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『こだまするメロディー』

melodies that echo
Charles Bukowski

ある日のことを思い出す
作家になろうとあがき飢え死にしそうだった頃のこと(ずいぶんむかしのことだ)
そんな日に流行った歌のいくつかを今でも覚えている:
“ティスケット、タスケット、小さな黄色いバスケット”
“ベイビー、僕が君にあげられるのは愛だけさ。”
“夕暮れときの濃い紫が眠れる庭の壁に降り注ぐとき”
“わたしが愛した男”
“なんでもありさ”
“肉体と魂”
“惚れちまったぜ!”

メロディーは記憶の長い廊下に響き渡り
オレは思いを馳せる
フォークナーがミシシッピを舞台にしてやったこと、
あるいはエズラがイタリアの路上で拘束されたこと、
あるいはT.Sエリオットが銀行の窓口で小銭を数えているところ、
あるいは路上で野垂れ死にした犬のように打ち殺される前のロルカのこと

“わたしの心はパパのもの”
“銀色の月明かりに照らされて”
“やってやる!”
“ほらあの目”
“素敵じゃないか”
“あなたはわたしの輝く星”

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