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ピンチをアドリブで乗り越える技 43/100(即興術11) -間

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


時間を稼ぐための、間を持たせる

語りにおいて、一番大事なのは、変化です。

即興の一人語りでは、口調のトーンやスピードを次々と変化させていくことによって、常に観客の先をいく、という手法を用いてました。

少し狂言のお話をしましょう。

狂言師の役割として、狂言を演じることはもちろんですが、もう一つ非常に重要な役割があります。それが、能の中での「アイ語り」です。

能は前半と後半に分かれていることが多く、その合間に狂言師が登場し、前半の物語のおさらいや、主題に関連するお話を、一人で語ります。長いものだと20分以上、ただただ話し続けなくてはいけないものもあります。
ここで重要になってくるのが、呼吸です。

言葉を畳みかけ、盛り上げていっては、一旦息を落ち着かせて、興奮しすぎないようにする。そしてまたじっくりと畳み掛けていく、というのを続けていき、全体としての大きなうねりと高揚を生みます。

この大きく息を吸い込む時が「間」となるのですが、これをただのポーズとせず、「生きた間」とするためには、その前のセリフをどのように終えるか、が重要です。

十分に語りあげていれば、その後に大きく息を吸って間をとっても、その沈黙を持たせることができます。

ピンチに陥ったとき、無言になってしまうことが多いと思います。

動転して追い込まれている状態なので、それも無理もないと思うのですが、無音にもいろいろな種類があり、避けられぬのならば、気まずい沈黙ではなく、質の良い「間」を心がけたいです。

即興の話に戻しましょう。

私は、頭にnothingしか出ない時(35/100参照)、次のセリフを捻り出すための時間を稼ぐ、「間」のおき方を用意していました。

ただ単に、言葉が詰まるのではなく、意味のある無音を作り出します。

そしてその間に、頭をフル回転させて次のセリフを探すのです。

一つ目は、マイムです。

例えば、

「俺はレッドの口に貼っていたガムテープを、ゆっくりと剥がした…そーと…粘着力を失ったテープが、彼の唇を引っ張り上げる…彼はしばらく何も言わずに俺のことを睨みつけていた。」

のように、観客の注目を、動作の方に向けることによって、無音の間を持たせます。

これを応用するとしたら、お茶を飲む、もしくは資料を取り出す、といった動作をあえて丁寧に行うことによって、ピンチから抜け出す為の、次の策を練る時間を稼ぐ、でしょうか?

他には、適度な緊張感を持って、観客の目線を逸らすというのもありました。

「暗闇に潜んでいた俺は、遥か遠くに、光を見た…一つの光が、二つに見えてくる…あれは車のヘッドライトだろう…それはどんどんと…こちらへ向かってくる…その黒いセダンは倉庫の入り口に停まり、ドアがゆっくりと開く…後部座席から降りてきたのは、黒のロングコートに、ワイン色の中折れ帽。レッドだ…彼は辺りを見回し…倉庫の中へと消えて行った。」

というような実況中継風にすれば、途中途中で言葉を発さなくても、自分の目線を用いて、沈黙を埋めることができます。(22/100参照)

これも、例えば
「そーですねぇ…あれは確か…」
「おっしゃる通りですが…」
「なるほどぉ…」
「あぁ…そういうことですねぇ…」
「たしかそれは…」
というような言葉を使い、目線は「三つめの輪」を意識(12/100参照)することによって、比較的自然な形で沈黙を持たせることが出来るのではないでしょうか?

ちなみに、手法としてはもう一つあるのですが、これはピンチに陥った時の応用にはならないかもしれません。

「俺はゆっくりと、引き金を弾いた…」

バァンッッ!!!

というように、大きな効果音を入れて、「間」を生み出します。



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