ピンチをアドリブで乗り越える技 61/100(適度な自信)
自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。
「ピンチに強い精神力」の第二弾です。
昨日は、信頼出来る仲間たちと、ボールを空に上げたままにするという、アドリブの話をしました。
以前ご紹介した『ヘリコプター理論』(8/100参照)もそうですが、そもそもどの程度をピンチと思うか、ということを考えてみたいと思います。
「器が大きい」って言いますが、これってどういう状態なんでしょうか?
即興術でお話ししましたが(32/100参照)、インプロは台本がないからといって、準備ゼロで挑めるものではありません。
何度も稽古を重ねている仲間とならば、それぞれの場面において、どのようなタイプの展開をしそうか、お互いに読めるようになってきます。
場数を踏むことによって、硬直状態への対応術が、経験値として蓄積されていく感覚です。
たとえば、私は独白を得意としていたので、舞台上に一人取り残されても、
「任せて大丈夫だろう」
と思われがち、というのも、この経験値のなせる技です。
他にも、例えばある共演者は、ストーリーをダークな方向に持っていきがち、ということが分かっていると、彼が主導権を握っているときは、今後のストーリーがダークな方向へ展開されるだろうという、ある程度の予測をすることが出来るわけです。
未経験な展開が、ピンチであると思います。
似たような状況のピンチに、何度も行き当たるような場合は、何かしらの対策を怠っていると考えて良いのかもしれません。
ほかの人がピンチと感じる展開でも、経験値の多いときは、大したピンチと感じないものです。
でも、むしろ経験値が有るはずなのに、想定外の事態に陥ったときこそが、ピンチですよね…
そんな時に必要なのは何でしょうか?
適度な自信と、適切なツール、そして余裕かな?と、私は思います。
50/100の『螺旋』でお話ししたとおり、適度な自信は非常に重要です。
「適度な」というのがキーワードです!
イギリスの演劇学校卒業後、私は他の卒業生がそうであったように、アメリカのハリウッドでも、キャリアを積むために、2年間ほど定期的にロサンゼルスに行ってました。
ロサンゼルスの役者業界の特徴として、誰しもが自分がナンバーワンであると、主張しなくてはいけない、そんな文化があるように感じます。
確かに、どんなにニッチな分野であっても、その第一人者でなければ相手にされない、そんな厳しさがハリウッドにはあると思います。
でも、それは空虚な自尊心とエゴを生む土壌でもある、諸刃の剣です。
それに気がついた私達は、結果的に自分たちの過度な自信に嫌気がさして来ました。
この状況から脱するには、戦うフィールドを自分たちに持って来るしかありません。
ナンバーワン至上主義の、選択権を握るのです。
結果的に行き着いた先は、自分たちの信じる面白い作品を、自分たちで作る方が近道であると判断し、『Starfish』という長編ホラー映画を制作するに至りました。
この作品は、知る人ぞ知る、ある一定の人達には強烈にササル作品として、成功を収めました。
次の、『適切なツール』に関しては、これまでにいくつかご紹介して来たとおりです。
そして最後の要素である余裕、これがなかなか難しいですよね…
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