『当然のことだ』
no wonder
Charles Bukowski
トニーがオレに電話してきて言った
ジャンが出て行ったが何とかやっている:
D.Hローレンスのことを考える
人生全般にウンザリしながらもなんとか奮闘していこうと;
あるいは、Tドライサーのことを考える
やつの膨大な量の苦悩に満ちて築き上げられた小説は
隅から隅まで拍手喝采に包まれた;
ヴァン・ゴッホについて考える、トニーは話し続ける、
気の狂ったゴッホは偉大な絵を描き続け、
村の子供たちはやつの住む家の窓に石を投げつける;
あるいは、ハリー・クロスビーとやつの愛人
やつらは高級ホテルで黒い太陽に飲み込まれて一緒に死んでいく;
あるいは、チャイコフスキー、あのホモは女のオペラ歌手と結婚し、
彼女は発狂したのに対しやつは肺炎にでも罹らないかと凍てつく川に立ち尽くす;
あるいはドス・パソス、左翼的な本を書いた後、
やつはスーツを着て、ネクタイを締め、共和党に投票した;
あるいは、ホモのロルカ、やつは政治的闘争が理由で路上で射殺されたとされているが、
実際は街の市長の妻がやつに惚れちまったからだ;
あるいは別のホモのクレーン、やつは酔っ払って女と結婚することを約束したため、
ボートの手すりを越えてプロペラに飛び込んだ;
あるいはドストエフスキー、やつはキリストのことを思いながら
ルーレット盤に磔になった;
あるいはヘミングウェイ、やつはキャラハンに叩きのめされた
(だがFスコットが書けなかったという主張に関してやつは正しかった);
あるいは時々、トニーは続ける、オレはある男を思い出す、そいつは梅毒に罹り気が狂い、
どこかの湖でただグルグルと円を描くように漕ぎ続けたーーフランス人だったはずだーー
とにかくそいつは素晴らしい短編を書いた、、、
おい聞けよ、オレはやつに聞いた、大丈夫なんだろうな?
もちろんだ、もちろん、やつは答えた、ただ電話したかったんだ、じゃあな
やつは電話を切った
オレも電話を切った、まったくなんてこった
ジャンが出て行ったのも当然だな
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