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【こえ #44】声帯を摘出してもなお癌と闘病中

尾関 勝三さん


 これまで、癌をきっかけに声帯を摘出し、そこから声を取り戻そうとしている方々に数多くお話をお聞きしてきたが、てっきり“もう癌の治療を終えている”ものだと思い込んできた。しかし、それは間違っていた。


 尾関さんは、「のどから血が出たり、痰に血が混じったりして」、病院にかかるや、すぐに大病院への紹介状が書かれた。検査の結果、ステージ4の『下咽頭がん』と診断され、すぐに手術。2022年11月に、声帯を摘出し、声を失った。

 それでも癌が完治したわけではなかった。その後も治療は続き、累計で、放射線治療は35回、抗がん剤治療は7回、温熱療法は7回にも及ぶ。それでも「今また再発し、引き続き闘病中なんですよ。」と教えてくれた。


 そうした中でもできるだけ早く声を取り戻したいと、声帯を摘出してすぐに、地元の愛知県で声帯を摘出し声を失った人に対して発声訓練を通じて社会復帰を支援する『愛友会』に入会して、発声訓練を始めた。

 当初は、「食道」に空気を取り込み、喉を手で押さえるなどで、食道入口部の粘膜を新たな声帯として振動させ発声する『食道発声』に取り組んだが、「とても難しかった」。1語ずつ、さらに1単語ずつ発話していく最初のステップをうまく乗り越えられず、諦めた。

 次に取り組んだのが、電気の振動を発生させる器具を喉に当て、口の中にその振動を響かせ、口(舌や唇、歯など)を動かすことで言葉にする『電気式人工喉頭(EL)』。常に喉に当てる器具を片手で持たなければいけないため、「重さや、持ち運びをしなければいけない」点が気になる。さらに、器具を喉の「一番いいところに当てることができて、その器具を喉に対して垂直に立てると」うまく発声できるものの、しかし、「その状態を固定できずに、少しでも動かしてしまうと」発声が変わってしまう。

 そういった不便を抱えつつも、尾関さんは、自分の声を「できるだけ元通りに取り戻すため、試行錯誤を続けている」。尾関さんのように声帯を摘出しても引き続き癌の闘病中である方もおられる。そうした方でもできるだけ早く且つ負担なく発声を取り戻せる、そんな新しい『電気式人工喉頭(EL)』の登場が期待されている。



▷ 愛友会



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