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【こころ #46】「誰もが自分らしく」が表現された創作誌


虫生 玲さん


 虫生さんは現在、株式会社ゼネラルパートナーズが運営する、発達障害及び聴覚障害のある人向けと、統合失調症及び難病のある人向けの、2つの就労移行支援事業所の施設長を務めている。

 大変多忙な日々を送るにもかかわらず、ご自身の“支援”という仕事について、「何かやれるなんて思っていない。目の前にいる人の役に立てればラッキーなぐらい。一生懸命に向き合うことで、あくまで自分が学べて幸せになれる仕事。」と紹介された。


 それは20年前から変わっていない。虫生さんが最初に福祉の世界に入ったのは、精神障害の就労支援をするNPO法人。まだ精神障害の当事者には「なかなか出会えない時代」。当時30代前半だった自分よりも年上の、長期入院から退院した方々が懸命に和紙をつくったり作業する姿を見て、何より自分の方が「学ぶところが多かった」。仕事をすることを生きがいにどんどん回復していく当事者の姿に、「お金をもらって働くことがとても大きなリハビリになる」ことを実感し、同時に「そこにずっと関わっていきたい」と思った。


 10年強勤めた後に、旦那さんの仕事の関係で米国に駐在するも、「帰国した後は同じ領域で」という想いは変わらず、そこに向けて良い気づきも得られた。当時中学1年生だったお子さんは「ちょっと言語が話せなくても、多様性が前提だから、受け入れてもらえた」。海外に出たからこそ、「ちょっと違うことでも違和感を受け入れられない、同じレベルの知識獲得を目指すことが前提になっている」日本の風景が見えた気がした。

 そうした気づきも、帰国後から現在まで勤めている株式会社ゼネラルパートナーズが掲げる「誰もが自分らしく」というビジョンに共感する背景になった。


 入社後に発達障害のある人向けのコースに配属されると、同じ当事者経験のあるピアの力もあって「利用者みんなの才能が爆発していった」。

 ある時、現役生、卒業生が自由に活動できる土曜日開所の時間にそんな利用者から、「自分が生きた証拠を残したいから、創作誌をつくっていいか?」という提案があがる。創作誌のテーマ決めから原稿作成や編集作業まで、現役の利用者だけでなくOBOGも、社員も立場の垣根を超えて、フラットな目線で議論して創作誌はできあがった。『LINK BE』というかつての事業所名が付けられた創作誌は現在、第三弾の検討まで進んでいる。

 創作誌にある文章の一例をあげると、ホームレスの路上支援に取り組んだ職員さんの話がある。この職員さんは、剝き出しで生きている人と関わる中で、自分こそ持っていた偏見や欺瞞や弱さも剥き出しになっていくことに気付く。そして、それを通じて、自分の存在も他者の存在も受容するようになっていく。その最後には、「世間が決める「いい人間」ではなく、自分が望む「自分」になろうと努力できるんじゃないだろうか」と結ばれている。

 この職員さんに限らず、創作誌の中には、利用者さんも含めて誰もが自分らしく生きていくことについての自由な表現が散りばめられている。



 この提案を後押しした虫生さんは、「「自分らしく生きられています」という声に触れられるだけで満足」と振り返りつつも、こうした創作誌の取り組みからでも「地道に知ってもらって、実際に会ってもらってこんな力があるんだとたくさんの方にわかってもらいたい」と力を込める。

 虫生さんがこの領域に入って20年。障害者求人も目立つようになり、利用者も自ら選んで就職できるようになってきた一方で、「実際の当事者に出会ってもらえる場がまだ少ない」と感じている。それ故にまだ「偏見も改善されていない」。

 障害のある当事者や支援者は懸命に声を上げ、見える形で何かを残そうとしている。あとは、もう一歩、二歩と外側の社会がそこに目を向けるだけだ。その仕組みこそ、これから求められている。




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