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私の英国物語 Broadhurst Gardens NW6 (24) Christmas

大学の冬休みが始まって、Vivian のご主人がフランスからやってきた。
食卓では英語とフランス語交じりの会話となり、いつもとは違う雰囲気。
ミセス・マーティンにはフランス人やモーリシャス人の友人もいるので、マーティン家にはフランス語は身近なもののようだ。
翌日には、Andrea、Inken、Kathrin もクリスマス・ホリデーを母国ドイツで過ごすために帰国の途につく。 

もうすぐ、クリスマス。 Finchley Road 沿いのスーパーマーケット Waitroseや Sainsbury's の Poultry コーナーは、ターキーやチキンを買い求める人々で混雑している。
近頃は、予め調理がしてあり、オーブンで温めるだけになっているレディ・メイドのクリスマス・ディナーセットも販売されていて、デパートやスーパーマーケットではカタログも置かれている。

英国では、クリスマス・ディナーはクリスマス・デイのお昼に食べるのが慣習。 朝食は軽くすませ、教会でのクリスマス・ミサへ出かける。
そして、教会から帰ってくると、いよいよクリスマスのメイン、クリスマス・ディナーを楽しむのだ。
 最近は、教会に行く人も少なくなったとのことだが、家族そろってディナーを食べる習慣は伝統のようだ。

クリスマス・ディナーのメイン・コースは、roast turkey の cranberry sauce、または gravy 添え、あるいは roast chicken。 付け合せには、brussels sprouts (芽キャベツ)などの茹でた野菜や roast potatoes が添えられる。
デザートは、Christmas pudding。 温めて、Brandy butter、または Custard をかけていただく。

中世英国では、イノシシやクジャクがメイン・コースだったが、1700年代にフランスのイエズス会修道士がターキーをもたらし、それ以降、ターキーが主流になった。
ターキーの二股になった叉骨を二人で引き合い、長いほうを取ると願い事がかなうという言い伝えがある。

クリスマス・プディングは、英国伝統のクリスマスのデザート。
生パン粉と小麦粉に mincemeat という、牛脂、または羊脂 (suet)、卵、砂糖、ブランデーやラム酒などに浸して柔らかくしたドライ・フルーツ、クルミなどのナッツ類とナツメグ、シナモン、クローブなどの香辛料を混ぜ合わせたフィリングを一緒に混ぜ合わせて一晩寝かせ、プディング型に流し込んで蒸す。
混ぜ合わせるときには、家族のメンバーが交代で、願い事をしながら東から西へ混ぜる。これは、三人の賢者が、東方から誕生したばかりのイエスに会いに訪れたことに由来する。
ニュースでは、ロイヤル・ファミリーがクリスマス・プディングの準備をしている微笑ましい姿も紹介される。
アドヴェント第1主日のさらに1週間前の日曜日(Stir-up Sunday)に作り、クリスマス・デイまで寝かせて熟成させる、ずっしりと重く、濃厚なプディング。
このクリスマス・プディングも、最近はレディ・メイドが主流になっているようだ。

クリスマスのディナー・パーティーに欠かせないものが、Christmas Cracker。 日本のコーン型クラッカーと違ってキャンディーの形をした筒型のもの。
筒の両端を二人で引っ張りあい、「パン!」という音と共に千切れて、中からおもちゃやお菓子、ペーパー・ハット、ジョークやクイズを書いたペーパーなどが出てくる。 クラッカ-にも色々あって、アクセサリ-が入った高価なものもある。 
このクリスマス・クラッカーは、菓子職人の Thomas Smith が 1840年にパリを訪れたときに考えついたもの。 両端をひねった紙に包まれた “bon-bon” というお菓子がクラッカーの原形となり、暖炉の焚き火の弾ける音がクラッカーのアイデアとなった。
現在、トム・スミス社は、日本を含む世界34カ国にクラッカーを輸出している。 

クリスマスの翌日、26日は Boxing Day で休日。
この日の午後3時、国王からのクリスマス・メッセ-ジがテレビで放送される。

ボクシング・デイとは、教会が貧しい人たちのために設けた寄付箱(box)を開ける日であったことから、また、クリスマスも仕事をしなければならなかった使用人達に主人が、翌日、家族と過ごさせるための休日を与え、労をねぎらい、プレゼントを入れた Box を与えたことから、ともいわれる。
 
クリスマスにおける国王、女王のスピーチは、1932年に George V が英国国民に向けてメッセージを送って以来、現在に至るまで毎年行われている。 科学技術の進歩によって、ラジオからテレビ、そして、1999年からはインターネットでもスピーチを観ることができるようになった。

クリスマス・イヴまで店は開いているが、早めに店じまいする店もある。 
クリスマス・デイは、店はもちろん電車やバス、地下鉄などの公共交通機関さえも休みになり、駅のシャッターまでも閉まってしまう。
タクシーは、割増料金。

英国で最初のクリスマス・ディナー・パーティーは、英語講座のクラスメイトHさんに他のクラスメイトたちと一緒に招かれた。
Hさんは、フランスの証券会社にお勤めの英国永住者の日本人のご主人と二人で Eton Avenue NW3 に住んでいた。私も他のクラスメイトたちも NW3 NW6 在住で、地下鉄の駅も2つ目か3つ目のご近所さん。
ミセス・マーティンとヴィヴィアンへクリスマス・カードとクリスマス・プレゼントを渡して、Hさん宅へ。

家庭での本格的なクリスマス・ディナー・パーティーを過ごしたのは、この時が初めてだった。ご主人は、翌日、私と他のクラスメイトたちを車で送るので、ワインはお預けになってしまって。
ボクシング・デイの空は青く澄んでいて、とても静かな朝だった。






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