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『1日の終わりに競馬場の駐車場で』

racetrack parking lot at the end of the day
Charles Bukowski

オレは身体の不自由なやつらや病弱なやつらが車椅子に乗せられ電動リフトに詰め込まれているのを眺めている
電動リフトはやつらを長いバスの中に入れ車椅子はそれぞれ固定され1人1人には窓が充てがわれる
やつらの肌は白く、まるで薄いダンボールに淡いペンキを塗ったようだ:
やつらのたいていはオイボレだ
数人の女たちに、数人の年老いた男たち、驚くことに若いやつも3人いる
そのうちの2人は首に矯正器具をつけていてそれが夕暮れ時の陽射しを浴びてキラキラ輝いている
3人とも腕はロープのように細く握りしめた爪のような手をしている
世話係は親切で、物わかりが良く、
信じられないほど太った男で長方形の頭をしていて
偽りのない満面の笑みを浮かべている
年老いた女たちは極端に細いか太りすぎているかのどちらかだった
女たちの背中と肩は丸まり白髪は細くまっすぐだ
電動リフトが女たちをバスの中に入れるあいだ女たちは身動きせずまっすぐ前を見つめている
会話は一切なかった:
やつらは冷静で自分たちの置かれた状況に苛まれていないように見えた
最後の1人を除いて、男たちや女たちはすぐに待機しているバスに乗せられる
やつはほぼ骸骨のような、老いぼれのじいさんで、小さな丸い頭をしていて、完全にハゲ上がり、昼下がりの空に反射して白くキラキラ輝いている、
やつは電動リフトに押し込まれながら頭上で杖を振り回し叫び声を上げている
「くそったれ、やつらはまたワシらのカネをぶんどりやがる、すっからかんにするつもりだ、ワシらは墓場の縁でよろめくカモじゃねえか、最後の1ペニーまで搾り取られるぞ!」
やつは文句を垂れながら杖を頭上で振り回し
やつの車椅子を押している面倒見の良い太った男を杖で打ちつける、
世話係の側頭部を杖で打ちつける
強力な一撃だった、世話係はよろめき、車椅子の背もたれ部分を強くつかんだ
やつは叫んだ:「なんてことだ、ジェリー、悪かった、悪気はなかったんだ、どうすればいい?どうすればいいんだ?」

ジェリーはバランスを保ち落ち着き払う、深刻な怪我ではなかった
軽い脳震盪を起こしただけだった
それでも1時間もするとジェリーの頭にはアプリコットほどのコブができるだろう

「たいした事じゃありません、サンディーさん、ただその杖の扱い方には注意してくださいと何度も何度も言ったはずですよ、、、」

サンディーは電動リフトに押し込まれ、リフトは上昇し、やつはバスの暗い車内へと消えていった

ジェリーはゆっくりとバスの中に入り、運転席につき、エンジンをかける、ドアはシューという音とともに閉まり、バスは出口のほうに向かって進んでいく、バスの後部には濃い青色を背にして太い白い大文字でこう書かれている“
”愛に満ちた港の家”

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