見出し画像

『狂った夜』

one of those crazy nights
Charles Bukowski

オレたちはテーブルに着いていた;
オレはヤツのことを知っていた、
ヤツはミュンヘンに住み
オレたちが互いに関心のあることに取り組んでいた;
そして今ヤツはモンタナからやって来て、
オレたちが多かれ少なかれ関心を持っていたことに
未だに取り組んでいる
オレたちは3〜4時間はバーにいた、
ヤツはタカのくちばしのような鼻をして
身長は190を超えていて
くだらないカウボーイハットを被っている
オレたちはスコッチとチェイサーにビールを飲んでいた
ヤツはオレの方に身を寄せ(土曜の夜でバーは混み合っていた)ささやいた:
「おまえはカウンターにいるやつをやれ、おれはテーブルにいるやつをやる;ここを少しばかり綺麗にしてやる、だろ?」
オレは目を細め、周囲を見渡した:「いや、オマエがカウンターにいるやつをやれ、オレがテーブルにいるやつをやる」
「わかったよ、」ヤツは言った、「とにかくおれはもう1度ウェイトレスの女が見たい、あの女の胸を見たか?」
「ああ」
「まったく、なんてオッパイをしてやがるんだ!」

オレはウェイトレスの女にもう1杯くれと合図した;
女は飲み物の載ったトレイを持ってこっちへ来た
それが起こったのはあっという間だった:
ヤツは手を伸ばし女の胸の片方を掴んだ
これまでに聞いたこともないようなロクデモナイ悲鳴がトレイの落ちる音とともに響いた
それから後はバー全体を敵に回したようだった!
「ついて来い!、カウボーイ!」オレは叫んだ
オレはトレイに向かって階段を上がった
トイレの西側には窓があり
傾斜した屋根がほとんど地面につきそうだった
オレは背後にいるカウボーイとともに屋根に這い出て
地面に飛び降り走り出した
オレたちは蔦で覆われたフェンスを超えて中庭に入った
赤い目をした巨大な犬が威勢よく吠えた
オレたちはやつの玉を蹴り上げ中庭を出た
気づいた時にはオレたちは周囲に誰もいない静かな並木道を歩いていた

オレは右足首を捻挫していた
脚を踏み出す度に地獄の火に焼かれるような感覚に襲われる
カウボーイが言った、「あのバー戻ってあいつらをやっちまおうぜ!」
「本当にそう思ってんのか?」
「当たり前だろ」
「戻ったらどうなるか考えてみろよ、」オレは言った
「だな、おまえが正しいよ、」ヤツは言った、「おまえんとこに戻ろう」
「ああ、」オレは言った、「だがもう1つやることがある、、、」
「なんだ?」
「車を見つけねえとな」

再びオレたちは互いの関心に引かれ合い、
夜闇の中へ突き進んで行った







この記事が参加している募集

海外文学のススメ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?