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私の英国物語 Broadhurst Gardens NW6 (26) New Year's Eve

クリスマス・デイとボクシング・デイが終わると、デパートやショッピング街では “Sale” が始まる。 V.A.T. (value-added tax: 付加価値税) が17.5% (1993年)の英国にあっては、セールを待って高級品や耐久消費財などを購入するというのは、買い物上手な庶民の知恵というもの。
私は、“Made in Scotland” のカシミアのマフラーを買った。これで、凍てつく寒さも大丈夫。
年末も近づいてきた頃、Vivian から「New Year's Eve は、Soho の中華街へ食事に出かけましょう。」と言われた。

ロンドン最大の歓楽街として国内・外に知られる Soho は、北は Oxford Street、南は Shaftesbury Avenue、西を Regent Street、東を Charing Cross Road を境界にする一帯で、the City of London の西側 ”the West End of London” の一角を成す。
Soho という地名は、1536年、St Giles が所有していた放牧農場が、Henry VIII の修道院解体によって国王の所有地となり、南側に建てられた the Palace of Whitehall の王室公園として整備された。
そして、当時のスポーツ、狩猟の際の掛け声 “SO HO” が、その地名となった。

ホワイトホール宮殿(1530-1698)は、王室が居住していたが、火災によって大半が焼失し、離れに建てられていた Inigo Jones の設計による the Banqueting House のみが現存する。
宮殿の正面へ通じていた道路に “Whitehall” の名が残り、道沿いには英国中央省庁や政府機関が数多く建ち並ぶことから、「英国政府」の換喩ともなっている。

ソーホーの開発は、1660年代、King Charles II が Henry Jermyn, 1st Earl of Saint Albans へ土地を与え、伯爵がレンガ職人の Richard Frith へ借地権と開発を許諾したことに始まる。
1670年代後半には、Soho Square が造られた。広場の中央に half timbering (半木骨造)のマーケット・クロスと Charles II の像が建てられている。
1688年にはフランスからカトリックからの迫害を逃れて英国へ渡ってきた Huguenot の移民が住み着き、フランス人街が形成される。
1880年後半、ソーホーにはイタリア人、ユダヤ人、マルタ人などの新しい移民の波が押し寄せ、それぞれに飲食店や雑貨店などを開業した。

ソーホーはコスモポリタンで、モダンで新しいムーブメントが形成され、多くの知識人、作家、ミュージシャンやアーティストを惹きつけるファッショナブルなエリアとなっていく。
1960年代には、"Swinging Sixties" "Swinging London" として知られる流行や文化の発信地となった。

今日、世界最大といわれる London Chinatown は、18世紀、ロンドン東部 Limehouse で、ロンドン最大の港 Docklands に出入りする船の中国人船員相手のレストランやショップを経営をしていたところに始まった。
第二次世界大戦中に空爆によって大きな被害を受け、戦後、場所をソーホーに移す。近年は、香港からの移民の増加で益々活気を帯びている。

大晦日の夕方、ミセス・マーティン、ヴィヴィアンとご主人と一緒にソーホーのチャイナタウンまで出かけた。 最寄りの地下鉄の駅は  Piccadilly Line の Piccadilly Circus。 ウエスト・ハムステッドからジュビリー・ラインの地下鉄に乗り、グリーン・パークでピカデリー・ラインに乗り換えて、1つ目の駅。
ソーホーは、映画館や劇場、レストラン、バー、クラブなどが密集している歓楽街。
今日は大晦日で、いたるところでパーティーが催されている。
人混みの中を歩き、門を通って Gerrard Street に入ると、そこはもう、エキゾティックな東洋の雰囲気がいっぱいの中華街。看板の漢字も馴染み深い。
ここでは、通りの標識も英語の下に漢字の表記がされている。

食事を終えて、中華街から地下鉄レスター・スクエア駅方面へ歩いていると、新年へのカウント・ダウンにはまだ少し時間があるというのに、もう、ぞくぞくと人々がトラファルガー・スクエアへと集まりはじめている。
帰りは混雑を避けて、Jubilee Line の発着駅である Charing Cross から帰ることにした。
トラファルガー・スクエアの大きなクリスマス・ツリーを横目に見ながらCharing Cross Road をずっと下って歩いて行くと駅に到着。 始発駅なので、楽に座って帰ることができた。 今日は、23:45から04:30までは地下鉄、バス、DLR (Docklands Light Railway) は無料となるので、さらに混雑することだろう。
何万もの人々が集まるトラファルガー・スクエアでの新年へのカウント・ダウンは、テレビでも中継される。 帰宅後は、ドローイング・ルームで温かいお茶をいただきながら、その様子を楽しんだ。
3、2、1、 盛大な花火が夜空を染めて

“Happy New Year!"

新しい年の幕が上がった。

2000年、カウント・ダウン・イベントの舞台は、トラファルガー・スクエアからテムズ川沿い South Bank の Jubilee Gardens にある B.A. London Eye へと移った。
また、Jubilee Line は、2012 London Olympic に合わせてロンドン東部 Stratford まで延伸工事が行われ、これまでの始発着駅 Charing Cross は廃止されている。

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