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【日本経済新聞要約・考察】第20回 香港国家安全法制定なるか、各国の反応と中国の今後、そしてロビンフッダーの実態とは

※本要約・考察は2020年6月19日の日経新聞の記事をもとに書いております。

〈要約〉

 日本やアメリカを含む主要7カ国(G7)が17日に中国に対して、香港国家安全法は「重大な懸念」だと示す共同声明を発表しながらも、中国は翌日の18日に全国人民代表大会(全人代)の常務委員会を開き、同法案の審議に入った。

 強権政治の優位性を訴える中国を勢いづけさせたくない米国は17日にウイグル人権法も成立した。ウイグル自治区で少数民族ウイグル族への弾圧に関わった中国の当局者の制裁に道を開く内容だ。全人代常務委員会開幕のタイミングで「香港国家安全法」「ウイグル自治区」の二つの問題を提示したのは対中強硬姿勢をアピールすることがあったと考えられる。

 しかし、中国はG7の発表を振り切って審議に入った。中国外務省は18日の記者会見で「香港の事務は純粋に中国の内政であり、いかなる外国の政府、組織、個人も香港の安全を守るための立法に干渉する権利はない」と反発し、国際社会の批判に怯まない姿勢を示した。米国のウイグル人権法に対しても、「乱暴に中国の内政に干渉するものだ」と声明で猛反発した。

 今回の国家安全法は「国家の安全に危害を与える犯罪」を4つに分類し、刑事責任を問う内容だ。加え、香港で高速した容疑者を中国今度に送り裁判にかける可能性まで浮上しており、香港人の人権が損なわれる可能性もある。

 国際社会は中国に対して法案の制定に反対姿勢を示すものの打つ手は限られてしまっている。G7内では、対中制裁を辞さない姿勢を示す米国などの国と対中制裁には距離を置く日本などの国と分かれており一枚岩ではない。

 6月末に予定していたG7首脳会議に韓国やロシアも含め対面で開催する予定も、メルケル首相の不参加表明などで首脳会議は9月まで延期されている。3月にテレビ方式で行われたG7外相会合でポンペオ米国務長官が新型コロナを「武漢ウィルス」と呼び過激な中国批判を連発し、中国との経済的な関係が深い欧州諸国は困惑したという経緯もあり、6月中の電話会議での開催も難しいという見方が強まっている。
(参考1:https://news.yahoo.co.jp/articles/eb3641815e3b7ea2d3327fc59ae085040ba2a19a)

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〈考察〉

今回の「香港国家安全法の制定」に関する記事を踏まえて「各国の反応」と「コモディティ」について考察をする。

「各国の反応」

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 他にも、今月は中国が米国の大豆などの農作物の輸入を停止したという噂が流れ、EUがM&A防止策のための一連の産業防衛策を発表、そしてインド軍との衝突など中国関連の地政学的な材料が多かった。

 表を見てもわかるように、声明を出すこと以外に対応をしている国は米国、英国、台湾となる。中国と経済的に強いつながりを持つ国は対中制裁への慎重姿勢がうかがえる。

 香港の自治はなくなり、対応策としての打つ手がほとんどないG7と香港国民だが、対米ドルで香港ドルは二国間の金利差を意識した買いが行われている。香港ハンセン株価指数も、全人代報道官が国家安全法の審議を行うと発表した21日以前の水準まで戻している。

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 台湾が18日に香港人の受け入れ窓口開設が確実となり、香港からの人材流出が増えそうだ。全人代常務委員会での審議で国家安全法の制定の可能性は高い。そのため、経済活動において鍵を握る人材が英国や台湾へ流出するとなる。香港経済の先行きは、現状の中国の国家安全法に加えさらに不透明となる。

「今後の中国の動きシナリオ」

 施行が7月初めとなる中で、新法によりデモ活動も制圧の対象となる。その後デモ活動が止まるとは考えづらく、国際的な批判も終わるとは考えられない。

 米中対立が懸念される中で、中国がとると考えられる行動を米金利が上昇するか低下するかの二つの観点から考えてみる。

米金利低下シナリオ:
・米中対立が悪化し米中貿易協定の内容が履行されない
・デモ活動の情報拡散を制御するためにGoogleやFacebookなどを制限する
・米国が中国との「完全なデカップリング」を実行する

 香港がアジアの金融ハブとして機能している背景には一国二制度の役割が大きかったが、今回の法案でその前提が大きく揺らぐ。今回の国家安全法によって、資産の所有権の維持と将来の確実性が不透明となり、構造的に金融ハブとしての安全性が問われている。それに加え、情報へのアクセスを制御する動きが加わった場合は、香港市場の参加者がシンガポールやロンドンなどに流出する可能性がある。

 これに加え、米国は中国にとって1番の輸出相手である。中国は2017年に4,297億5,500万ドル米国に輸出しており、全体額の19%に相応する。GoogleやFacebookなどの利用を香港で制限した場合、トランプ大統領も中国に対して牽制を行い、「完全なデカップリング」も再検討しうる。トランプ大統領は新型コロナウィルスを「中国ウィルス」と呼ぶなどし、新型コロナの感染拡大以降中国に対する態度が大きく変わった。年初に貿易協定を結んだとは思えないほど中国に対して強硬姿勢を維持していることもあり、今後の不確実性は維持され続けるだろう。
(参照3:一般社団法人日本貿易会https://www.jftc.or.jp/kids/kids_news/japan/country/China.html)

米金利上昇シナリオ:
・一国二制度の国際約束の法的効力が認められる
・中国が米国との貿易合意に完全な履行を約束する

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 17日、ポンペオ米国務長官と中国外交担当トップがハワイで行った会談後にポンペオ氏は「中国共産党の楊潔篪政治局員との会談で、楊氏は両国の第一段階貿易合意を尊重し、責務を完全に果たすことをあらためて約束した」とツイートした。しかし、その後もトランプ大統領は中国との「完全なデカップリング」を示唆するツイートをし、不確実性は残る。

 不確実性は大きく残るものの、中国外交担当トップも貿易合意の尊重を発表し、米中対立のリスクは少し払拭されたものの、香港国家安全法関連の先行きは不透明なままだ。

 現状の市場も地政学リスクに対しての反応が鈍いのではないかとも考えている。足許のコロナ感染拡大や第二波、それによる実体経済への影響、加えては中銀の緩和策が材料視されているように感じている。5月からのインドと中国の国境紛争や北朝鮮による韓国の連絡事務所爆破などの出来事は大きく取り上げられていない。

 今後も新型コロナの感染拡大とそれによる実体経済への悪影響が懸念される中で、中銀の対応と実体経済の回復力が今後もかなり意識されそうだ。

【ロビンフッドと株と国民性】

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 ロビンフッドとは手数料無料で株取引のできるアプリだ。コロナによりロックダウン期間中に新しく300万人も利用者が増え、株式市場におけるリテールの割合が増えた。

 しかし、彼らは株式市場の玄人というわけではない。賭け事が好きなアメリカ人にとって、スポーツやカジノが利用できない中で、新たな矛先となったのがギャンブル性のある株式市場だった。そのため、彼らの投資判断も明確でわかりやすい。彼らは決して、各企業の細かい分析をするわけでもなく、勢いで決めている。

彼らの「勢い」
・押し目買い(Hertzや航空関連)
・完全FOMO(GAFAなどのテック企業)
・ネット上のインフルエンサーの発言(Dave Portnoyなど)
があると考えられる。

 破産申請をしたHertzは押し目買いが多かった。でも同時に、SNSで100万人以上のフォロワーを有するアメリカの有名なスポーツギャンブラーが1日で130%の利益を出したということもあり、購入者が殺到した。

 ウォーレンバフェットなどの大物投資家とは真逆の戦略が成功した今回の株式市場においては、リテールの参入障壁がなくなる事による影響力と一般的な生活の「現場」を最も知る一般人の感覚の重要性が学べた。

 今後、大リーグは7月1日からの再開が濃厚で、経済の再開により人々の忙しくなるため、徐々にリテールの活動量は減ると考えられる。そして、米国では年間10%程度の成長率を示し、1500億ドル規模の市場とも言われるスポーツギャンブルに資産を移行するために、ロビンフッド上で利益確定の売りが増え、リテールに買い支えられていたHertzや航空関連の株価は下落すると考えられる。



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