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【こころ #25】自分に合った就労に向けた施設一体の努力

H さん


 東京都では、知的障害者(児)が各種のサービス(手当、制度等)を受けるために、知能測定値、社会性、日常の基本生活などを、年齢に応じて総合的に判断し、1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)に区分される。Hさんは、4度に当たる。


 Hさんは、最近就職が決まった。「人から感謝される仕事で、そんな会社に憧れて。接客業やっていたせいかな。」とはにかみながら教えてくれた。

 現在在籍する『社会福祉法人 大田幸陽会』の就労移行支援事業所『さわやかワークセンター』に来たのは1年前。それまでは、大手総合スーパーのフードコートで接客と洗い物を担当されていた。19年もの間働いた職場を離れた理由は、体制の変更。昔はなかった「時間内までにやらされて遅いと言われたり、びくびくするようになり、ついていけなくなった」。

 それでも、もう一度「自分に合った仕事」を見つけたい。事業所に在籍した当初から職員の方々に協力してもらい、次の就労先を探した。ぴったりだと見つけたのが、「介護施設でお年寄りの洗濯物を畳む仕事」。実は、Hさんが1年前に事業所に入所してすぐの頃、同じ仕事に「一度チャレンジしたが、今一歩で」就職が叶わなかった。

 「慌て癖とかスピードがダメなところ」を少しでも改善するために、色んな場所で就労体験をしたり、「洗濯物をきれいに畳めるように自主練もした」。「もう落ちたくなかった」Hさんの特訓の成果が認められ、1年越しに「憧れた会社に入る」ことができた。

 横におられた職員の方が、「1年かけて、色んな経験をしたことで、スキルだけではなく、向上心や物事に取り組む姿勢を、今後の成長の伸びしろも含めて評価してもらったんです。支援のしがいがあると言うか、応えてくれたんです。」とおっしゃったのが印象的だった。


 嬉しい一方で、Hさんから「この事業所にいられなくなるのは、寂しい」という言葉も漏れた。理由を聞くと、「皆さんいい人で、イジメる人とかいないから」と返ってきた。「私を良く見てほしい。こういう子なんだから。育った環境も違う。しょうがないでしょ。こうなりたくてなったわけじゃない。でも、親からもらって大切に育てられた体なんだから。思いやりをもってほしい」。多くの色んな経験を乗り越えてこられたのだろう。


 Hさんが就労にこだわった理由は、もう一つあった。大田区が進める活動『たまりば』。障害のある人が仕事を終えた金曜の夜に集まる余暇活動の場。その参加条件が「就労していること」だったため、「たまりばに復活したいから就労したかった」。復活は叶った。


 にっこりと「わたし、小説を書くんです」と見せてくれたスマホには、こう書かれていた。

 「虹の架け橋」
地平線の向こうに人通りの激しい世界
天寿をまっとうして虹を越えた先にたまりばがある
終活まではまだ早い
人生は順送りだと思う

 Hさんのお母様が最近亡くなられた。ご両親とももうこの世にはいない。「いまどこにいるのかなぁ、空のどこかから見てくれているかなぁ」とおっしゃったHさんの笑顔に、何か乗り越えてまた前を向く、そんな強さを感じた。



▷ 社会福祉法人 大田幸陽会


▷ さわやかワークセンター



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