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【みみ #41】自分と同じ聴覚障害者の就労支援に取り組む


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榎本朋子さん


 「聞こえないことって、聞こえる人がどんなに想像しても想像できない世界。(かつて聞こえない世界にいた)自分がどこまでわかって寄り添えるか、やってみたかったんです」


 榎本さんはかつて中途失聴して聞こえない世界を経験し、聴力を取り戻してからは、たまたま紹介された障害者就労移行支援事業所に勤めていた。

 そんな榎本さんが「聴覚障害当事者だからこそ、聴覚障害のある方の就労支援に集中して取り組みたい」と思い立ち、唯一探し当てたのが、株式会社ゼネラルパートナーズが運営する聴覚障害専門の就労移行支援事業所「いそひと(当時の名称、現在はatGPジョブトレ大手町第29話でもご紹介)」だった。


 榎本さんが会社のHPを見ると、「『(障害者専門のサービスを提供する)ゼネラルパートナーズはもう必要ない』と言われるような社会に変えることがゴール」と書かれている。「この会社いい!って思って、採用してもらえませんか?って直接電話していた」

 榎本さんはそのまま入社して、希望の聴覚障害専門の就労移行支援事業所で4年間働いたのち、現在は、うつ症状専門の就労移行支援事業所でサービス管理責任者を勤めている。そんな職場を「自分もああなりたいと思える素敵な人がたくさんいる場所」と表現してくれた。


 榎本さんに全く聞こえなかった2年間を振り返ってもらうと、「地獄のような世界を味わった」と返ってきた。


 きっかけは、風邪だった。すごい咳をしたら、耳につながるリンパ腺が左耳の中で切れ、リンパ液が漏れ出し、平衡感覚や聞こえがおかしくなった。病院で耳を開けてみると、生まれつきの奇形があったことが判明し、病名も特に言われないままに「なるべくしてなった。右側も聞こえが悪くなるかもしれない」と告げられた。

 その後、左耳が徐々に聞こえなくなっていく。「片耳だけ聞こえることもすごく大変で苦労が多かった」せいで逆の右側を酷使していたからなのか、左耳の聴力をほとんど失ったタイミングで、ある朝起きると突然右耳も聞こえなくなった。


 自分が置かれた状況を周囲にわかってもらえない辛さ。旦那さんやお子さんの雑談に入りたくて慣れない筆談で尋ねても「関係ない話だよ」と言われてしまう。「家族も、今まで元気なイメージだったお母さんが沈んだり荒れたりする姿に、どう接していいかわからなかったんだと思う」と榎本さんは振り返る。

 冒頭で紹介した、聴覚障害者を「どこまでわかってあげて寄り添えるか、やってみたい」という発言の背景には、こうした自身の辛い経験がある。


 その後、「最低限のところまで落ちたと思うと、上がるしかない」と思うようになれた榎本さんは、手話を習い始めてコミュニケーションを取り戻し、そして、片耳に人工内耳を装用して聴力を取り戻した。

 さらに、社会復帰しても手話を続け、仕事の傍らで難聴者に手話を教える資格も取得した。また、当事者団体「人工内耳友の会ACITA」の活動にも携わっていく。人工内耳を装用して聴力を取り戻したと言えども、榎本さんの場合は片耳だけで反対側から話しかけられると聞こえないなど、「健常者のように聞こえるわけではない」し、人工内耳が高額で補助が付かないといった課題もある。現在、榎本さんは理事として、そうした啓蒙活動を続けている。


 一方で、近時、人工内耳を幼児期から付けるなど装用者数は増えている一方で、当事者団体の会員数は減っているのが現状だ。今の時代、若い人はスマホから情報が取れるので、団体として活動する人が少なくなり、当事者会が高齢化している。

 榎本さんは、聴覚障害当事者の”聞こえ”を周囲に少しでもわかってもらえるような「聞こえのトリセツ」の伝え方を教えるなど、団体に所属する上でのメリットを訴求していきたい。


 このように就労支援の業務としても当事者活動としても聴覚障害者支援に関わってきた榎本さんは、聴覚障害の場合、「支援で一番大事なコミュニケーションの取り方が最も難しいからこそ、当事者と支援者の双方が歩み寄ることが大事」と話す。だから、榎本さんのような「聞こえる世界と聞こえない世界の両方を知っている」存在が重要になる。

 また、現在支援するうつ症状のある方は「頑張りすぎてしまう」傾向があるため、「そんなもんでいいんじゃない、生きていればどうにかなるよ」と声をかける。前述の通り、榎本さんも自身の障害を周囲にわかってもらえずに苦しんだ経験がある。支援者というよりは「わかってくれる存在、話が通じる存在でいたい」と榎本さんは話す。


 榎本さんのお話から感じるのは、障害者支援に際しての、同じ当事者経験をもつピアの強みだろう。

 誰かが困難に直面した時に、榎本さんのようなピアとすぐにつながることができ、そこを入口に適切な就労移行支援事業所や有益な情報を提供してくれる当事者団体にもつながっていく。そんなことにInclusive Hubも貢献できたら嬉しい。
 




ここまで読んでくださった皆さまに‥


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