ピンチをアドリブで乗り越える技 22/100(空間を捉える)

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


飛んでいる虫を捕まえ食べる

ピンチに陥っている時、そこから抜け出すタイミングを逃すな、というお話をしたいと思います。

前回『靱猿』で猿役の子供が教えられる、猿の型をいくつかご紹介しました。
その中にあるのが、「飛んでいる虫を捕まえて食べる」という型です。

少し上の方を眺めて、飛んでいる虫を想像して、顔全体で追います。そして、素早く親指と人差し指でそれを掴み、大きく弧を描くように動線を誇張して、口へ持っていきます。

この型には、重要なメッセージが込められているのではないか?

という話を、ニューヨーク在住のダンサーとして盛り上がった思い出があります。

舞台上で何か、動きをする時。
例えば、ただ座っている状態から立つというシンプルな動きでも、どのタイミングで立つか?舞台芸術では、そういうことが非常に大事な問題です。

明確な答えはありません、でもなんか違うな、というタイミングは存在します。タイミングを逃したな、と、みる人がみれば感じるような、0コンマ何秒という微妙な差です。

その瞬間をどう捉えるか、が勝負です。

イギリスの演劇学校ではThe Magic Spaceというエキササイズがあります。このエキササイズ自体は、今度詳しくお話ししたいのですが、何もない空間で、役者一人、どのように振る舞うかを学ぶものです。今回はその中で行われる様々な訓練の中から、一つをご紹介します。

あなたは、海辺に立ち、水平線を眺めています。もう、しばらく時間が経っています。ふとその水平線に、小さな点が現れます。どうやら待ち望んでいた舟のようです。腕を上げ、その舟へ合図を送りましょう。

ただ、それだけの訓練です。

はじめは、何度トライしても先生から違うと言われて、席に戻らされます。

「あ、逃した」

「遅い」

「焦ったね、違う」

などと言われ続けます。中には意味がわからなすぎて、投げやりになる生徒も出てきます。

でも、何度も見ていると、だんだんと分かってくるのです。

演者が水平線の上に黒点を見つける瞬間が、

そして、その視覚的情報が脳まで伝達され、
舟であると認識し、手を挙げるべきタイミングが、

分かってきます。

抽象論のように聞こえるかもしれません、でも実際に見えてきます。
観客として感じるそのタイミングと、演者の動きがづれていると違和感を覚え、確かに違うなと感じるようになります。

一体どういうことなのでしょうか。

感覚的には、観客と、空間と一体になっているような感じです。そして、変に巧まずに心をオープンにして想像上の水平線を眺めていると、ぽっと黒点が見える気がします。
その事実を自分の体内に浸透させ、腑に落ちた瞬間、ほぼ反射神経的な動きで手を挙げます。

空間に浮遊しているものを、クリアに想像し、それを掴み取る感じです。
そう、まさに小猿が空中の虫を追いかけて指で摘む行為と同じです。

説明が難しいですね。自分で書いてても、よく分からないなと感じます。それだけ感覚的なものなのかもしれません。でも、このエキササイズを続けると、空間が読めてくるんです。

気を合わせる、って言いますよね?
気が合っているって、何ですか?難しいですよね。でも、なんとなく分かる瞬間は誰しも経験があると思います。そんな感じです。

うーん。今日のテーマは書くのが難しい!
ちょっと、自分へのハードルが高かったかもしれません。

ピンチに陥った時、この空間を読むということができると強いなと思います。

今回うまく考えがまとまらず、深夜の投稿となってしまいました。
このテーマは再チャレンジします!

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