否定の言葉が返ってきて、話しても意味がないと思っていた」のに、初めて「自分の言葉に好意を持ってもらった」と感じた。その時、「脳がグワッと変化した気がして、涙が流れた」。きっかけは怪しいビジネス勧誘だったかもしれないが、ココペリさんにとっては、自分と同じように苦しんできた人間にとって何が必要か気付いた瞬間だったのだろう。


 そこから自分と同じ当事者が集まる発達障害カフェや自助会に足を向けるようになると、そこは「みんながわかり合える居場所」だった。ココペリさん自身も仲間意識や居心地の良さを感じると同時に、自分についてもっと理解するために脳や感情の勉強も始めた。そうした経験によって「周りとの違いを理解し、それを(自分以外に)説明できるようになった」。

 そんな自身の体験から発想したのが、『自分プレゼンテーション』というイベントだった。同じ当事者の仲間とともに、「誰もが大勢の前で自分のことを話せるようになる練習ができる場所」として1か月に1回のペースで始め、毎回多くの人に参加してもらった。さらに、そこからやりたいことに一歩踏み出して起業などにチャレンジできるように支援する場として『アイデアプレゼンテーション』というイベントにも取り組んできた。

 そうした取り組みの中で、「(ココペリさん自身も)自分のことを周囲にプレゼンし、起業してやりたいことを実現したいし、みんなにもしてほしい」というスタンスは変わらない一方で、誰かからお金を取ったり、お金を過度に稼ぐこと自体への抵抗も生まれている。そのため現在は、少しでも自己実現して社会に貢献する形と、生活していくための経済力のバランスを模索しているところだ。


 ココペリさんのように、会社という働き方に馴染めず、でも自分と同じ苦しみを持つ人を助けたい、そして社会に貢献したいと願う当事者は数多くいるだろう。当事者による起業も応援するInclusive Hubとしても、ココペリさんが挑戦されてたような声を上げる場所や、その先のチャレンジを生み出す場所の創出に貢献していきたい。



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