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『成長』を前提とする限り、気候危機は一層深刻化する

成長を前提とする、
つまり、
資本主義である限り、
気候変動の問題からは逃げられない。

SDGsは現代のアヘン、
すなわち『環境に配慮したつもり』に
させる麻薬であって、
実際は環境破壊に向けて進んでいる。

最近やっと日本でもSDGsが浸透し、
エコが叫ばれるようになりましたが、
SDGsがアヘンとは、
強烈な一言ですね。


斎藤幸平さんの『人新世の資本論』、
インパクトの大きい一冊でした。



成長を前提とした政策である限り、環境保護との両立は不可能

この本を読むまでは、
私たちの生活において、
というか人生において、
資本主義はあたりまえだと思っていました。

なので、
SDGsに対しても、
アメリカやヨーロッパが掲げる
グリーンニューディールに関しても
特に疑問を持ちませんでした。

しかし、
本書ではそのどちらを行っても、
環境破壊と気候変動は
止められない
というのです。

その理由は、
経済成長をするには、規模の拡大が不可欠だが
規模が拡大する=森林を伐採したり、
新しいものをつくり生産を増やし
二酸化炭素の排出量が増えるため。

風力発電や太陽光発電、
電気自動車の普及においても、
それらの普及は急務ですが、


結局、何かを増やし続ける限りは、
自然を破壊し続けるしかないのです。
以下の本文の言葉が強烈でした。

人間を資本蓄積のための道具として
扱う資本主義は、
自然もまた単なる略奪の対象とみなす。

(斎藤幸平『人新世の「資本論」』より引用)


また、近年では
先進国でエコな動きが加速していますが、
結局これも途上国(いわゆるグローバル・サウス)
へ、負の部分を転嫁しているにすぎません。

日本でも実用化が進みつつある、
電気自動車を
例にあげるとわかりやすいです。

電気自動車にはリチウムイオン電池が
不可欠ですが、
このリチウムは地下から
リチウムを含んだ鹹水をくみあげ、
その水を蒸発させ採取されます。

つまり大量の電池を作るために
大量の地下水を組み上げることになるのですが、
それによりリチウムの生産地での
生態系が大きな影響を受けています。

つまり、
エコに向かっていると見せかけただけで、
地球全体では環境破壊への
一途を辿っているのです。




理想は脱成長のコミュニズム

資本主義が続き、成長が続く限り、
地球環境は悪化の一環をたどります。

では、どうすれば良いのか?
斎藤幸平さんの主張は、
脱成長のコミュニズムへの転換です。

脱成長=成長を目標としない、
コミュニズム=相互扶助的な共同体
(私的所有や国有とは異なる、
生産手段の水平的な共同管理をするもの)

というわけですね…

そして、脱成長コミュニズムが目指す
方向性は以下の5点にまとめられています。

①商品の価値を「使用価値」へ変換すること

②「使用価値のない」労働時間を短縮し、
生活の質を向上させること

③徹底したマニュアル化による
自立性の無い分業を廃止し、
労働の自立性と創造性を回復させること

④生産手段を
みんなで管理するもの(民主化)とし、
全員参加の意思決定をすること

⑤使用価値重視の労働へ転換し、
福祉や医療などの
エッシャンシャルワーク重視へ転換すること


これこそ、実は
晩年のマルクスが提唱していた
脱成長コミュニズムなのです。

簡単にいえば、
生産を「使用価値」重視へ転換し、
無駄な価値の創出を減らす。
そして、無駄な価値を創出するために
使われていた労働時間を短縮させることです。

資本主義でなくなる=
崩壊してしまったソ連のように、
緊縮的な社会主義に戻ること

と、想像してしまっていましたが、
脱成長コミュニズムであれば、
うまくいきそうな気がしますね…



さいごに『私たちにできること』

資本主義は経済成長を目的とするもので、
経済成長を目的とする限り、
気候変動は止まらないし、
環境破壊も貧富の格差も大きくなります。

それを、解決すべき方法が、
生活に必要なものを
みんなが共同管理できる体制を整え、

市場や国家にも依存せずに
社会における生産活動を
水平的に管理できるようにすること。

そうすることによって、
資本主義が生み出した
人工的な希少性を削減し、
潤沢さを得ることができる。

参考文献や資料も多く、
しかもマルクスの生涯に渡る研究が
ベースになっているため、
とてもわかりやすく、
納得もできる内容でした。

そして、
一市民として出来ることに関して、
本では社会運動などが勧められていますが、
その前にもう一つ必要だと感じました。

それは、
もっと気候変動や今の経済に興味を持つこと。
そんな人を増やすこと。

興味を持つことができれば、
実際にバルセロナで実施された
気候非常事態宣言や、

各国が行う、グローバルサウスの声を
汲み取る運動を知ることにつながり、
今私たちに何が出来るか?
ということを考えるきっかけができます。


ここ数年で、
温暖化のティッピングポイントを
既に超えてるのでは?
と思うような異常気象が連発し、

気候変動や環境破壊からは
逃れられないことを
まざまざと感じています。


経済発展や科学技術の進歩が
ポジティブに進むイメージを
自分に言い聞かせるように抱いていましたが、
もう少し危機感を持って
環境問題に向き合うべきだと感じました。


色とりどりのエコバッグや、
たくさんのマイボトルを買う前に、
自分に出来ることは
興味・関心を持ち、考えることです。

本当に持続可能な社会で、
自分たちが年老いてからも、
その子供たちも笑顔で過ごせるよう、
考えるきっかけになった一冊でした。





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