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私の英国物語 Broadhurst Gardens NW6 (47) The Home of Football and England, Wembley

学校から帰ると、いつもは静かなフラットなのに、 キッチンの方から話し声がする。
何事かとキッチンを覗いてみると、 Mrs. Martine と Geneviève、そして、ミセス・マーティンの友人、モーリシャス人の Joanna の3人が話をしていた。

ジュヌヴィエーヴは腕にギプスをしていて、腕を吊るす三角巾の姿が痛々しい。
「どうしたの?」と聞いてみると、Finchley Road のスーパーマーケットで 買い物をして帰る途中、歩道のデコボコな敷石に足をとられて転んでしまったという。ジュヌヴィエーヴは、いつもショッピングカートを引いて買い物に行っている。
ジョアンナは、デコボコな歩道で負傷したことを Council に言うべきだといっている。
ジュヌヴィエーヴの代わりに、これからはジョアンナがミセス・マーティンの手伝いに来るという。 ジョアンナは、ヒースロー空港近くの Osterley に住んでいるが、車で来るから大丈夫だと。
これからジュヌヴィエーヴを Wembley の自宅まで送るというので、私も一緒に付いて行くことに。

Wembley はロンドンの北西、地下鉄の Zone 4にあり、West Hampstead から地下鉄の駅 Wembley Park へは Jubilee Line で5つ目、Metropolitan Line では Finchley Road の次の駅である。
Wembley Stadium の近くには、Chiltern Railways の駅 Wembley Stadium もある。
Wembley には Wembley Stadium と Wembley Arena があり、スポーツ競技やコンサートがある日は、上下線とも普段以上に混雑する。

ジュヌヴィエーヴは、ご主人が亡くなった後、一人で暮らしている。
暫くは、近くに住む義妹に家事の手伝いに来てもらうそうだ。
高台にある2階建ての小さな家は、綺麗に整えられて "cosy"、住み心地も良さそう。 
2階の窓からは、遠くに Wembley Stadium が見えた。

1923年、"the British Empire Exhibition Stadium" として完成した twin towers が目印の Wembley Stadium は、フットボールの the FA Cup Final からその歴史をスタートする。
1948年にはオリンピックの競技会場ともなり、フットボールのイングランド代表チームの公式戦の他、数々のスポーツ競技やコンサートが催されるようになった。
Wembley Stadium は、Pele が “Wembley is the capital of football and the heart of football.” と言ったところから、世界に名だたるスタジアムとして知られるようになる。
1995年には、イングランドと日本代表の親善試合も行なわれた。

“Football” は英国が発祥の地といわれる。その歴史は、ローマ軍が英国を征服していた時代に遡る。 
“the action of the foot kicking or carrying a ball” は、ヨーロッパ、古代中国、日本(蹴鞠) にも見られるが、主に英国で発展していく。 
“football games” は、Lent (四旬節) 前の Shrovetide (懺悔の三が日) に開催される "Mob football" として現在でも英国に残っている。
その後、各地でそれぞれが用いていたルールを競技としてのルールとして纏上げ、後にクラブが創設された。
1863年に創立された the Football Association (the FA) は、世界最古のフットボール協会であり、そのため、正式名称に国名はついていない。England の全てのクラブは the FA に所属する。

英国には、the Football Association、the Scottish Football Association (1873年創立)、Football Association of Wales (1876年創立)、Irish Football Association (1880年創立) の4つのフットボール協会があり、独自に活動している。
また、1888年に創設されたフットボール・リーグは、世界最古のプロ・フットボール・リーグであるといわれる。

2000年、Wembley Stadium は建て替えのため、その77年の歴史を閉じ、そして、2007年、新しい Wembley Stadium は、再び the FA Cup Final からその新しい歴史を歩み始めた。
新しいスタジアムのシンボルは、ツインタワーに代わって長大なアーチになっている。
Wembley Stadium は the FA によって所有されており、イングランド代表チームのホームとなっている。
2006年、協会の総裁にウィリアム王子が就任された。

フットボールは、今や “global language” ともいわれる。 日本のフットボール・チームがワールド・カップの舞台に登場するようになり、また、日本人の選手がヨーロッパのトップ・クラブでプレーする機会を持つようになったことで、世界中の人たちと共通の話題をもつことができるようになった。

後に、Geneviève はケア・ホームに住むことにしたそうだ、と Joanna から聞いた。まだ60代ではあるけれど、一人暮らしよりもグループで住む方が何かが起きた時に安心だから、と思ったのだろう。
豊かなブロンドの髪をバレッタで纏め、柔和な表情でいつも微笑んでいたジュヌヴィエーヴ。
時折作ってくれるフランスの家庭料理、pot-au-feu が好きだった。

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