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『午前1時36分』

One thirty-six a.m.
Charles Bukowski

タイプライターに向かうセリーヌ、あるいはドストエフスキー、、、あるいはハムソンのことを考えて時々オレは笑ってしまう
足があり、耳があり、目があり、髪も残っている平均的な男たちが人生に困難を抱えながらも気が狂いそうになるほど困惑しながらタイプライターに言葉を撃っている

ドストエフスキーは立ち上がり
ションベンをしにタイプライターの前を離れる
グラス一杯のミルクを飲み
カジノとルーレットについて思いを馳せる

セリーヌは書くのを止め、立ち上がり、窓辺の方へ歩き、外を眺める
今日最後の患者が死んだからもうあそこに行く必要はないな、と考える
最後にその患者に会ったときそいつは医者代を払っていた
医者代を払わないやつらほど長く生き続ける
セリーヌは窓辺から離れ、タイプライターの前に戻る
あと2分間だけこのままでいてそれからタイプし始める

ハムソンはタイプライターの前に佇み考える
私の書いたことを全て信じるのだろうか?
やつは腰を下ろし、タイプし始める
やつは作家が書けなくなるということがどういうことかわかっていない:
やつは太陽のように堂々とした多作のクソ野郎でひたすらタイプしまくっている

オレは声を出さずに笑う
壁の上下に伝わり、黄色と青に汚れた壁にも伝わる
白いネコが明かりから目を背けてテーブルの上で眠っている

今夜こいつは独りではないし、オレも独りではない


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