見出し画像

【こころ #58】自分の経験から広めたい「リカバリー」


⭐ ファン登録のお願い ⭐

 Inclusive Hubの取り組みにご共感いただけましたら、ぜひファン登録をいただけますと幸いです。

 このような障害のある方やご家族、その課題解決に既に取り組んでいる研究開発者にインタビューし記事を配信する「メディア」から始まり、実際に当事者やご家族とその課題解決に取り組む研究開発者が知り合う「👀ミートアップ👀」の実施や、継続して共に考える「🤝コミュニティ🤝」の内容報告などの情報提供をさせていただきます。

🔽 ファン登録はこちら 🔽



千葉真希さん


 「自分のやりたい仕事を、意義を感じているほど、頑張ってしまって、その過程で自分で普段できるペースの何倍か早くできちゃったり、常に色んなことが頭に浮かんだり、頭の回転が速くなったり。仕事はうまくいってても、でも気づいたらエネルギー切れになってしまう感じ」


 この千葉さんの言葉に誰しも何かしら共感できる部分があるのではないだろうか。

 その上がる下がる波の振れ幅は人によって違うだろうが、その幅の大きさを自分で客観的に把握し、上がる下がるのバランスを適切にとれる人はどれほどいるのだろうか。


 千葉さんは、新卒で入った会社では営業を担当し、2年目には社内最速で社長賞を受賞するなど、バリバリ働く毎日を送っていた。「仕事にも慣れてきて、色んな事ができるようになった。休みの日も仕事をして、仕事の後は資格取得の学校にも通った。それを楽しんでいた」。



 それがある日、突然起きられなくなり、無断欠勤をしてしまう。やっと出勤できても遅刻をしてしまう。理解のある上司が部署移動など調整もしてくれたが、うまくいかない。上司の勧めで病院にかかると『双極症(双極性障害)』と診断された。

 『双極症』とは、テンションが高く活動的な『躁(そう)』状態と、憂鬱気味で無気力な『鬱(うつ)』状態を繰り返す病気で、『躁うつ病』とも呼ばれる。

 千葉さんの場合、上がる下がるの波の振れ幅が大きくなっていたのだ。振り返ると、「調子がいいときは、そのまま継続したくなるが、(上がる下がるの)ベストな真ん中がわからず、やり過ぎちゃうことが多かった」


 診断を受けて、千葉さんは仕事を休職。療養を経て、復職に際しては、リワークプログラムにも参加した。気分と体調の二つの軸で点数化して、それぞれ何があったかを記載し、自分を細かく分析するなどのプログラムを通じて「(自分自身のことが)徐々にわかるように努めた」

 その後、千葉さんは復職や転職もして働いてきたが、まだまだ「うまく制御できない時もある」。特に躁状態だ。もう一つの鬱状態の場合は、元気がない状態に自分でも気付くし、周囲も気遣いやすい。一方で、元気がある躁状態は、自分でも気分がいい上に、周囲も「元気があるのは良いことなので、その状態を維持して頑張ってほしいと思ってしまう」ので、さらに促進されてしまう面があるのだ。

 千葉さんの場合、そうした躁うつの波を自分でコントロールできないときには、パートナーからの客観的な声かけに助けられている部分も大きい。結婚を経て、自分を理解し尊重してくれる関係を持てたことで、波がある中でも自分らしさを大切にできるようになったことは、リカバリーの大きな第一歩だった。


 そして、そういった自分の体験から、自分らしく生きる「リカバリー」を広めていきたいと考えた。そんな千葉さんが現在勤めているのが、第54話でご紹介した、精神障害・発達障害のある方の創作活動・就労支援サービスと企業のDX支援サービスを提供する株式会社パパゲーノだ。千葉さんは、昨年9月に同社が開所した就労継続支援B型事業所で職業指導員をしている。

 かつての同僚からの誘いに「自分自身の経験が活かせて、自分のためにもなる」と参画を決めた。その決断には躁も鬱もなく、「自然な流れだった」。現在、就労継続支援B型事業所の利用者さんにはPCを使ったIT系の仕事を担当してもらっている。千葉さんは、そういった業務のマニュアルづくりや、事業所のオペレーション改善などに取り組んでいる。



 そうして多様な症状のある利用者さんと関わる中で、「誰かと誰かを比べてこの人がいいではないし、自分に対してもそう思えるようになってきた」。その人それぞれに合ったペースや最適解がある。その視点を得たことで、自分に対しても「自分は自分でいいじゃん」と思えるようになったのだ。

 千葉さんから一言、「パパゲーノに来てよかった」という言葉が漏れた。


 ここからさらに「会社のリソースや環境を使ってどんなことができるかを絶賛考え中」だ。

 まずは「今までの経験や疾患への向き合い方を、利用者さんなど他の方にも共有したい」。ただし、「特定の精神疾患を前面に押し出すつもりはない」。「○○障害だから」ではなく、あくまでも「こんな特性をもつ私だからこうしてきた」という一つのモデルを示したいからだ。



 千葉さんは、働き始めてから診断を受けた。障害のある当事者になった後、それを明かさずに就職する「クローズド」も明かして就職する「オープン」も経験し、一般企業にも就労支援施設にも勤めた。また、疾患に関する特定の当事者団体には属していない。

 「学生時代にどんな女子グループにも顔を出す存在だったんですよね」と笑って話す千葉さんは、どんな立場の人の気持ちも理解できるのではないか。そういった人こそ、障害の「ある」「なし」のような細かい分断ではなく、それらの「差分をなくす」存在になれるのではないかと感じる。


 「自分の持っている経験や強みを発揮できて、やりたいことを実現できるのは、働く上での自信になりますよね」とも千葉さんは話してくれた。

 千葉さんのように、当事者経験のある方が障害に関する事業領域にどんどん参画し、活躍し、そしてそんな風に話すようになってほしい。





ここまで読んでくださった皆さまに‥


⭐ ファン登録のお願い ⭐

 Inclusive Hubの取り組みにご共感いただけましたら、ぜひファン登録をいただけますと幸いです。

 このような障害のある方やご家族、その課題解決に既に取り組んでいる研究開発者にインタビューし記事を配信する「メディア」から始まり、実際に当事者やご家族とその課題解決に取り組む研究開発者が知り合う「👀ミートアップ👀」の実施や、継続して共に考える「🤝コミュニティ🤝」の内容報告などの情報提供をさせていただきます。

🔽 ファン登録はこちら 🔽


「👀ミートアップ👀」の様子はこんな感じ


「🤝コミュニティ🤝」の様子はこんな感じ



⭐ Inclusive Hub とは ⭐


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?