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【みみ #3】聴覚を補完し対話を向上する技術への期待

坪倉 雄一さん


 坪倉さんは、聴覚障害で最重度の2級。電車が通過している時のガード下くらい(100デシベル)以上でないと聞こえないほどの聴力だ。第1話でご紹介した坪倉さんの息子さんであり、続く第2話でご紹介した高橋さんの弟さんである。

 坪倉さんは読唇(どくしん、話し手の口の形を用いて言葉を理解すること)をできるため、私も大きく口を開きながら、お姉さんである高橋さんにもサポートいただきながらお話をお聞きした。


 「小さい頃に自分が聞こえないと意識したことはなかったです。物心ついた時には耳に補聴器がついてて、それを触ったり投げたりしてました」。
 音自体は入ってくるので、“聞こえない”というニュアンスはちょっと違うのだそう。私とのように1対1で向き合う分には読唇とご自身の発声でコミュニケーションは十分可能だが、「家族みんなで食事をするときには会話のスピードについていけないこともあり、分かるように話してもらえないという孤独感はよくあった」と明かしてくれた。ご家族に限らず「そういった輪に入らないようにしていた」。

 そうした経験が「自分の性格にも影響して、少し歪むというか、ネガティブ思考になったかもしれない、それは今でも」と苦笑いされた。


  社会に出て仕事を始めると誰しも大人数の朝礼や会議といった場面がある。坪倉さんがそういったシチュエーションで話を聞く際には、音声を可視化してくれる「YYProbe」というアプリを使って携帯端末を見ることで内容を把握しているそう。即ち、坪倉さんの場合、読唇が難しいケースでも、ご自身で話すことができるため、相手の発言内容さえわかれば会話がスムーズにできることを意味する。

 その点で、あったらいいサービスとして、携帯電話でスピーカーモードを使うように、置いた携帯電話のディスプレイにそのまま相手の発言が文字起こしされる機能を例に挙げられた。

 また、耳が聞こえない故に、後ろから救急車が近づいてきたときや、新幹線が突然停車したときなど、何かしら緊急事態が起きたときに何かしら音声情報以外で気づけるすべがあればというお話もしてくれた。


 ふと思う。同じようなニーズは高齢で耳が遠くなられた方にも当てはまらないだろうか。

 いま誰もが毎日のように利用するSMSメッセージを開発したエンジニアの着想は、「聴覚障害者がモバイルネットワーク上でコミュニケーションをとれるようにしたい」というものだったらしい。

 障害のある方の課題の解決は、より広く便利をもたらす可能性を秘めている。坪倉さんが挙げてくれた課題をそんな想いで解決できたら素敵だ。



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