ピンチをアドリブで乗り越える技 95/100(動作2)
自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。
暑い日が続きますね。いかがお過ごしでしょうか?
これまでも、魅せる、という単語は結構使ってきましたが、一つの動作を強調したり、所作に意識を持っていくには、どうしたらいいのか、考えてみようと思います。
イギリスの演劇学校では「Mundane Task」つまり「いつもの動作」と呼ばれるエキササイズがあります。
これは、他のいくつかのエキササイズもそうしたように、演劇学校で行ったものを、後から即興劇団にも取り入れて、インプロの為のエキササイズとして、私たちが独自に再構築したものの一つです。
そのため、今となっては何がオリジナルで、どこからがインプロ向けの創作なのか思い出せないのですが、動作の程度といいますか、表情のようなものを訓練するのに役立つと思います。
まず、慣れてる一連の動作を選んで下さい。
お茶を淹れるとか、電子レンジで温める、顔を洗って歯を磨く、など目を瞑ってでも出来るぐらいに慣れている動作が理想です。
なぜか良い例として思いつくのが、台所まわりばっかりなんですが、現代社会において、いちばん当然のように、手を動かす場なのかもしれませんね。
まずは普通に、一連の動作をやってみてください。
1、2分ぐらいが理想です。
実際に目を瞑ってやっても構いません。
ん?
ああ、普通にと言っても、実際にやるわけではありませんよ!
マイムで、お願いします。
上手な必要は一切ありません。
誰かに見られて評価されるものでもありません。
頭の中で、例えば自分の台所をイメージして、ポットが何処にあるか、お茶は何処にしまってあるか、急須は、湯呑みは、蛇口は何処にあるかを思い出して、そこに手を伸ばしてやってみます。
かんたんです。
大体の動きは思い出せましたでしょうか?
そしたら、今度はそれを超・高速でやってみて下さい。
同じ動きを、細かいことは気にせず、スピード重視です。
次はその真逆、倍ぐらいの時間をかけてスローモーションでお願いします。
一連のルーティーンに慣れてきましたか?
今度は、どこか一箇所、アクセントを付けるところを見つけましょう。
寿司屋の、「へいお待ち」みたいな、魅せ場です。
たとえば、茶葉を急須に入れるときに、わざとゆっくり、丁寧に大きな所作をしてみるとか。
その瞬間を強調するには、どうしたらいいと思いますか?
日本には序破急という考え方があります。
音楽など様々な分野でも使われるコンセプトなんですが、私たちは所作(動作)に関連して使いがちです。
最近では、エヴァンゲリオンの劇場版が『序破Q』でしたね。
捉え方は様々ですが、個人的には葛飾北斎の『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』をイメージします。
「序」
穏やかな水面
「破」
急激に立ち上がる波
「急」
くるりと巻き止まる波先
穏やかな状態から、急加速し、鳥が枝にとまるように、ピタリと止まる。
これが効果的な動きとされています。
試しに、自分の手をグーで思いっきり、突き抜けるようにパンチしてみて下さい。
怪我しない程度に!
痛いですね。
次は、グーをゆっくりと動かし始め、急加速し、拳と平手が接着した瞬間にそこで止めるイメージでお願いします。
さっきよりもパワフルじゃないですか?
物理学的に、何故こうなるのかは分かりません。
(ご存知でしたら教えて下さい!)
でも、なんにせよ、この「序破急」というのは、力を生む動作のコンセプトです。
急須に茶葉を注ぐとき、丁寧な動きから、スーッと上に手を持っていき止める。
また、一連の動作の中で、最初は穏やかに始め、魅せ場にかけて急激にスピードアップし、さらりと終える。
こんな風に、緩急に気を付けてみると、見映えが大きく変わってくると思います。
ピンチに陥ったとき、右も左も分からなくなった時、この効果的な動作のコンセプトさえ抑えておけば、魅せ場を維持出来ます。
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